目黒蓮『海のはじまり』と松村北斗『西園寺さん』で描かれたシングルファーザーの確固たる父性
2人の現役アイドルであるSnow Man・目黒蓮と、SixTONES・松村北斗が、それぞれシングルファーザー役を務める月9『海のはじまり』(フジテレビ系)と火10『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)が、今夏大きな話題となっている(以下、ネタバレを含む)。
『西園寺さん――』では、松村が妻を亡くし、1人娘のルカを必死に育てる楠見俊直を好演している。男手一つで仕事・家事・育児に奔走し、疲弊しながらも、ルカへの愛情深さは物語が始まった時から一貫している。そこに会社の同僚で一軒家の賃貸スペースを提供してくれた主人公・西園寺さん(松本若菜)が現われる。
物語の序盤に一晩、ルカを預かってもらった楠見は、罪悪感を覚えながらもそれを“解放された”と感じた。西園寺さんと3人で“偽家族”として少しずつ家事・育児の分担が進められ、1人で全てを背負っていた楠見が、徐々に“解放”の度合いを強くしてきたのが『西園寺さん――』だ。
それとは逆に、徐々に父親である男性の“解放”が閉ざされてきたのが『海のはじまり』だ。目黒演じる主人公・月岡夏は、印刷会社に勤めながら、仕事が出来て面倒見の良い年上の彼女である百瀬弥生(有村架純)と、結婚目前ながら何不自由ない、“解放的な”暮らしをしていた。
そこに突如、7年前に別れた元恋人が亡くなったことをきっかけに、彼女がひっそりと産んでいた女の子・海が、夏の実子だと判明する。彼女の母や元同僚に問い詰められつつ、海との交流を経て、正式に父親になる決心をした夏。他方、物語序盤こそ理解が早く協力的で、海の母にもなろうとしていた弥生だが、本当の親子である夏と海を前に疎外感を感じていた。
弥生は第9話でついに、「やっぱり私は月岡君と2人でいたかった」と本音を吐露。海の母親にはならず、夏と別れたいことを打ち明けた弥生に対し、夏も「どちらか選ばなきゃいけないなら海ちゃんを選ぶ」と、はっきり正直に伝える。
弥生と結婚し新しい家族を築くことを思い描きつつ、縛られるものも無かった夏が、海との出会いにより、今でも強く想いを残す弥生と涙ながらの別れを決意した。そうするのが必然のように、この物語の後半までに、無邪気に最上級の愛情を向けてくる海との時間は、夏にとっても愛おしいものに変わっていた。もはや海は夏にとって“解放”を奪うものではなく、かけがえのない家族になっていたのだ。
『西園寺さん――』においても、楠見は西園寺さんと男女として意識し合う関係にあるが、万一どちらかを選ばなければならないなら、間違いなく娘・ルカを選ぶだろう。楠見と違い、我が子と7年の空白期間がありながらも、夏にも楠見同様の確固たる強い“父性”が芽生えていた。その深い絆で結ばれた父子に対し、西園寺さんと弥生は、どんな新しい家族の形を見出すのか、あるいは完全に別の道を選ぶのか。シングルファーザーの“父性”を中心に巡る、2つの物語の行く末から目が離せない。
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