波瑠×川栄李奈『フェイクマミー』が抉る 学歴格差と“見せかけの幸福”のリアル
波瑠、川栄李奈がW主演を務める『フェイクマミー』(TBS系)が注目を集めている。本作は東大卒で求職活動中の花村薫(波瑠)と元ヤンキーでベンチャー企業社長の日高茉海恵(川栄李奈)が“フェイクマミー(偽母)”契約でつながり、茉海恵の娘・いろは(池村碧彩)の夢のために力を合わせるストーリーだ。今回は、私たちが富裕層ファミリーを描いた作品に夢中になる理由と、本作特有の魅力に迫ってみたい。
“人の不幸は蜜の味” 幸せな家庭の裏を覗き見たい好奇心富裕層が集う名門校やお受験をめぐる作品は数年ごとに放送されており、特別珍しくない。それぞれ特徴はあるにしろ、家庭内に問題を抱えていたり、ママ友同士で陰湿ないじめが起きたりする展開が典型的だ。また、中流家庭のファミリーが富裕層の世界にひょんなことから足を踏み入れ、ドロドロとした人間関係や夫婦間の軋轢を目にし、幸せとは程遠い実情を目の当たりにするストーリーもよく見られる。
例えば、2011年に放送された『名前をなくした女神』(フジテレビ系)では秋山侑子(杏)が主演を務め、お受験を控えたママ友同士の本音と建て前の世界が描かれていた。夫の不貞に悩むちひろ(尾野真千子)、娘をおねしょやカンニングするほどの状態にまで追い込んだ本宮レイナ(木村佳乃)…。一方、2016年に放送された『砂の塔〜知りすぎた隣人』(TBS系)は高野亜紀(菅野美穂)が主演を務め、住民同士が見栄を張り合い、親だけでなく子どもまでもがタワーマンションの階による序列を意識する様が描かれている。さらに、2024年に放送された『スカイキャッスル』(テレビ朝日系)は浅見紗英(松下奈緒)が主演を務め、我が子を志望校に合格させるためなら不正や金銭、嘘も厭わない母親たちの姿が描かれていた。
上流家庭に潜む問題が飽きなく求められるのは「他人の不幸は蜜の味」だからだと思う。現実世界では限られた収入の中でさまざまな悩みや不安を抱えて生きている人がほとんどだ。彼らにとって何もかも手にし、すべてがうまくいっている家庭はおもしろくない。お金にも家族にも恵まれている人たちの幸せを“フェイク(=偽物、見せかけ)”に仕立て上げ、“全てを手にした人なんていない”と思うことで心の落ち着きや満足感を得られるし、彼らのプライドを滑稽に描くことでスカッとすることもある。
国立・私立小学校に在籍する児童の割合は2%に満たないといわれているし、タワーマンションや高級住宅街の住民は人口比で見ると極めて少なく、多くの人たちは彼らと会ったことすらないはずだ。知らない世界だからこそ、好奇心からその世界を覗き見したくなるし、想像も掻き立てられる。自分が憧れる、あるいは多少なりとも羨ましく感じる世界の住人が露わにする人間の暗い側面、彼らが人知れずひっそりと抱える問題は格好のエンタメとなるのだ。
ちなみに、保護者が紺色の服で送迎することで知られている私立小学校に我が子を通わせていた人によると、子どもも保護者もおだやかで、地方出身のサラリーマン家庭にも差別はなかったという。また、筆者の肌感覚ではこうした小学校を卒業した人はおどろくほど裏表がなく、優しい人が多いと感じている。『フェイクマミー』は独身を含むあらゆる立場の人の心に刺さる『フェイクマミー』にも一流の家柄で上品を装うが腹黒い“柳和の三羽烏”、由緒ある家柄の出で、心優しそうに見えるが、いろはから“中は毒ガス”と呼ばれる息子をもつ本橋さゆり(田中みな実)の存在から、従来の作品と同じく、人間の暗い本性がありありと描かれる予感がする。
とはいえ、本作における“フェイク”は“家庭の幸せ”ではなく、“偽母”を指しており、これまでの同ジャンルの作品とは異なるストーリーもまた期待できる。近年、共働き夫婦の増加に伴い、子どもの教育を各分野の専門家に委ねる家庭が増えている。背景には、令和時代特有の富裕層の問題が垣間見える。
また、本作は現代社会のさまざまな問題を巧みに織り交ぜ、未婚の人や学歴に悩む人に寄り添う内容だと感じる。特に、薫を通じて未婚者に寄り添うシーンが挿入されていることにおどろかされた。薫がいろはの偽母を務めることになったのは、子育て中の時短勤務の同僚が“多様性の象徴”として高く評価されたことに落胆し、大手企業を退職したためである。薫のストレスは職場だけでなく、家庭でも膨らんでいる。母・聖子(筒井真理子)が薫に言った「みんなと同じように仕事と子育てを当たり前のように両立していくんだって思ってた」という一言は独身者の心にひっかかったはずだ。
加えて、本作は学歴についてそれぞれの立場からリアルな想いが描かれている点も興味深い。中卒の茉海恵は東大卒の薫よりも経済力があり、多くの従業員の人生を背負う立場にあるが、自己評価は低い。茉海恵の「そもそも私みたいな人間が、あんな格式高い学校の敷居を跨ごうとすること自体、ありえない話なんだよ」という台詞は切なかった。人はいくら成功をおさめても、自身について過去や生い立ちと切り離して考えにくく、毛並みのよい人と比べ、自信を持てないこともある。
一方、薫も自己評価がそう高くはなく、「勉強してきた時間だけは誇れます」と茉海恵に述べていた。受験勉強に励み、国内最高峰の大学を卒業したとしても、必ずしも安定した生活が得られるとは限らないという、人生の難しさを実感しているようだった。
記事の前半で述べたように、生まれ育ちが違う人、経済力が違う人が関わり合う機会はさほどない。それゆえに、自分とは異なる人生を歩む相手について想像をふくらませることもある。薫と茉海恵はお互いに自分にない相手のよさを受け入れ、尊敬し合っているが、タイプが違う二人が引き起こす相乗効果も楽しみだ。
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