<「光る君へ」柄本佑インタビュー>藤原道長としての“根っこ”、普通を心がける理由 吉高由里子に「懐の深さを感じます」
2024.03.18 05:00
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大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合テレビ、毎週日曜午後8時~/BS・BSP4K、毎週日曜午後6時~/BSP4K、毎週日曜午後0時15分~)に出演する柄本佑(えもと・たすく/37)が合同取材会に出席。紫式部が生涯心を寄せ、陰に陽に影響しあいながら人生をたどる生涯のソウルメイトとなる藤原道長を演じている想いや、ドラマ「知らなくていいコト」(日本テレビ系)以来、同じ大石静の脚本で再タッグを組んでいる主演の吉高由里子との再共演についてたっぷりと語ってもらった。
吉高由里子主演大河ドラマ「光る君へ」
今作は、平安時代を舞台に、壮大で精緻な恋愛長編「源氏物語」を書き上げた紫式部(まひろ)が主人公。のちの最高権力者となる道長は、まひろとは幼いころに出会い、特別な絆が生まれる。まひろの「源氏物語」の執筆をバックアップし、宮中への出仕を勧めるという役どころ。まひろとのもどかしい関係性だけではなく、父親・兼家(段田安則)、長兄・道隆(井浦新)、次兄・道兼(玉置玲央)、姉・詮子(吉田羊)らを中心に道長一家が権力を強めていく展開も今後の注目ポイントとなる。
柄本佑「光る君へ」周囲の反響明かす
― 放送を実際に御覧になって、一視聴者としての感想はいかがですか?柄本:なかなか自分が出ているものを観るのが苦手でして客観的なことは言えないんですけど、大石さんの書かれる本が読んでいてとっても面白いです。まひろと道長の、気持ちは通じ合っているけれどもなかなか結ばれていかないというラブストーリーと、藤原の側の政治のストーリーが面白い交わり方をしていて、台本で読んでいてもあっという間に終わっちゃうんですよね。スピーディーかつ重厚で、台本の持つスピーディーさに絵がフィットする形で繋がって、観ている方も45分があっという間に感じて頂ける作品になっているんじゃないかと思っております。
― 嬉しい反響や周囲からの反応を教えて下さい。
柄本:小学生のときからお世話になっているうちの近所の花屋が「とっても面白い」と言ってくれました。その人は書道をやられていたりして時代ヲタクだそうで、そういう意見を頂けたのはとっても嬉しいです。
柄本佑、藤原道長のイメージは「ゴットファーザー」アル・パチーノ
― 藤原道長は、歴史の授業でさらっと学んだ偉い人という印象しかない視聴者も多いと思うんですが、道長役のオファーを受けたときの想いと、演じられていく中で道長のイメージ像が変わったり自分自身に馴染んできたり、そういった変化があったら教えて下さい。柄本:お話を頂いたときは権力者としてのヒールっぽいイメージ以外の細かいディティールは全然知らなかったです。それよりも何より大石さんが書かれて吉高さんが主演をやる過去にやったドラマ「知らなくていいコト」の現場が楽しくて、今回お話を頂く前にニュースで見て「チェッ。良いな、楽しそうじゃん」とどっかで思っていたんでしょうね。だから単純に座組に入れることへの喜びがまずありました。そこから打ち合わせをさせてもらったとき、ヒールのイメージだけではない人間味があるところ、末っ子でのんびり屋で最初は兄ほど政治に関わらないで前に出ることなかった三男坊があれよあれよとその座に行ってしまうという道長像をやりたいということ、映画「ゴットファーザー」のアル・パチーノ(マイケル・コルレオーネ)みたいな描き方をしたいということをおっしゃっていて、そっちの方がプレッシャーでしたね。何の因果かそのとき池袋の映画館で「ゴットファーザーPART II」を観たばっかりだったので(笑)。
それから道長に関する色々な本を読んだりしましたけど、千年以上前のことでやっぱりぼんやりしたイメージしかなくて細かいディティールが分からなかったというのが僕からすると逆に良かったのかもしれないです。だからこそ大石さんの書いている道長に向き合っていけば良いんだなと思ったし、それくらい脚本で強くキャラクターが描かれていました。
― 道長の家族は初回からヒールというか過激な政治も行っていますが、段田さんや共演者の方々は「ゴットファーザー」の一族としてどうですか?
