(C)V House Productions

【何観る週末シネマ】成功しても死んだら巻き戻し?インド発SF政治風刺『政党大会 陰謀のタイムループ』

2025.05.09 18:03
提供:ENTAME next

この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、『政党大会 陰謀のタイムループ』。気になった方はぜひ劇場へ。

〇ストーリードバイから友人の結婚式に参列するためにインドに帰ってきた青年・カーリクは、偶然出会った警察官・ダヌシュコディに拘束され、政党大会で暗殺テロを起こすよう強要される。カーリクは現行犯として射殺されるが、その途端に同じ日の朝に引き戻される。タイムループが起きていることを理解したカーリクは、テロを止めることを決意するが、タイムループは繰り返されていく。タイムループを引き起こす契機となるのは、自らの身に降りかかる災禍であることが分かっても、彼は躊躇しない。それを止めなければ、インド全体に憎悪と暴力と不正を振りまくことになるからだった。孤独な戦いを続けるカーリクの背後には何らかの大いなる力がはたらいているのか?

〇おすすめポイントインドでも多くのタイムループものが制作されている。ドイツ映画『ラン・ローラ・ラン』(1998)をリメイクしたNetflix映画『エンドレス・ルーーープ』(2022)や『Jango』(2021)、5月9日からインドで公開される『Bhool Chuk Maaf』などなど、いくつかの作品がある。

タイムトラベルにまで幅を広げると、かなり多くの作品があり、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)を大雑把に下敷きとした『Action Replayy』(2010)や『あの時にもう一度』(2016)なども有名であるが、日本でもいつのまにか配信されていた『タイム・スプリンター』(2024)といった低予算映画まであったりもする。それに加えて、近年は、劇中のセリフでもタイトルが出てくるが『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)や『ハッピー・デス・デイ』(2017)などの海外作品やアメコミ映画の影響も強くなっていて、SFとインドの社会情勢、神話などを組み合わせた大衆娯楽作は年々多くなってきている。ちなみに劇中でタイムループ映画の例を挙げていく下りは、『ハッピー・デス・デイ』のパロディだ。

とくにタミルにおいては、タイムトラベルが主体となった作品としては初となる『Indru Netru Naalai』(2015)以降、多くのSF作品を制作している。そのため、タミル語映画において、タイムトラベルというジャンル自体は、決して珍しい題材ではない。だからこそ、常に新しさを求められるともいえるジャンルとだろう。

今作を手掛けたヴェンカト・プラブといえば、2000年代後半からのタミル・ニューウェーブを支えた監督のひとりであり、近年はドラマシリーズのクリエイターとしても知られている。ファンタジー・ホラードラマ「Mangalya Dosham」では、265話のうち167話の監督を務めた。ヴィジャイ主演の新作『The Greatest of All Time』(2024)もSF要素の強い作品になっていたように、常に新しさを求めるハングリーなクリエイターといえるだろう。

今作においても、ポリティカル・サスペンスとSFを組み合わせることで、大規模な政治風刺作となっている。アメリカでもトランプ政権への不安と恐怖をホラーやサスペンスに変換した作品を多く制作したように、インドでもモディ政権、ヒンドゥー至上主義への不安と恐怖は多くの作品に反映されている。

前半はタイムループものとしては王道的な展開に思えるかもしれないが、後半に投入される追加ギミックが、物語をより複雑化させる。そんな巧妙な脚本にも注目してもらいたい。

〇作品情報監督:ヴェンカト・プラブ脚本:ヴェンカト・プラブほか  出演:シランバラサン、S・J・スーリヤー、カリヤーニ・プリヤダルシャンS・A・チャンドラシェ―カル、Y・G・マヘーンドラン、アラヴィンド・アーカーシュ、カルナーカラン、プレームジ・アマランほか原題:Maanaadu  2021年/インド/タミル語/147分/R15+配給:SPACEBOX2025年5月2日より新宿ピカデリーほか全国順次公開

