アニメ『奇面組』で再燃する論争、懐かし作品の“令和リメイク”は必要なのか
80年代のギャグ漫画『ハイスクール!奇面組』が、完全新作アニメとして2026年1月に放送されることが決まった。同作は1985年にもアニメ化されているため、今回は“リメイク”という位置づけになる。近年、こうした往年の人気作をリメイクする動きが相次いでいるが、その意義を問う声も少なくない。
中学生編の『3年奇面組』から始まり、高校生編の『ハイスクール!奇面組』と続いて80年代にカルト的な人気を博した奇面組シリーズ。個性的な顔を持つがゆえに日々“個性を追求”していく5人の男子生徒が、突飛な行動で笑いを誘うギャグ作品となっている。
そんな『ハイスクール!奇面組』が令和の時代に新作アニメとして蘇るわけだが、同作を現代でリメイクするにあたっては、いくつかの懸念点も残る。中でもよく指摘されるのが、“あの時代だからこそウケた作品が、現代でも通用するのか”という問題だ。
『ハイスクール!奇面組』には、80年代のギャグ漫画特有のハイテンションで不条理なギャグが随所に散りばめられている。その“ノリ”が今の視聴者にも受け入れられるかどうかは、原作ファンの間でも意見が分かれるところだ。
なお、この問題は同作に限った話ではない。例えば令和版『うる星やつら』(フジテレビ系)では、絶大な人気を誇るヒロインのラムが、一部視聴者の間で「地雷女」と話題になったことがある。かつて多くの人を虜にしたキャラクターだが、現代の価値観や表現の受け取り方によって、違和感を覚える視聴者も少なくなかった様子。
一方、今年7月に放送された『地獄先生ぬ~べ~』(テレビ朝日系)では、原作や旧アニメ版にあったお色気要素が控えめになり、その分アクションやバトル描写の迫力が増していたように思える。さらに登場人物たちがスマートフォンを使うなど、現代の生活様式に寄せたアレンジも施されていた。
このように作品には多かれ少なかれ時代性があり、ある時代に流行した作品が時を越えて再び受け入れられるかどうかは、リメイク全般に共通する課題である。技術や表現が進化しても、当時のノリや文化をそのまま現代に持ち込むことは難しく、制作側は常に微妙なバランスを求められているのだろう。さらに、リメイクにおけるもう一つの課題が声優の扱い。往年のファンとしてはオリジナル声優の続投を望む声も多いが、今後のシリーズ展開や制作上の都合を考えれば一新したほうが望ましい場合もある。このジレンマは制作陣にとっても悩ましい問題に違いない。
また往年の人気作をリメイクする際には、原作の持ち味や笑いが、現代のコンプライアンスや社会的感覚に合っているかというリスクも存在する。『ハイスクール!奇面組』にしても、容姿を笑いのネタにする側面があり、たとえそれが作品上重要なテーマの一部であったとしても、ルッキズムを問題視する現代においては、眉をひそめる人がいても不思議ではない。
こうしたさまざまな問題がある中で、それでもなお「リメイクに価値がある」と言える理由は、一体何だろうか。確かに昨今のリメイクブームに対して、賛否が分かれるのも理解できる。しかし一方で、過去の作品が再び脚光を浴びることには、無視できない意義もある。
例えば過去の作品の中にも、時代を超えて通じる普遍的なテーマが少なくない。『ハイスクール!奇面組』も、単に“奇面”を笑いのネタにしているわけではなく、「せっかく個性的な顔に生まれてきたんだから 内面だって人と同じにはなりたくない」といったセリフに象徴されるように、容姿を良し悪しではなく“個性”として見ようとする描写が多々見られる。同作のこうしたテーマは、ルッキズムや多様性といった言葉が頻繁に使われる現代だからこそ、新たな意味をもって響くのではないだろうか。
往年の人気作に“時代”を感じてしまう人がいるのは事実だが、同時に「今でも通じる」と思える部分を発見できるのもまた事実。むしろ過去の作品をリメイクすることで、今も昔も変わらない普遍的なテーマが浮き彫りになりそうだ。
もちろんSNSでの話題づくりや、当時の放送をリアルタイムで観ていた世代へのアプローチなど、ビジネス的な狙いも昨今のリメイクブームにはあるのだろう。しかしそれだけではなく、過去の作品を現代の価値観のもとで再構築し、令和の時代に“再び語る”こと自体に、リメイクの本当の意義があるように思えてならない。
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