

アニメソングの女王・堀江美都子「感心ではなく、感動を歌うこと」、水木一郎ら歴代レジェンドと共に歌い継ぐアニソンへの想い

アニメ制作会社「タツノコプロ」の創立60周年を記念して開催された、アニソン界のレジェンドたちによる「タツノコプロ創立60周年記念特別公演~Tatsunoko 60th Legends~」が、10月1日(日)夜6時30分からBS松竹東急(全国無料放送BS260ch)にて放送される。同公演にはささきいさお、山本正之、影山ヒロノブ、朝川ひろこらとともに、「アニメソングの女王」堀江美都子も出演し、会場を大いに盛り上げた。本記事では、そんな日本のアニソン界を牽引してきた堀江に、公演の見どころをはじめ、約60年続く日本のアニメソングシーンの変化やアニソンに対する想いを語ってもらった。
「~Tatsunoko 60th Legends~」の見どころは尊敬する“アニキ”水木一郎さんの特別VTR演出
――2023年1月9日に開催された「~Tatsunoko 60th Legends~」はまさにレジェンドが出演したイベントだったと思うのですが、BS松竹東急での放送を控えた今、どういう見どころがあるのかをお教えください。
まず、日本のアニメ史って約60年になるんですね。そんな中でタツノコプロさんも60周年なので、日本のアニメ史のほぼすべての流れがご覧いただけるかと思います。また、今回オリジナルシンガーがいまだに全員現役で歌っているという点も見どころですね。
あとは普通のライブですと映像がないことも多いのですが、タツノコプロさんのイベントは(アニメの)映像がもれなく付いているので、見ていて楽しめると思います。さらに今までなかったようなトークコーナーがありますので、面白い話も聞けると思います。
――7月には追加公演を大阪でもされたということですが、お客さんからの反応があったからということでしょうか?堀江さんの耳にはどのような声が届いていましたか?
やっぱり若い人というよりは、リアルタイムで見ていたファンの方が多かったので、「懐かしい」っていう声や、「タツノコの色々な作品が見られて楽しかった」っていう声、あと関西の方からは「大阪ではやらないのか」というラブコールをいただきました。
――同公演では、ささきいさおさんと“水木一郎さんとの思い出”を語り合う一幕が印象的だったのですが、改めて水木さんの歌の魅力や素晴らしさを教えてください。
まずは誰よりも「アニメソング」という音楽ジャンルに誇りをもって、1曲1曲魂を込めて表現をしていた人で、歌は抜群にうまくて、アニソンを歌うために生まれてきた人だなって思います。私は50年以上、きょうだいのように付き合ってきたので、とにかくこれにはすごく出たかったんです。
――皆さんの想いが映像の中にも宿っているような感じがしました。
このライブイベントは、水木さんがお亡くなりになって1カ月くらいの頃だったので、何を語って良いのか…まだ語れないくらいのところだったんです。だけどやっぱり、そこの場所に居たかったし、アニキの曲をそのまま映像に流していただいて嬉しかったし、ファンの方も一緒に歌ってくださいましたし、とても良かったと思います。
魅力的なタツノコ作品と、アニソンが世間に広く受け入れられるまで
――タツノコ作品の中で好きな作品、またタツノコ作品の魅力は出演者から見てどのようなところかお教えください。
まず、私はテレビっ子で、「鉄腕アトム」の放送が始まってからすべての漫画・アニメを見てきたと言っても過言ではないくらい大好きだったんです。そんな中、タツノコ作品で1番最初に出会ったのは「宇宙エース」で、“そら”で主題歌が歌えるくらい好きです。デビュー曲の「紅三四郎」も好きですけど、やっぱり「宇宙エース」が好き。あと「けろっこデメタン」も好き。…あ、自分が歌う作品ばっかりになっちゃった(笑)。
タツノコ作品の魅力は、きっと多種にわたる作風にあると思うんです。「けろっこデメタン」みたいに動物が出てくる話もあれば、人情ものの「てんとう虫の歌」みたいに兄弟の話もあれば、「ヤッターマン」みたいな面白いシリーズものもあれば、「ガッチャマン」みたいなかっこいいSFものもあれば…ふり幅すごいですよね。そこが一番楽しめるところかなと思います。あとキャラクターが身近に感じられますよね。トゲトゲしていないというか、シャープな線がありつつもぬくもりを感じるような。
――今はアニソンが広く認知されていて、海外でも人気がありますが、堀江さんが歌っていた時代は、アニソンはどのようなものでしたか?今のアニソンの受け入れられ方とどのような違いがあったんでしょうか?
