2024年8月に公式YouTubeチャンネルの動画総再生数が10億回を突破した「あおぎり高校」(プレスリリースより) (C) viviON

もうバーチャルだけの存在じゃない? “実写”を取り入れた企画が大人気となるVTuber新時代へ

2024.09.29 12:03
提供:ENTAME next

バーチャルYouTuber(VTuber)といえば、その名の通り“バーチャル空間にしか存在しないキャラクター”としてブランディングすることが多かったように思われる。しかし最近ではその風潮に大きな変化が生じており、現実と地続きな世界で活躍するVTuberが増えているようだ。

たとえばチャンネル登録者数100万人超えのVTuberグループ「あおぎり高校」は、積極的に実写を取り入れた企画によって大きな話題に。実写で撮影したメンバーの“手”が誰のものか当てる企画や、「1万円でより遠くに行った人の勝ち」の外ロケ企画といった動画が投稿されており、コンスタントに数十万再生を記録している。

さらにメンバーの音霊魂子は5月に3Dモデルの新衣装お披露目配信を行うにあたって、本人が新衣装と似た服で登場する“実写パート”を設けていた。

また、尖った配信スタイルで知られる「深層組」も実写を上手く取り入れており、従井ノラを始めとしたメンバーたちが“超美麗3D”という体裁で外ロケ企画を行っている。さらにリアルイベントにて、着ぐるみに身を包んだ演者たちと触れ合えるのは同グループならではの特色だろう。

実写の動画や配信では生身が映り込むことも珍しくないのだが、そうした路線を開拓してきた第一人者としては“おめシス”こと「おめがシスターズ」の名前が挙げられるだろう。2018年から活動している古参のバーチャル双子ユーチューバーなのだが、ある時期からは「部位チューバー」へと方向転換。これは顔だけ3DCGでカラダは生身……という斬新な配信スタイルだ。

その自由度を活かして、2人で釣りに出かける動画や店舗まで実際に足を運ぶ実写グルメ動画など、さまざまな企画に挑んでいる。つい先日には、握手会や記念撮影を盛り込んだ日帰りバスツアーの企画も発表された。

そもそも外ロケ自体、VTuber業界では大きな流行りとなっている。「ぽんぽこちゃんねる」で活動する甲賀流忍者!ぽんぽことピーナッツくんの2人は、活動歴5年以上の古株VTuberだが、ある時期からは外ロケ動画を積極的に出すように。

国内外の観光地に訪れる旅行系の企画のほか、「ド田舎から路線バスに乗ってどこまでいけるのか?」、「運動不足でも自転車で淡路島一周することはできるのか?」、「相方に気づかれずにニューヨークまで着いていくことはできるのか!?」といったユニークなお出かけ企画で視聴者を楽しませている。

ただ「おめがシスターズ」とは違って“部位チューバー”というわけではなく、モバイルモーションキャプチャーの「mocopi」を使うことで、3Dモデルを現地の風景の上に表示させているのが特色だ。

さらに大手VTuberグループの「にじさんじ」でも、実写を取り入れたVTuberが登場。月ノ美兎が「mocopi」を使ってさまざまな場所で外ロケを行う一方、加賀美ハヤト・剣持刀也・不破湊・甲斐田晴によるユニット「ROF-MAO」は、無人島サバイバルや日本全国サイコロ旅、農業などの企画を行ってきた。

他方で8月にデビューした大型新人VTuber、「りきゃこ」の存在も見逃せない。人気声優・逢田梨香子の“分身”として位置づけられた存在なのだが、本人とかけ離れたガチガチの設定が用意されているわけではない。これまでも声優のVTuber化は多かったが、設定がゆるめでファンの間で暗黙の了解ができているという意味では、新しいスタイルかもしれない。

VTuberの開祖・キズナアイが真っ白な背景の“バーチャル空間”から視聴者に語りかけていたことを思うと、こうした最近のブームには隔世の感がある。とはいえ、どんな文化にも変化は付き物。VTuberがバーチャル空間だけの存在ではなく、リアルと地続きに生きている存在になったことで、また新しい時代が始まったと言えるのではないだろうか。

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