『豊臣兄弟!』は戦国が苦手でもハマる 『光る君へ』『べらぼう』から続く“女たちへの共感”という視点
『べらぼう』(NHK総合)がクライマックスを間もなく迎える中、2026年1月4日から放送が開始される仲野太賀主演の『豊臣兄弟!』(NHK総合)への期待が高まっている。2年ぶりの戦国時代を舞台にした作品に“待ってました”と期待に胸をふくらませる人も多いだろう。一方、『光る君へ』(NHK総合)で大河ドラマにハマり、その流れで『べらぼう』を観ていた新規層にとっては、戦国時代を舞台にした本作に躊躇するところもあるかもしれない。そこで、今回は、『光る君へ』と『べらぼう』を振り返りつつ、『豊臣兄弟!』を戦国ものに興味がない人でも楽しめる見方を紹介したい。
『光る君へ』におけるジェンダーロールを超えた生き方紫式部をモデルにした主人公・まひろ(吉高由里子)が主人公の『光る君へ』は、従来の大河ファンだけでなく、女性や若年層の視聴者を取り込むことも意識して制作された作品だった。平安貴族の雅やかな衣装や調度品が織りなす美しい画面は視覚的な楽しさを提供しつつ、当時の女性貴族が抱えていた苦悩や社会的な制約、まひろと道長(柄本佑)の深い愛の物語は幅広い層の視聴者の心をつかんだ。
まひろは学問の才能に恵まれていたが、女性ゆえにその道を閉ざされ、弟の惟規(高杉真宙)は特に才に秀でていたわけではないのに、男であるゆえ大学に進学できた。この理不尽さは、現代に生きる多くの女性が今なお感じている悔しさと重なる。
また、詮子(吉田羊)が道長に漏らした「この世の中に心から幸せな女なんかいるのかしら みんな男の心に翻弄されて泣いている」という言葉は、自分の思いに従って生きられない貴族女性の苦しみを象徴していた。
それでも、まひろは『源氏物語』の制作者として、彰子(見上愛)の教育者として幼い頃から探し続けていた“自分が生まれてきた意味”を見出していく。詮子もまた、道長の姉であり一条天皇(塩野瑛久)の母として、表舞台には立たないながらも裏で政(まつりごと)を動かし続けた。
制約だらけの人生においても自分の手で道を切り拓く女性たちの姿に、女性として深く胸を打たれ、勇気をもらった。
さらに、さわ(野村麻純)が自分に自信を持てず劣等感を抱きながらも、まひろに対して強い憧れと嫉妬が入り交じる複雑な感情を抱く姿には多くの視聴者が共感したはずだ。また、倫子(黒木華)の屋敷に若い姫君たちが集まって和歌などを学び合う勉強会のシーンは、現代の女子会のような空気感が漂い、“女子会あるある”だとSNSで盛り上がっていた。一方、現在放送中の『べらぼう』は、横浜流星が版元・蔦屋重三郎(通称・蔦重)をモデルにした主人公を演じる作品だ。この人物は一般にはあまり知られていないものの、幅広い視聴者が入り込める物語になっていると思う。
恋愛に鈍感な蔦重(横浜流星)と瀬川(小芝風花)の恋の行方は毎回ハラハラさせられたし、歌麿(染谷将太)が母の呪縛から逃れられない姿には現代の毒親問題を見るような重い共感を覚えた。一方で、春町(岡山天音)の“屁ダンス”に笑いを誘われたりと、老若男女が楽しめるシーンも満載だった。
また、劇中で描かれた江戸の米不足と幕府の失策は、現代における米価高騰・備蓄米放出問題と不思議なことにリンクした。
現代社会はどこか息苦しく閉塞感に満ちているが、本作を観ていると、幕府の厳しいおふれや自然災害に翻弄されながらも、蔦重が前向きに生きる姿や、江戸のにぎやかな雰囲気に心が晴れやかになる。どの時代にも理不尽はあり、苦しみは尽きないものの、人はほどほどに欲を持ち、楽しみを見出して生きていくしかない。
『豊臣兄弟!』も幅広い視聴者の心をつかめるはず戦国時代を舞台にした作品というと、武将が天下統一を目指して戦う迫力の合戦シーンが最大の見どころというイメージが強い。けれど、筆者はそれだけではないと思っている。男たちが命を賭けて刀を振るうのは、結局のところ“見栄”と“プライド”、そして“愛する家族を守りたい”という思いがあるからだ。
『豊臣兄弟!』の主人公・秀長(仲野太賀)とその兄・秀吉(池松壮亮)は最下級の戦闘員といわれる足軽と農家の親を持つが、知恵と気力で天下人にまで上り詰める。社会の下層の世界を知る二人がのしあがる姿は、何事においても諦めがちな今の時代だからこそ放送される意義があるのかもしれない。
とはいえ、合戦や立身出世に興味が薄い人も、とくに女性を中心に少なくない。こうした視聴者には大河ドラマを“戦う男たちを支える女たちの物語”として観ると入り込みやすいと思う。例えば、2002年に放送された『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』(NHK総合)では、利家(唐沢寿明)の出世の裏でまつ(松嶋菜々子)が周囲に気を配り、頑固な夫を説得し、夫のために味噌汁を作っていた。また、秀吉(香川照之)の妻・おね(酒井法子)は、夫の乱暴な言動に心を痛めたり、その粗暴な態度を周囲に詫びることもあった。
女たちの一見地味にも思える努力があったからこそ、男たちは活躍できた。戦国時代は男が主役というイメージが強いが、女たちの真心、忍耐、愛情、知恵こそが歴史を動かしていたことに気づかされる。
『豊臣兄弟!』にも妻たちが登場する。兄を支え続ける秀長の妻・慶(吉岡里帆)、野心家の秀吉の妻・寧々(浜辺美波)は夫に何を思い、何に悩んでいるのだろうか。激乱の時代を生き抜いた女たちに目を向けると、このドラマはただの出世譚ではなく、切なくも力強い人間ドラマに変わる。
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