実は第1話から…ドラマ『良いこと悪いこと』第9話で明らかになった“犯人”を示す伏線の数々

連続殺人事件の犯人をめぐり、視聴者の間で考察合戦が白熱するドラマ『良いこと悪いこと』（日本テレビ系）。12月13日放送の第9話では、ついに物語が佳境を迎え、一連の事件を起こした犯人が木村昴演じる「宇都見啓」であることが発覚した。多くの視聴者の予想を裏切る展開となったが、改めて物語を振り返ると、“宇都見＝犯人”と示唆する伏線は至るところに散りばめられていたことが分かる。

宇都見はレトロスナック「イマクニ」の常連客で、その正体は警視庁・捜査一課の刑事。物語の主人公・高木将、通称キング（間宮祥太朗）の同級生が次々と殺害される事件を追っており、顔見知りのキングからは“ウッチャン”という愛称で呼ばれていた。

同じ「イマクニ」の常連客という縁から、キングとも親しい関係を築いていた宇都見。しかし12月13日の放送回では、かつてキングたちからいじめを受け、深いトラウマを負った瀬戸紫苑（吉田帆乃華/大後寿々花）の“婚約者”だったという事実が明らかになる。しかも紫苑は、キングとのひょんな再会をきっかけに自ら命を絶っていた。

つまり宇都見は婚約者を奪われた復讐として、彼女を苦しめた“いじめっ子”たちを次々と手にかけていたのだ――。

犯人が判明した今だからこそ改めて物語を振り返ると、放送当時は何気なく見過ごしていたシーンが、“宇都見へと繋がる伏線”だったことに気付かされる。例えば、紫苑を語る上で欠かせない「ピアノ」もそのうちの一つ。彼女は幼稚園の頃からピアノを習い、音楽が得意な女の子だった。

ところが音楽の授業でリコーダーの音を外したことをきっかけに、「ドの音が出ないから『ドの子』」などとキングたちから嘲笑され、いじめの標的になってしまう。それでも一度は過去を乗り越えるものの、キングが娘を連れて紫苑の音楽教室を訪れたことで状況は一変する。過去のトラウマが蘇り、大好きなピアノが弾けなくなった絶望から、彼女は自死してしまったのだ。

第9話の終盤では、そんな紫苑の追悼コンサートが行われ、宇都見がステージでピアノを演奏するシーンが登場する。実はこの描写、伏線としては第1話の時点でこっそり提示されていた。

宇都見がピアノを弾く姿がはっきりと映ったわけではないが、注目すべきは、キングが同窓会の帰りに同級生たちを「イマクニ」へ連れてきた場面。キングたちが座るカウンターの向こう側では、視線を落とし、何かに没頭する宇都見の姿が映し出されている。カウンターに隠れて何をしているのかまでは見えないものの、注意深く耳を澄ませると、ピアノの音が鳴っていることに気付く。

初見では見逃してしまいがちな伏線だが、こうした“さりげない仕掛け”は、ほかのエピソードでも確認することができる。連続殺人事件の犠牲者である中島笑美、通称ニコちゃん（松井玲奈）は、第2話で何者かに突き飛ばされ、交通事故に見せかけて殺害された。犯人判明後の視点で振り返れば、その“何者か”の正体は宇都見だったことになるが、思い返せば第6話では、傘が意味深にカットインしたことがある。

それは、キングたちが「イマクニ」でORANGE RANGEの『以心電信』を熱唱していたときのこと。彼らの様子を扉越しに見守る店主の目の前には、傘立てに入ったピンクの傘が映し出され、その奥にはもう一本、黒い傘が並んでいた。その直後に宇都見が店を訪ねてくる流れも、第6話のタイトルが「傘」だったことも、今にして思えば、犯人の存在をほのめかす伏線だったのかもしれない。

さらに決定的だったのが、第5話終盤に登場した“黒のアルファード”だ。同話ではキングたちが元担任で、現・鷹里小学校校長の大谷典代（赤間麻里子）を訪れる展開が描かれ、彼女が何らかの形で事件に関わっていることがほのめかされた。しかし自責の念に駆られた大谷先生は、犯人と思しき人物に「もう耐えられません」と電話をかけた後、迎えに来た黒のアルファードへと乗り込み、そのまま還らぬ人となった。

まず、この犯人の手がかりとなるアルファードの車両ナンバーは「1101」。110番＝警察を連想させる数字だが、果たして偶然だったのだろうか。そして第9話には、それと同型と思われる車が再び登場する。しかも車が駐車されているのは警察署前。問題の車は第9話の予告動画でも確認でき、もし同一の車であれば、警察関係者が犯人であることを示す重要な手がかりだったとも言える。

こうした仕掛けを巧みに盛り込み、視聴者の考察を大いに盛り上げてきた『良いこと悪いこと』。とはいえ物語はまだ終わってはいない。

第3話でキングが意味深に見つめていた水死体のニュースなど、未回収の謎がいくつか残されているうえ、最終回の予告動画では“真犯人”の存在が示唆されている。動画内で「取り調べに対し、宇都見容疑者は一部の容疑を認める供述をしている一方で…」と報じられている点からも、宇都見が全ての犯行を行っていたわけではないようだ。

果たして最終回では、どのような真実が明かされるのだろうか。張り巡らされてきた伏線がどのように回収されるのかも含め、物語の行く末を見届けたい。