新垣結衣「自分を守る時間」人と関わる上で大事にしていること “特別な存在”の女優とは【「違国日記」インタビュー前編】
2024.06.02 06:00
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映画『違国日記』(6月7日公開予定)で、人見知りな小説家・高代槙生(こうだい・まきお)を演じた女優の新垣結衣(あらがき・ゆい/35)に、モデルプレスらがインタビュー。前編では、原作ファンであるという新垣がプレッシャーを感じながらもオファーを受けた理由や、夏帆や瀬戸康史、染谷将太といったこれまでも共演してきた俳優たちとの現場について、たっぷりと聞いた。
新垣結衣&早瀬憩W主演「違国日記」
人見知りな小説家の高代槙生と、その姪・田汲朝(たくみ・あさ)の対照的な2人の同居譚。なかなか理解し合えない寂しさを抱えながらも、丁寧に日々を重ね生活を育むうちに家族とも異なった、かけがえのない関係になっていく。今、世界が必要としている、優しさの形を提示するヒューマンドラマが描かれる。新垣とW主演で朝を演じるのは、オーディションで選ばれた新人・早瀬憩。メインキャストとして映画初出演ながら、人懐っこさと10代が持つ複雑さを抱える朝を演じきった。さらに、槙生の友人・醍醐奈々役を夏帆、槙生の元恋人・笠町信吾役を瀬戸、後見監督人として槙生と朝の生活を見守る弁護士の塔野和成役を染谷が演じるなど、実力派キャストが名を連ねている。
原作ファン・新垣結衣、オファー受けた理由
― 槙生役のオファーを受けた時の心境や作品に感じた魅力を教えて下さい。新垣:元々、原作を友人に勧められて読んでいて、私自身ファンである作品なので、そういった作品のオファーをいただけるのはとても嬉しかったです。その一方で、ファンだからこそ「私でいいのだろうか」という迷いやプレッシャーを感じてとても悩みましたが、やっぱり「演じてみたい」という気持ちが強かったので、ありがたくオファーを受けさせていただきました。
原作に感じている魅力は本当にたくさんあるのですが、私がこの年齢で読んで感じていることは、登場人物たちが大人も子どももみんな完璧ではないというリアルさです。それぞれの立場でそれぞれに抱えているものがあって、時にはトラウマみたいなものに触れてしまってヒリっとしたり、そういったものを抱えながらも違う人間同士で共に過ごすことで日常に温かい時間が流れているところが、すごく救われる部分だと思いました。また「違国日記」ならではの言葉選びがとても好きで、キャラクターたちのセリフやト書き、吹き出しの外のリアルな話し言葉もユーモアがあって好きです。
― いまおっしゃっていたように、槙生というキャラクターには完璧でないところもあると思うのですが、ご自身が共感できる部分はありましたか?
新垣:共感できる部分はとても多かったです。キャラクター紹介として、一言で「人見知り」と紹介されることが多いのですが、私も初めての人といきなり打ち解けられる器用さはなく、人と関わる時の距離感をある程度保つことを大事にしている、いわゆる人見知りの方なのかなと思います。あとは、槙生もとても1人の時間を大事にしていて。人と関わっていく中で、自分も消耗するものがあるので「自分を守る時間」としてそういう1人の時間が大事というところも似ています。私も「私たちは違う人間であるということを人と関わる上で大事にしたい」という気持ちは以前からありましたし、違う人間だから分かり合えない部分があるということも、いつからか漠然と感じていたこと。共感する部分ばかりでした。
新垣結衣、W主演・早瀬憩と“深い話”も
― 作品の中で槙生と少しずつ距離を縮めていく田汲朝役を演じた早瀬憩さんとは、現場でどのように関係性を築いていきましたか?新垣:クランクインして最初に撮影したのは槙生の部屋でのシーンでした。基本的に憩ちゃんと2人で連日朝から晩まで長期間撮影していたので、割と早い段階でたくさんコミュニケーションを取ることができて、すぐに打ち解けて私たちの距離感というのができました。キャストが待機する場所では隣に椅子が並んでいるのですが、隣に並んで座って話している時もあれば、それぞれがそれぞれ別のことをしている時もある。一緒におやつを食べている時もあるし、1人が違う場所に行っている時もあるという形で、とても自由に過ごしていました。
私も憩ちゃんもマイペースな方なので、それぞれのペースを守りつつ、でも話したい時は話す。もちろん年齢差はありますが、そういうものをあまり感じさせない空気感だったと思いますし、それが映画の中にも反映されているのかなと感じています。早い段階でかなり深い話もしました。憩ちゃんがとても信頼してくれているのがとても伝わってきたので、コミュニケーションをたくさん取って良い関係が築けたと思っています。
― 深い話とはどのようなお話をされたのですか?