誰が悪いというわけではないんですが、当時のアニソンは「子どもが聴く歌」というもので、まだまだ音楽的にも認知されていないものもありました。ですが、その当時から一流の作詩家、作曲家、アレンジャーが魂込めて、いろいろな洋楽のフレーズや楽器、キャッチーなものを使ってすごい高いクオリティ―のアニソンを作っていたんですよ。でも当時は「子どもが聴く歌」ですから、音楽的に素晴らしいものとして受け入れられる時代ではなかったんですね。
なので私たちはホールでコンサートをすることはなく、遊園地やデパートの屋上、スーパーなどがホームグラウンドで、ファミリー向けの無料のコンサートが多かったです。そんな中で、1977年くらいに「キャンディキャンディ」と「宇宙戦艦ヤマト」でアニメブームになった時、“アニソンって結構グレードも高いしマーケット的にもおいしいんじゃないか”と着目する人も増え始めて、少しずつ形が変化し出しましたね。
――堀江さんが歌唱する「キャンディキャンディ」のメガヒットがあったから、各レコード会社にアニメソングの部署ができたという音楽業界の逸話もありますよね。
たしかにオリコンの年間アルバムチャートで上の方にいた時に、「アニソン」が入るようになりましたね。その頃から、タイアップ曲やJ-POPの普通のアーティストが歌うようになったりしました。今思うと、アニメ主題歌だから毎週テレビで必ず曲が流れるので、すごい宣伝にもなっていますよね。そういうこともあったんじゃないかなと思います。
そしてこの当時から海外に輸出していたものが、日本より先に海外で音楽ジャンルとして認められるんですよ。それが逆輸入されて「アニメってすごかったんだね」という評価になったような気がします。
「アニソンを選んでよかった」堀江美都子が時代を超えて輝く理由とは
――堀江さんがアニメソングを歌い続けてきた、想いの源泉はどういうものでしょうか?
今思うと、なぜ歌謡曲にいかずアニメソングでつき進んだのかと言われれば、「歌詞の普遍性」と「メロディの美しさ」と「キャッチーなアレンジ」だと思います。
例えば恋愛の歌は50年後に新鮮にそのままのロマンや自分の気持ちで歌えるのかと言われると、私は自信がないです。ただアニソンは時代を超えて、いつでも新鮮に歌えるんですよ。私はこっちを選んでよかったと思います。今や世界的に「アニメ」や「アニメソング」はサブカルとして日本の代表としてしっかり形ができていて、J-POPとの境目もなくなってきている感じですよね。
「感心ではなく感動を」…アニメソングに懸ける想い
――現在では、声優歌手の方は、イベントやライブ、時には舞台など、やらないといけないことが多岐にわたり、まさにボーダーレスになっていて大変だと思います。堀江さんから今の声優さんたちへメッセージはありますか?
今の声優さんたちって、実に器用ですごいなと思います。オールマイティーだしルックスも良いし、フリートークもできるし、歌も歌えば踊りも踊れるし。できないことないんじゃないかと思います。昔は「声優さん」と言えば“影で声を出す人”みたいな形でしたし、主題歌の歌手も“裏で歌っている人”という形だったので、随分と違ってきています。
あとは、価値観が時代によって変わってきている気もします。私の場合、アニソンは「感心よりも感動を歌え」と言われ育てられました。日本語の美しさ、メロディーの美しさをどうやって伝えるかという部分を追求しました。だけど今は2オクターブくらいある音域を、デジタルや楽器のように歌えるというところに価値観が移っているのかもしれないですね。もちろん中にはシンガーソングライターが書くような良い歌詞やメロディーもありますが、“形として関心する”という方に作り上げられているかなと感じます。
――「感動を歌う」って素敵な言葉ですね。どなたの教えなのでしょうか?
作曲家さん、作詞家さん、ディレクターさんです。「あなたは一生アニメの歌を歌う歌手になる」「日本語を美しく、感心されるではなく感動させられる歌手になるように」と言われてきました。
――今は楽器ではなくパソコンで作られていたりもしますしね。
生まれたときから聴いている音がデジタルで、「ボカロ」だったりとか…歌じゃなくて楽器が演奏するようなメロディーを歌ったりするわけじゃないですか。でも昔のアニソンって、“たかだか1オクターブくらい”の中に秀逸なメロディーが作られているんですよ。転調しなくても1オクターブあれば名曲が生まれます。だから、もう全く別物として捉えても良いかもしれないですね。でも、そのアニソンの進化がすごいとも思っています。
――来年歌手活動55周年を迎えられるということで、今も変わらず歌い続けるために大事にしていることは何かありますか?
“歌う前に自分を真っ白なキャンバスにすること”ですね。あと、当時の歌った時の状況…例えばお天気や先生に言われたことを思い出して、できるだけ崩さないこと。アニソンは崩して歌うと、聴いている人の思い出を崩しちゃうから。崩されて歌われたら嫌ですよね。なので、そこは気を付けています。
ただ、崩さないで歌うと「テクニックがないんじゃないか」とかいろいろ言う人がいるんですよ。でも、その何倍も先を行って、“変わるものを変わらないように修正しながらキープする”っていう作業が、いわゆる職人なんですよね。「カンナ0.2ミリで削る」「天気によって変わる」とか、そんな感じかも(笑)。
でも、私よりも年上で現役バリバリで活躍する方が多いので、私もまだまだだなって思います。
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