関連リンク

関連記事

  1. SKE48 古畑奈和、「自分は誰かの役に立てている」10年突き進んだ"アイドル"という職業
    SKE48 古畑奈和、「自分は誰かの役に立てている」10年突き進んだ"アイドル"という職業
    ENTAME next
  2. 美女コスプレイヤー・蒼猫いな、フェチ感じる衣装で美スタイル完全解禁【写真10点】
    美女コスプレイヤー・蒼猫いな、フェチ感じる衣装で美スタイル完全解禁【写真10点】
    ENTAME next
  3. 10年ぶりの写真集、中川翔子「過去最大の露出に挑戦したきっかけは江頭2:50さんの一言」
    10年ぶりの写真集、中川翔子「過去最大の露出に挑戦したきっかけは江頭2:50さんの一言」
    ENTAME next
  4. 中川翔子、すべてを出した10年ぶり写真集を語る「血管を褒められる体験は初」
    中川翔子、すべてを出した10年ぶり写真集を語る「血管を褒められる体験は初」
    ENTAME next
  5. 桃月なしこ、話題のフォトスタイルブックからナチュラルな白ランジェリーショット公開
    桃月なしこ、話題のフォトスタイルブックからナチュラルな白ランジェリーショット公開
    ENTAME next
  6. 似鳥沙也加、まん丸バストを置きパイした泡風呂グラビアに「キュンが止まらない」
    似鳥沙也加、まん丸バストを置きパイした泡風呂グラビアに「キュンが止まらない」
    ENTAME next

「音楽」カテゴリーの最新記事

  1. 香取慎吾がグローバル展開へ 日本人アーティスト初「Weverse Albums」とコラボ
    香取慎吾がグローバル展開へ 日本人アーティスト初「Weverse Albums」とコラボ
    モデルプレス
  2. ハロプロ研修生実力診断テスト2025開催!ベストパフォーマンス賞は西村乙輝が受賞!
    ハロプロ研修生実力診断テスト2025開催!ベストパフォーマンス賞は西村乙輝が受賞!
    WWS channel
  3. JO1とDXTEENが『KCON JAPAN 2025』で熱演!最新曲とカバー曲で圧巻のステージを披露
    JO1とDXTEENが『KCON JAPAN 2025』で熱演!最新曲とカバー曲で圧巻のステージを披露
    WWS channel
  4. 復帰のダウンタウン浜田雅功、誕生日に松本人志作詞「チキンライス」熱唱 JO1・GENERATIONSら豪華集結【ごぶごぶフェス2025/セットリスト】
    復帰のダウンタウン浜田雅功、誕生日に松本人志作詞「チキンライス」熱唱 JO1・GENERATIONSら豪華集結【ごぶごぶフェス2025/セットリスト】
    モデルプレス
  5. BEYOOOOONDS、卒業控える島倉りかと10人で最後のツアー始動!華やかなボールルーム演出で春ツアー初日を飾る
    BEYOOOOONDS、卒業控える島倉りかと10人で最後のツアー始動!華やかなボールルーム演出で春ツアー初日を飾る
    WWS channel
  6. 元NMB48山本彩「オープンなマインドで参加できた」ニューヨークで過去最大規模のパレードに登場
    元NMB48山本彩「オープンなマインドで参加できた」ニューヨークで過去最大規模のパレードに登場
    WEBザテレビジョン
  7. 浜田雅功がハマ・オカモトとフェスで親子初共演「やりにくいわ~」を連発
    浜田雅功がハマ・オカモトとフェスで親子初共演「やりにくいわ~」を連発
    WEBザテレビジョン
  8. JO1豆原一成、初公開の幼少期写真や思い出も 母へのオリジナル楽曲公開【ママへ】
    JO1豆原一成、初公開の幼少期写真や思い出も 母へのオリジナル楽曲公開【ママへ】
    モデルプレス
  9. ONE N’ ONLY、涙のツアーファイナルで見せた覚悟と絆 初単独武道館で新たな夢誓う【ライブレポート】
    ONE N’ ONLY、涙のツアーファイナルで見せた覚悟と絆 初単独武道館で新たな夢誓う【ライブレポート】
    モデルプレス

あなたにおすすめの記事