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【何観る週末シネマ】ファンタジー以上に不思議な現実世界『スイート・イースト不思議の国のリリアン』

2025.03.14 15:11

提供：ENTAME next

この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、『スイート・イースト不思議の国のリリアン』。気になった方はぜひ劇場へ。

〇ストーリーサウスカロライナ州の高校3年生リリアンは、彼氏のトロイ、親友のテッサ、何かとトロイにちょっかいを出してくるアナベルたち同級生と、修学旅行でワシントンD.C.を訪れている。はしゃぐクラスメイトを、ひとり冷めた目で眺めている、どこか物憂げなリリアン。夜、皆で抜け出して行ったカラオケバーで、陰謀論に憑りつかれた若い男による銃乱射事件に巻き込まれてしまう。その場にいたド派手なパンク・ファッションのケイレブに導かれ、店のトイレに逃げ込むと、大きな鏡の裏に“秘密の扉”があった。それは地下通路へと繋がっていた…。

〇おすすめポイントNetflix映画『リベンジ・スワップ』(2022)や4月から日本公開される『JOIKA　美と狂気のバレリーナ』にも出演している、圧倒的目力をもった若手女優タリア・ライダー主演作。今作においてもタリアの目力によって構成されているシーンがある。

突然、不思議な世界に迷い込んでしまった主人公リリアンを待ち受けている奇想天外な出来事と人物たち。芸術や社会構造を知ってます的な意識高い系アーティスト集団、ネオナチの大学教授やエレクトロ音楽好きのイスラム主義者などなど、クセもの?個性豊か?なんと言っていいのか……。ところがそれは、多少の誇張はあったとしても、アメリカの闇や裏社会そのものなのだ。そして、その闇は日常に潜んでいる。

高校生ということもあり、限られた視点の中で、なんとなく生きていた。しかし、どこかで同級生、とくに男たちに飽き飽きしていたリリアンにとって、次々と目にするアメリカの現実社会そのものが、ファンタジーでしかなく、逆にリリアンの想像するファンタジーよりも、断然ファンタジーだったのだ。

少し離れた視点から、皮肉的に、滑稽にアメリカという国を描く点においては、『ボラット栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2006)と似ている部分があるかもしれない。

内容に対してのインパクトも十分なのだが、現実と幻想が交差し、そのうちひとつになっていく不思議な世界観を、映像として表現した、今作の監督ショーン・プライス・ウィリアムズのセンスは必見だ。

16ミリで撮影されたインディーズ臭漂う空気感の中に、アニメーションやサイケデリックなものが飛び出してきたりと、予想がつかない映像体験の数々。

そんなショーン監督は、『テスラ』(2020)や『グッド・タイム』(2017)など、数多くの作品で撮影監督を経験してきており、ほかにもサブリナ・カーペンターやBLACKPINKのロゼ、アディソン・レイといったアーティストのミュージックビデオを撮っているだけのことはあるが、長編監督としては、実は今作がデビュー作となる。

主演のタリアもそうだが、初長編監督作品で、圧倒的なインパクトを残したショーンの今後の活躍にも期待したい!!

〇作品情報監督・撮影：ショーン・プライス・ウィリアムズ脚本：ニック・ピンカートン出演：タリア・ライダー、サイモン・レックス、ジェイコブ・エロルディ、アール・ケイヴ、ジェレミー・O・ハリス、アヨ・エデビリ、リッシュ・シャーほか提供：ニューセレクト配給：アルバトロス・フィルム公式サイト:https://sweet-east.jp/