身長が高いので里村と比べてもさほど見劣りしない。これも女子プロレスラーの素養のひとつ (C)東京女子プロレス

「すごいプロレス」を目撃した…荒井優希と里村明衣子、女子プロレスの歴史が線でつながった瞬間

2025.03.27 18:07
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SKE48を3月31日に卒業する荒井優希と、里村明衣子が3月16日に、大田区総合体育館でシングルマッチを行った。4月29日に引退が決まっている里村に、結果荒井は完敗した。しかし、元週刊プロレス記者の小島和宏は「すごいプロレス」を目撃した、という充足感に震えたという。

「正直、驚いています! こんなに素晴らしいプロレスラーと最後に出会えたことに感謝したい」

SKE48・荒井優希との最初で最後の闘いを終えた里村明衣子は、そう言ってプロレスラー・荒井優希を大絶賛しながら、目を丸くした。それがいわゆる社交辞令ではないことは、バックステージでのコメントを出し終わったあとの里村の穏やかすぎる表情を見れば、すぐにわかった。

「あっ、これ、コメントで話せばよかったなぁ……」

コメントスペースから控室へと戻る途中で足を止めた里村は、荒井優希に対する考察を熱く語りはじめた。

「最初にローキックを入れたとき、びっくりしたんですよ。太ももがものすごく硬くて。プロレスラーとして一生懸命、練習をしているのはもちろんだけど、きっとアイドルとして鍛えられた筋肉が基になっているんだと思います。アイドルの人たちって、2時間も3時間もコンサートで動きまわるし、それを1日2回公演とかするわけじゃないですか? あの体力ってすごいと思うし、ステージに上がるための鍛錬もすさまじいものだと思う。だから硬い太ももを蹴った瞬間『これがトップアイドルか!』と感じました」

アイドルの体力は想像以上にすごい。ドームでのコンサートともなれば、ステージの横幅は野球での外野とほぼ同じになる。さらにはピッチャーマウンドあたりに設置されたサブステージまで走りながら歌い、そこで何曲が披露したら、またバックスクリーン方面まで走って戻る。それだけでとんでもない運動量だ。アイドルになった女の子たちは最初からそれを当たり前のようにやっている。そして本人が気づいていないだけで、とんでもない『体力おばけ』に成長していくのだ。

以前、あるアイドルのコンサート開演前に「ステージに出る前の円陣に参加してください』と頼まれたことがあった。なにげなく肩を組んだとき、その小柄なアイドルのゴリッとした背中から肩にかけての筋肉にびっくりした。そう、里村が荒井優希を蹴ったときに感じた驚きと同じような衝撃を記者も味わってきているのだ。

こういうアイドル現場のリアルを知っている人であれば、アイドルがプロレスに転向したり、二刀流をこなせることにも合点がいくのだが、プロレスしか見ない人たちにはなかなか伝わりにくい。もちろんアイドルとして鍛えた体力と、プロレスに必要な瞬発力やパワーはまったく別モノだし、それぞれの特性も関わってくるから、誰もがプロレスに適しているとは言えないが、荒井優希の場合、アイドルとしての蓄積と、プロレスラーとしての鍛錬が見事に嚙み合った。それをたった一発の蹴りで、つまりはたったの1秒で見切った里村明衣子はまさしくプロレスの達人である。

とはいえ、やっぱり里村は女子プロレス界の横綱だ。

試合開始からしばらくのあいだ、荒井はなにもできなかった。真正面から攻めれば、すべて里村にいなされ、ひとたび倒されてしまったらグラウンドレスリングで里村に制圧されてしまう。とにかく里村の動きはすべて理にかなっていて、1秒たりとも無駄な動きがないので、一度、ペースを握られてしまうと、本当に手も足も出なくなってしまう。

あまりにも里村が完璧すぎて、随所で荒井の闘いの粗さ、甘さが見え隠れしてしまうのだが、そういう闘いができたのは大きな財産になる。この試合の映像を見れば、いまの荒井優希に足りないもの、できないことがすべてわかるし、お手本として里村のパーフェクトな闘いっぷりも同時に見ることができる。そんな『動く参考書』を残してもらったことは、今後の荒井優希のプロレスラー生活を明るく照らす道筋となることだろう。

そんな圧勝ペースの試合の中で、里村明衣子はふたたび驚かされることになる。

完璧に決まったオーバーヘッドキック。里村も「決まった」と確信するほどの足ごたえを感じていた、という。

ところが荒井優希はそこで終わらなかった。いや、それどころか猛烈な反攻を開始する。

この試合が決まったときに荒井優希は「勝ちにこだわる」と言った。4月29日に引退が決まっている里村とは、もう再戦することはできない。負けたら、絶対に後悔が残るから、絶対に勝たなくちゃいけない、と。しかし、試合が近づくにつれて、この心境が変化していく。勝つために連日連夜、里村の試合映像を見て研究しているうちに、荒井は里村の偉大さをこれでもか、と突きつけられた。技ひとつ、蹴りひとつ、そして里村が発する言葉ひとつまでもが刺さりまくる。最初で最後のシングルマッチでそのすべてを体感し、学びたいと思うようになっていった。

だから荒井は倒れるわけにはいかなかった。

3カウントが入った瞬間、里村からの学びの時間は強制的に終了させられる。1秒でも長く闘って、ひとつでも多く里村の技を刻みこむために必死になって荒井は前へ前へと進みつづけた。その姿に里村は驚いたわけだが、そうさせていたのは里村自身だったのだ。

結果、荒井は完敗した。それでも魂と感情をむき出しにしたファイトに、館内は大きな拍手に包まれた。じつはこの試合、休憩前の第7試合だったのだが(このあとに3大タイトルマッチが組まれていた)、そこまでの試合も熱戦続きだったこともあって、なにかもうメインイベントが終わったかのような空気感さえ漂っていた。

ベストバウトとか名勝負とかいう枠とはちょっと違うかもしれないけれど『すごいプロレス』を目撃した、という充足感がハンパなかった。所属選手のみによる3大タイトルマッチでその空気をぶち破り、さらに興行の満足度を高めてみせた3組のチャンピオンと3組のチャレンジャーのプロ意識と力量の素晴らしさもここに特筆しておきたい。

試合後、里村がなにか荒井に話しかけているように見えたので、その内容について里村に尋ねてみると、じつは最初に言葉をかけたのは荒井で「これからはプロレス一本で引っ張っていきます」というようなことを言われたのだという。

そういえば里村の出世試合は、この日の闘いの舞台となった大田区総合体育館(当時の名称は大田区体育館)で1996年5月に開催された『女子プロレス・ジュニアオールスター戦』だった。まだルーキーだった里村は他団体のホープたちを絶大なるインパクトで上回り、大会MVPを受賞。まだ始まったばかりだった平成という時代を託された。同じ場所で、今度は里村から荒井に令和という時代が託されたと思うと感慨深い。

平成の横綱から、令和の超新星に。

いや、よくよく考えたら、里村の師匠は昭和のスーパースター・長与千種なのである。

昭和、平成、令和。

昭和100年の今年、形を変えて受け継がれてきた女子プロレスの歴史が一本の線でつながった。

3月31日にSKE48を卒業する荒井優希は、4月のアメリカ遠征からプロレスラー一本で勝負する。その直前に里村明衣子とリングで出会えた幸運。ギリギリのところで『間に合った』闘いは、きっと、これから先、ずっと語り継がれることになるだろう。

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