俺ではドラマは生まれない／連載：小林私「私事ですが、」

美大在学中から音楽活動をスタートしたシンガーソングライター・小林私が、彼自身の日常やアート・本のことから短編小説など、さまざまな「私事」をつづる連載企画。今回は、人間の面白さについて考えてみたエッセイです。

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リューク曰く「人間って面白」であるわけだが、

それは夜神月が面白いからではないと思っている。

いや、デスノートがクソ面白いのは夜神月がクソ面白いからという事実は多分にしてあるので、これは夜神月が突出して興味深いことを否定するわけではない。

元々飯を食ったり食べ歩きをする番組とかが好きなのだが、最近は似て非なる旅やロケの番組を見るのもまあまあ面白い気がしてきた。

俺は景色とか観光自体には全然興味が湧かない。

なんかそういうのにあんま興味ないのは無頼で格好良い空気感があるような気がして、逆にめちゃくちゃ興味ある方が格好いいんじゃないかと、昔は景色って良いよね観光って良いよねと自分に思いこませていたのだが、冷静になったら本当に全然興味がなかった。

遠くの知らん建物とか見てどうすればいいんだ。自然見ても地元と一緒だな～って思っちゃうし、近所のスーパーまでの道の花の名前も知らないし。

で、やっぱり人が面白いからだと思うに至ったわけだ。

あらゆるところで俺は「ベイクオフ・ジャパン」の話をしているのだが、今回もする。内容は、アマチュア料理家（ベイカー）がテーマに沿って作った料理をプロの審査員に批評会形式でお披露目する番組である。これがまあ面白い。

個性豊かな料理もさることながら、やっぱり人が良い。はじめはオーディションで特に変わった人を選んでるのかと思ったが、違う。同じ人間を長々見ているとどんどんその人自身の面白さに気付いてくる。

俺はそもそも知らない人が嫌いで、0点スタートから加点していくタイプなので見れば見るほど大好きになる。後半なんてちょっと今のは厳しいんじゃない！？とか思っちゃうのだ。ちな審査員の鎧塚シェフも超好き。

話が飛び飛びだが、要はロケ撮りて～という話である。

ロケして～ではなく、撮りて～だ。

順を追って説明すると、友達とかと旅するのはまあ面白いだろう。でも旅そのものは全然好きじゃないので、カメラが回っててほしい。

配信をさんざんしてきたのは結局カメラが回ってた方が好きだからだ。

生放送とか最高。収録ってちょっとダレようもんならカットカット！さあ極限まで練られた面白シーンいっちゃうよ～！ってな感じがする。

生放送はしょうがね～ってなもんで、複数人でやるなら尚更、一丸となってこの時間をでっちあげるぞ！感が良い。全員で同じだけの責任が付き纏うのでマジで必死。

その上で、俺はやはり演者に向いていない。フロントマンに、と言うべきか。

ロケでも漫画でもアニメでもそうだが、こうしたい！あれやりたい！という奴がいなければ物語は進まない。観光？グルメ？海賊王？火影？ヒーロー？最高の遊び相手が見つかった時に自分の人生を終わらせる？なんでもいいが、欲望がそのままエネルギーとなって、それを達成させる為の障害物競争がドラマを生むのだ。

俺は？やりたいこと全然ない！家で寝ていたい！

そんな人間を連れ出してドラマを生む？少なくともその時のフロントマンは俺ではない。俺はいつまで経っても主役ではないのだ。

ハングリー精神とは少し違うかもしれないが、そういう何かを動かそうとするエネルギーが全く足りていない。何が問題かって足りてないなりに足そうとする気概も別にない。

ゼロからプラスに持っていく以外にもマイナスからゼロに持っていくこともある種ドラマなのだが、いかんせんその場その場で自分を認めることを繰り返してきてしまった分、今のままじゃダメだ、と思えない。

じゃあなんでロケ撮りたいんだと言われたら確かになのだが、物づくりは好きだし、あとは友達の変なとこもっと皆見てくれ～が一番強いんかな。

高校で出会った面白い奴の話を大学でしたいし、大学にいた変な奴の話を同業者にしたいし、というかこのコミュニティだとあいつは関係ないからこのエピソードトークの前にあいつの説明をして...というのが煩わしいのもある。場ごとにすぐ伝わる話を選んで喋れれば苦労はないのだが、そんな技量もないので、色んな場所でいろいろな友達の話をする意味不明の人間が爆誕している。

一旦Goproとピンマイクを探しています。