新垣:それは内緒です(笑)。お芝居の話や、今回この「違国日記」という作品を作るにあたってといった話ではなくて、例えば、憩ちゃんが「結衣さんが15歳の時ってどんな感じでしたか?」と聞いてくれて、今彼女が感じていることや今後思い描いていることも色々話してくれました。
新垣結衣、現場でのコミュニケーションで心がけていること
― この物語では「価値観が異なる他者をリスペクトする」ということが大きなテーマになっていると思うのですが、ご自身が他者とコミュニケーションを取る上で1番大切にしていることがあれば教えてください。新垣:私もコミュニケーションが上手ではなくて「失礼なことをしてしまわないかな」「私と話していて楽しんでもらえないんじゃないかな」と割と考えてしまうタイプなので、何か心がけることでコミュニケーションが上手になる方法があれば教えてほしいくらいです(笑)。
でも例えば現場にいる時は、私自身が新しい環境や新しい作品に携わって初めて会う方もたくさんいる中で、不安や緊張を感じてしまう臆病なタイプなので、その自分をリラックスさせるために、楽しみたいという思いで「ちょっとふざけること」を心がけています。そうやって私が肩の力を抜いた姿勢でいることによって、周りにいるスタッフさんやキャストの皆さんが安心してくれていると感じるんです。私が楽しんでいると、皆さんが楽しんでくれるし、私がふざけることでコミュニケーションのきっかけになったりするので、なるべく自分の肩の力を抜こうと意識しています。
1対1でのコミュニケーションでは「不快になってほしくないな」と思っています。「せっかく出会えたのだからその時間をいいものにしたい、楽しんでほしい」と思っていますが、楽しませる自信がいつも必ずあるかと言われるとそうではないので、少しドキドキしてしまいます。
新垣結衣、“特別”な存在の女優
― 今回の現場では、夏帆さんや瀬戸さん、染谷さんなど共演者の方とも肩の力を抜いてコミュニケーションを取ることができましたか?新垣:今回の共演者の方は、以前共演させてもらった方たちばかりで、夏帆ちゃんはご一緒したのが10代の時なんです。こういうお芝居の作品ではなく、1日だけではありましたが、10代の時に一緒に過ごした人は特別で。今回の共演までどこかですれ違うことはあっても、作品でがっつり一緒になることはなかったのですが、彼女が作品に出ていたり、メディアに出ていたりすると「あ、夏帆ちゃんだ!」とずっと前から知っている人という感覚がありました。
今回、槙生にとって大事な存在である醍醐奈々を夏帆ちゃんに演じていただけることになりとても安心しました。槙生と醍醐のシーンが少ない中で、2人の関係性をどのように見せられるか考えていましたが、醍醐役が夏帆ちゃんに決まって大丈夫だと思えたんです。先日、夏帆ちゃんと一緒に取材を受けている時に彼女も同じように言ってくれていて、とても嬉しかったです。醍醐というキャラクターは明るい陽の空気を持っている人で、槙生と朝の距離を縮めてくれる大きなきっかけにもなる人。夏帆ちゃん自身も陽の空気を持って現場に来てくれて、常に笑って、常に喋って、嵐のように現場の空気を動かしてくれました。
染谷くんも本当にシーンは短いのですが、彼も10代の時に一緒に仕事していて、その作品ではずっと一緒に過ごしていたので、当時からとても信頼しています。それ以来、ドラマ「風間公親-教場0-」(2023)など同じ作品に出ることはあっても、会う機会はほぼなくて。今回一緒に相対してお芝居をすることができて、2人とも10代の時とは環境が変わった中で話すこともできて、懐かしい気持ちになりました。
瀬戸くんは、声がすごくよく通る印象があって。今回の現場でもとても綺麗に発声されているのを聴いて「出てるね~!」と、私も憩ちゃんもあまり声が大きいタイプではないので感心していました。現場の背筋がシャンと伸びるような感じ。瀬戸くん演じる笠町信吾という人は、槙生をとてもスマートにサポートしてくれる人だと思います。でも実は笠町くんも脆さや不安定さを抱えている人で、瀬戸くんが演じることで繊細に表現されていると思いました。映画の中ではエピソードとしてはなかなか描ききれていないところもありますが、その雰囲気を体から発しているのがすごいです。
夏帆ちゃんも染谷くんも瀬戸くんも、それぞれの空気を持って槙生の部屋に来てくれて、新しい空気を、新しい風を吹き込んでくれて、毎回新鮮な気持ちで向き合うことができてとても嬉しかったです。
インタビュー後編では、新垣自身が傷ついた経験とどのように向き合ってきたか、そして10代から変わらない自分について語ってくれた。(modelpress編集部)
新垣結衣(あらがき・ゆい)プロフィール
新垣は1988年6月11日生まれ、沖縄県出身。2001年にファッション誌『ニコラ』モデルグランプリを獲得し、デビュー。2007年には『恋するマドリ』(大九明子監督)で映画初出演にして初主演を務めた。その後も、ドラマ『ドラゴン桜』(TBS/2005)、『コード・ブルー』シリーズ(フジテレビ/2008~2018)、映画『恋空』(2007)など数々の作品で活躍を続け、主演したドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS/2016)は、社会現象となるヒットを記録した。ほかにも近年では、映画『ミックス。』(2017)『ゴーストブック おばけずかん』(2022)、『正欲』(2023)、ドラマ『風間公親-教場0-』(2023)など幅広く出演している。
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