

阿部サダヲ×松たか子、魂がぶつかる現場――『しあわせな結婚』の舞台裏をPが語る
スペシャルドラマ『スイッチ』(2020年、テレビ朝日系)をはじめ、映画や舞台で何度も共演している阿部サダヲと松たか子が出演し、大河ドラマ『光る君へ』(NHK系)などこれまでさまざまな作品を手がけてきた大石静が脚本を担当するなど、放送前から大きな話題を集めていたドラマ『しあわせな結婚』(テレビ朝日系)。
独身を貫いてきた人気弁護士・原田幸太郎(阿部サダヲ)は、入院先で出会った女性・鈴木ネルラ(松たか子)と電撃結婚。だが、15年前に彼女の元婚約者・布勢夕人(玉置玲央)が亡くなった事件が再捜査され、愛と真実の間で揺れ動く――というマリッジ・サスペンスだ。
放送前、そして放送後も注目度の高い本作のゼネラルプロデューサーを務める中川慎子氏に制作した経緯、さらには阿部と松の演技力など話を聞いた。
◆“サスペンス”になった背景
まず本作を制作した背景について、「2021年に放送された『和田家の男たち』(テレビ朝日系)で大石さんとご一緒した際、大石さんが1994年に脚本を担当した大ヒットドラマ『長男の嫁』(TBS系)の台本を読ませていただく機会をいただきました」と説明を始める。
「当時もいち視聴者として見ていたのですが、ドラマのプロデューサーという立場として改めて台本を読むとめちゃくちゃ面白い上に、本当に構成がすばらしくて感銘を受けたんです。そこで令和で『長男の嫁』のようなホームドラマを制作したいと考えました。
また、阿部さんは過去に『スイッチ』に出演していただいたのですが、これまでテレビ朝日の連ドラでは、主演作がなかったので、いつか『阿部さん主演の連ドラ…』という思いがこの数年ずっとありました。そして、『大石さん脚本でホームドラマを制作するのであれば、ぜひ阿部さんを主演に!』と考え、本作の企画を練っていきました」
大石静脚本、阿部サダヲ主演という重要なピースが埋まり、ストーリーの骨格がどんどんと決まっていったという。
「『長男の嫁』はヒロインを演じる中村美里(浅野ゆう子)が長男・健一郎(石田純一)の家に嫁ぐ物語ですが、今作では、今の時代を鑑みて、『50歳まで独身を貫き、家族とは無縁に生きてきた人が、家族の中に入れられた時にどのように戸惑い、どのような考えを持つのか』という部分をコメディとして描こうと、幸太郎をはじめ周辺の設定も決めていきました」
続けて、コンテンツが溢れる時代だからこそ、サスペンス要素を追加したようだ。
「民放ドラマが多く放送され、配信プラットフォームでもドラマが次々と配信されています。視聴者の選択肢が無数にある今の時代、3か月間毎週時間を割いて見てもらうためには何らかの中毒性が必要だと考えています。ホームドラマの醍醐味として家族が泣いたり笑ったりというのも素敵ではありますが、『登場人物に圧倒的な“枷(かせ)”がなければ、このドラマを牽引していくことは難しい』と考え、ミステリー要素を加えた、マリッジ・サスペンスという切り口が生まれました」◆放送前の不安
現在SNSでは布勢を殺害した犯人の考察合戦が繰り広げられ、ミステリー要素を加えたことが追い風になっている。とはいえ、昨今の“考察ブーム”を特別意識したわけではなく、「多面的に楽しんでもらえることは狙っています。ホームドラマであり、夫婦のラブストーリーであり、サスペンスであり、いろいろな立場の人にいろいろな形で楽しんでほしいです」と口にする。
とはいえ、いろいろな楽しみ方があるゆえに、視聴者に受け入れてもらえるか放送前は不安だったと話す。
「本作は痛快なドラマではありません。『ゾワゾワと来る不気味さや、後味が良いのか悪いのかわからない不穏さがあるけど面白い』というところが視聴者の方にどのように伝わるのかは、撮影時はもちろん編集中もずっと悩んでいた部分ではありました。ただ、放送後のSNSを見るとその辺りを楽しんでくださっている声が多く、とてもホッとしたことを覚えています」
◆「ネルラを引き上げてもらった」
ドラマプロデューサーとして中川氏は阿部と松の演技力をどのようなに捉えているのか。まず阿部に関しては「俳優としてまごうことなき天才だと思います」と回答する。
「大石さんの脚本はセリフ回しやリアクションが特徴的。例えば『あらっ』というセリフは脚本では『はらっ』と書かれるなど、独特のニュアンスが脚本に多く書かれています。私は大石さんと事前に打ち合わせをしているため、そのニュアンスはわかっているのですが、俳優部陣はそこまではわかりません。ですが、阿部さんは細かいニュアンスも全て完璧にくみ取って体現されていて『事前の打ち合わせに参加してたっけ?』と思うほどです」
一方、松については「ネルラを引き上げてもらったと思っています」と口にする。
「ネルラはミステリアスでとても魅力的なヒロインではありますが、ネルラ自身はセリフがあまりなく、余白の多い難しい役どころだと感じていました。実際、松さんも『難しい』とお話されていて、『あの松たか子をもってしても……』と思ったことを覚えています。
ネルラは深い秘めごとを抱いている闇の部分、一方で周囲を無意識に引き付けるコケティッシュさを持っています。人間であれば多面的な顔を持っていることがむしろ普通です。ただ、ドラマの中で1人の人物が多面的な性格を持っている造形を描くには、説得力をしっかり持たせなければいけない。その部分を松さんはご自身のコメディセンスも発揮しながら両立させてくれました。松さんには本当にネルラというキャラを引き上げてもらった印象です」◆阿部の座長としての魅力
阿部と松を絶賛する中川氏ではあるが、だからこその葛藤もあるという。
「本当に俳優同士の魂がこすれ合う瞬間を目の当たりにしている感じです。そんな2人をプロデューサーという立場で預かっているので『この2人が表現していることを視聴者の方にちゃんと届けられているのか?』と恐ろしくなります」
“達人同士の対決”が撮影現場で常に行われているようだが、現場の雰囲気については「阿部さんが座長として見事なんです」と声を弾ませる。
「サービス精神が旺盛で、深刻なシーンでもリハーサルでは毎回最後にアドリブでオチを付けてくれ、現場にいる人たちを笑わせてくれます。スタッフも盛り上がるので、現場の士気を高めてくれます。ただ、本編ではアドリブはほとんどやりません。そこは大石脚本への圧倒的なリスペクトと信頼があるからだと思います
最後に本作の注目ポイントを聞くと「『最後までやりたい』と思っていることは、『幸太郎はどのような状況下におかれても妻を愛しぬく夫である』というところは貫きたいです」と語気を強める。
「実際にパートナーに自分の知らない秘密があったり、ましてや殺人の疑いがかけられていたら、そこに惑わされず、ぶれずに愛し続ける男性はなかなかいないのではないかと思います。なので、幸太郎という男性は、『こういう男性がいてほしいな』という視聴者の一縷の望みになるような男性として描いているため、注目してもらえれば。また、後半にかけてネルラの吸引力が上がっていき、可愛さと怖さが底知れなくなっていくので、ネルラの進化も意識してもらえればと思います」
ますます松たか子の覚醒は続くらしく、やはり最後までは目が離せないドラマと言える。
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