「虎に翼」松山ケンイチ、大河ドラマでの“電池切れ”経て感じた伊藤沙莉の強み 桂場と花岡(岩田剛典)の違い明かす【インタビューVol.1】
2024.09.20 12:00
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現在放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」(NHK総合・毎週月~土あさ8時~ほか)で桂場等一郎を演じている俳優の松山ケンイチ(39)にインタビュー。役作りや作品での立ち位置、主演の伊藤沙莉を見て感じたことなどを明かした。【Vol.1】
伊藤沙莉主演「虎に翼」
第110作目の連続テレビ小説となる本作は、日本初の女性弁護士である三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんをモデルに描くリーガルエンターテインメント。主人公の佐田寅子(さだ・ともこ/通称・トラコ)を伊藤が演じる。桂場は司法の独立を重んじる気鋭の裁判官。堅物で腹の内を決して見せない「法の世界」の手ごわい先輩だが、実は甘党という一面も。戦後に再会した寅子の裁判官への道を手助けし、最高裁人事課長、東京地方裁判所所長を経て、最高裁長官となる。
松山ケンイチ、桂場に取り入れた“武士の精神”
― 「あさイチ」(NHK総合・毎週月~金あさ8時15分~)に出演されたときには松山さんと桂場のイメージが全然違うという話題も上がっていましたが、ご自身の中で桂場と違う部分、似ていると思う部分をそれぞれ教えてください。松山:1番最初に桂場のモチーフになった方について監督と色々話していて、いただいた資料に小さい頃から今で言う剣道をやっていたと記載がありました。ずっと武道に携わっていた人なので、武士の精神みたいなものは桂場の中に取り入れたいなと思っていました。ある意味武士って男性の職業というか、男性特有のものだと感じていて、この作品に入る前には大河ドラマ「どうする家康」(2023)で本多正信を演じていたので、なんとなく男性社会での立ち振る舞いや生き方、考え方は自分の中で考えて取り入れたいなと。
桂場は男性に対しても多分同じだとは思いますが、女性に対しての厳格さ、覚悟や物事に対してどう考えているのかなど、自分自身ですごく研ぎ澄まされているんですよね。例えば司法の独立に対しては、やっぱりものすごいこだわりがあって、そのために生きているみたいなところもあります。「ちょっとでもブレるわけにはいかない」と自分ですごく律している部分があるので、ほかの司法に携わる人に対しても「それを持ってほしい」ともしかしたらどこかで考えているのかもしれないです。司法の独立というのはそれだけ難しいことだし、戦わなければ三権分立にならないと思っているところがあるので、厳格さが出てくるんじゃないかなと感じています。
僕自身はそこまで考えて生きていなくて、色々な周りの常識やルール、法律は受け入れつつも、じゃあその中で自分はどう心地よく生きていくのか、幸せに生きていくのかを考えているので、桂場とは全然違うんですよね。「法律自体を変えてやる」「自分の意見を言って幅を広げていく」という生き方ではないような気がします。なので僕はある意味すごくゆるさを持って生きています。
でも桂場はそうやって僕とは全く違って厳格でありながらも、団子が大好きだったりするじゃないですか。そこだけは人としてなんかすごく似ていると感じました。食べないとやっていけないですし、花岡(岩田剛典)は「法がそうなっているから」というので餓死してしまった。桂場はそうではなくてどこかで線引きをしているというか、そういうところは現代を生きる上でなくてはならない感覚なのかなと思って、そこは自分にも理解できる、近いなと思いました。
松山ケンイチ、ラストスパートの“桂場なりの戦い”語る
― 「虎に翼」という作品内で、桂場はどのような役割を担っていると思われますか?松山:穂高先生(小林薫)って桂場にとってもトラちゃんにとっても先生で、男性と女性が皆で法について考えることの大切さや、「どんな人もいる」という考え方を持っていました。その中でトラちゃんはこの世界に入りましたし、桂場はそれを「理想論だ」と言っていましたが、ある意味そこに1番こだわっているのは桂場なのかもしれないともと思うんですよね。
