草彅剛主演・ドラマ『終幕のロンド』でも役と本人の重なり具合がマッチする「新しい地図」の境地
草彅剛主演の『終幕のロンド』(カンテレ・フジ系)が放送開始。関西テレビ制作の主演作はこれで9本目となり、“草彅ドラマ”はもはや信頼のブランドだ。一方で稲垣吾郎は理事長役で繊細な人間像を体現し、香取慎吾は「ダメなのに憎めない男」を自然体で演じるなど、三者三様に俳優としての成熟を見せている。「新しい地図」の3人が築いた“ブランディングと演技力の融合”を、ドラマコラムニストの小林久乃氏が分析する。
◆カンテレ×ドラマシリーズの王
草彅剛主演のドラマ『終幕のロンド もう二度と、会えないあなたに(以下『終幕のロンド』略)』(関西テレビ、フジテレビ系)が始まった。
彼は今回の作品もあわせると、関西テレビ制作の連続ドラマに9回も主演を果たしている。まずは2003年からスタートして、スペシャルドラマも含む5作品も放送された『僕』シリーズ。余命一年と宣告された男性を演じた『僕の生きる道』に始まったヒューマンドラマの数々には、泣かされた視聴者も多いはず。その後、2015年からは『銭』シリーズが始まる。『銭の戦争』をはじめ、資産、地位、名誉に翻弄される主人公によって3作品が完成した。直近では2023年の『罠の戦争』が話題を呼んだ。『終幕のロンド』には件の2シリーズのスタッフが集結。この経過から見ても、草彅の演技に対する信用度の高さ、スタッフのフォーメーションの良さが伺える。
『終幕のロンド』は遺品整理の会社に勤務する、シングルファーザー鳥飼樹(草彅)が、依頼者や仲間たちと共に、遺族に向き合っていく物語。樹はかつて仕事に忙殺される中、妻を早くに失い、息子と向き合う時間を作るために遺品整理人になった。それだけではなく、ドラマでは絵本作家で大企業グループの次期社長の妻・御厨真琴(中村ゆり)との恋も描かれていくらしい。妻を失った当時ではなく、現在の樹は物腰穏やかでいながら、芯がある。そして草彅本人の俳優としてのイメージに近いものを感じて、とてもよく似合っていた。ちなみにバラエティー番組などで見る天然ぶり全開の様子とは、全く違う印象なので、改めて彼の演技へのスイッチの入れ方は秀逸だ。
ふと振り返ると、草彅を含む『新しい地図』の3人は、ここ最近、ドラマでの役と本人の重なり具合がとてもいいグラデーションを作っている。
◆サイコパスな役柄も自然に
「あの吾郎ちゃんが理事長……?」
2025年夏クールに放送された『僕達はまだその星の校則を知らない』(関西テレビ、フジテレビ系)で『新しい地図』の稲垣吾郎が演じたのは、私立高校の経営に悩む理事長の尾碕美佐雄。学生時代はだいぶ昔なのでやや自身はないけれど、理事長といえばかなり高齢で、風格があって、どっしりした体型のおじさん……と、まあ誰もが思う一般的な想像を働かせていた。その理事長と稲垣とは当初、うまくリンクできなかったけれど彼も52歳。もう理事長役が回ってきてもなんら不思議はない。
演じていた尾碕理事長はとても繊細な役柄だった。理想に燃えて教師になったけれど、家庭の事情で経営に回る。教育と経営。ジレンマを抱えながらも自分の本音がどこにあるのか模索していた。
そんな様子も俳優の稲垣本人にどこか通ずるものがあった。彼も草彅と同じく、演技へのスイッチング力が高く、サイコパスに近い役柄もお手のもの。最近演じていた『燕は戻ってこない』(2024年)の元バレエダンサーの草桶基も芸術に携わる者らしいのか、凡人に理解できない振る舞いも多々あった。でも彼が演じると見る側が納得する雰囲気を醸し出していた。
◆ブランディングとマネジメントの整合性
『新しい地図』のメンバー、香取慎吾が今年『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)で演じた大森一平、テレビ局を退社して選挙出馬を決意。イメージ戦略のために亡くなった妹の家族と同居を始めるものの、結局は家族愛が芽生えてしまう。だらしなく、ダメなやつなのに心底憎めない。『家族ノカタチ』(TBS系:2016年)の永里大介役も会社員で結婚適齢期、早く身を固めたいのについ余分な考えを膨らめたり、発言をする男。
香取の場合『西遊記』(フジテレビ系・2016年)の孫悟空の役も含めて、この世には存在しない役柄も多く演じているので一括りにはできないけれど……どこか憎めないダメなヤツ、俳優・香取慎吾としてはとても似合う。視聴していてスッと脳内に役が入ってくると表現したら分かってもらえるだろうか。そしてこれは3人の共通事項でもある。
今回、改めて書きたかったのは彼らのブランドはもちろん、ブランディングについて。特に彼らを追いかけているわけではないのに、何となく見ていたドラマでの役柄に不自然さが全くない。「らしい」と思ってしまう整合性を持ち合わせている俳優がどれほどいるのだろうかと、眉をひそめる。なかなかいない。「この役、あまり合っていないのでは……」と蘇る記憶はあるのだけど。
どんなクリエティブも迷い、立ち止まってしまうマネジメントとの関係性と、本人のブランド保持力。彼らがかつてアイドルで(今もだけど)、ファンではなくても存在があまりにも馴染んでしまったものだから、つい忘れていたけど、この3人、本当にすごい。何よりも改めて振り返らないとそのすごさに気づかせない才能にも、舌を巻くどころの騒ぎじゃない。もう日本では見ない宝なのだろうと思う。
『終幕のロンド』見られる演技が、引き続き楽しみだ。
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