その理想を追い求める中で、法の問題というのは一つのトピックだけではないじゃないですか。めちゃくちゃ分厚い法律の本があって、その中にはありとあらゆる権利について書かれていて、ルールがあって、さらに時代とともにどんどんどんどん古くなっていく。これは穂高先生も言っていましたよね。古くなっていく考え方や価値観をどう現代の解釈とすり合わせていくのか、最高裁長官になる桂場は、それに取り組んでいます。
一方でトラちゃんは家庭裁判所の部分から何かを変えようとしている。だから桂場とは変えようとしている部分の広さやトピックの種類が全然違う。桂場が1人だけでは全て捌ききれない部分もあって。桂場は自分が頼れる人がものすごく少ない人なんですよ。同志みたいな存在が少ないというか、法曹界にはいっぱい人がいるけど、その中でもやっぱりかなりとがっている。司法の独立に1番こだわり抜いているからこそ、その理想を追求するためには、トラちゃんが向き合っている家庭裁判所の問題だけではない、違う問題みたいなものも全部ジャッジをしていかなきゃいけない。自分が最高裁長官である間に司法の独立を成立させるためには何が必要なのか考えたとき、これら全部を解決できなかったりするわけです。どこかで切り捨てなきゃいけない課題が必ずあって、そこで桂場は、トラちゃんからしたら間違いだと感じることを犯していたり、「そうじゃないんじゃないですか」と思われるようなことを起こしたり、法曹界の人間をないがしろにしたり、切り捨てるような描写も出てきます。
これが間違っているのか間違っていないのかは、僕では判断できないなと思っているんですが、そういう理想と理想のぶつかり合いみたいなものが、より最後の方になると出てきます。なのでトラちゃんにとっては「この人をなんとかしないと、自分の理想や自分の求めている解決の方向性が潰されてしまう」と思ってしまうような状況にもなるわけですよね。桂場は本当に“平等”や“公平性”みたいなものがすごくある人間だとは思うんですが、最後の最後にその公平性すらも捨てて、司法の独立という方向に舵を切る瞬間があるんですよ。そこでやっぱりトラちゃんや色々な法曹界にいる人たちにとっての敵・壁のようになっていくタイミングがある。ここはすごく説明が難しいんですが、味方でもあるし、時には敵にもなるということです。ここからより“彼なりの戦い”みたいなものが出てきます。
大河ドラマでの苦労経て感じた伊藤沙莉の凄さ
― 寅子とはぶつかる場面も多いですが、松山さんから見て伊藤さんはどのような役者さんですか?松山:僕なんかよりも出番が多く毎日毎日撮影に励んでいる状況ではあると思うんですが、電池切れみたいなことが全くないんです。それは本当にすごいなと思います。僕も大河ドラマで経験していることなんですが、電池切れになると問題になってくるのは、役の方向性が迷子になったりしてしまうこと。それを修正しようと考えることさえできなくなる状態になってしまったことが何度かあります。
でも沙莉ちゃんの居方を見ていると、迷いがないように僕は感じていて。朝ドラでは年代が移り変わって、年齢も、環境も、立ち位置も、階級みたいな部分も変わってくる中での演じ方はそれぞれ分けていかなければならないけれども、それを迷いなくやられていて、そこが本当にすごいな、体力があるなと思います。
★Vol.2へ続く!
(modelpress編集部)
松山ケンイチ プロフィール
1985年3月5日生まれ、青森県出身。2001年、ホリプロ男性オーディション『New Style Audition』グランプリ受賞を経てモデルデビュー。2002年、ドラマ「ごくせん」(日本テレビ系)で俳優デビュー。2012年のNHK大河ドラマ「平清盛」で主演を務める。近年の主な出演作に、NHK大河ドラマ「どうする家康」(2023)、ドラマ「100万回言えばよかった」(TBS系/2023)「お別れホスピタル」(NHK/2024)、映画「BLUE/ブルー」(2021)「ノイズ」(2022)「大河への道」(2022)「川っぺりムコリッタ」(2022)「ロストケア」(2023)など。主演映画「聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~」が12月20日に公開予定。
【Not Sponsored 記事】
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