柄本:客観的に見られていることでいうと、どことなく家族に見えますね。すごく兄弟に見えるなと思って驚きでした。これから、兼家はもう一波、見せ場があるので僕も一緒にお芝居をさせて頂いて痺れました。あとは道隆の柔らかいんだけどどんどん攻撃的になっていく様と道兼の狂気と、詮子と…とにかく周りが強すぎるので、道長的には知らないことも多くてその中ではいかに存在感を消せるかでした。これからは明確に道長が政治に向かって行く様子を撮影していくのですが、道長本来の人間性と、藤原を残していくためには自分がトップに立つしかないというギャップが葛藤に繋がっていくのかなと思っています。
直秀(毎熊克哉)の埋葬は今後の道長のベースに
― 第9回「遠くの国」についてお伺いしたいです。放送前の吉高さんの取材で土を掘るシーンについてお話されていてそれがまさか直秀(毎熊克哉)ら散楽を埋葬するシーンだとは思っていなかったのでとても驚いたんですけれど、撮影で何か印象に残っていることやどんなお気持ちで演じられていたかお聞きしたいです。柄本:このドラマにおける第1部の完結というか、ここからまた話が進む要になるシーンだと思ってやらせて頂いていました。台本上は埋葬した後に「すまない、みなを殺したのは俺なんだ」とまひろに言うのですが、撮影の前に、まひろに懺悔するというより目の前にいるもう聞こえない見えない埋葬した仲間たちに言うんじゃないかなということを思いました。末っ子で周りのことを意外と見ていてちょっと引いたところがあるような道長があのシーンにおいてまひろに言うのはイメージが違うかなと思って。それまでの道長は意外にまっすぐ感情をぶつけることがまひろに対して以外はあまりなかったんですけど、ここが初めて不毛なことに直線的にぶつかっていった場面なんですよね。これから先偉くなっていく過程の中で民を思う部分が出てくるんですけど、あの出来事がベースとして一番の根っこにあるということを思いながらやっていた気がします。
― 道長が少年から青年、大人に変わっていくきっかけになったのは直秀の出来事が大きかった?
柄本:大きいと思いますね。しかも自分がよかれと思ってやったことがそういう結果に繋がってしまったというそういう負い目もあるんじゃないかなと思います。
柄本佑、吉高由里子の「懐の深さを感じる」演技
― まひろとの関係もこれからどんどん変わっていくと思いますが、柄本さん自身はどう感じられていますか?柄本:今回に限らず普段から演じるものに対してどう思うということはあまりなくて、できあがった作品を観て「あ、俺悪役だったんだ」と思うこともあるんです。自分がセリフをはいて現場で起きたことに対して反応していく、これまで培ってきた道長さんだったら、多分こうするんじゃないかなという勘みたいなところでやっています。だからよく分からないんですけど、台本を読んだ限りまひろと道長のシーンに関しては結構感情が行ったり来たりしていて、特にまひろは1個前に言ったセリフと道長が一言挟んで次に言うセリフが真逆のようなことを言ったりするので、大石さんという人はなかなかいけずなシーンを書きますよね(笑)。
思うこととしては2人の関係性は特に廃邸のシーンで出ていて、道長さんはあの場所でしか本来の自分や本音でしか語っていないのかもしれないと思いました。まひろに対してだったら本当に怒れるし、優しい言葉もかけられるし、本音でいられる。そんなところが良くも悪くもソウルメイトである所以なのかなと思いました。廃邸のシーンも徐々に減るんですけど、ことごとく1シーンが長いので吉高さんとバディを組んで大石さんの書く“厄介な”本に挑んでいるという感じがします。
― 吉高さんとまひろと道長の解釈についてお話することはありますか?
柄本:あんまりないかな。要するにこのシーンはこういう意味なのかなという解釈合わせみたいなことはしないです。これだけ一緒にやっているしどこかしら「こうだよね」「そうだよね」と言葉にせずに会話しているようなところはあるのかもしれないですけど、基本的にはお互いの芝居をしています。ただ感想は言い合っていて「何話のあのシーン読んだ?ちょっと長くない?」「頑張ろう」みたいな会話はラフにします(笑)。
― これまでの撮影で吉高さんの印象に残っているお芝居はありますか?
柄本:特定のシーンではないんですけど、長いシーンを一緒にやると特に吉高由里子という女優さんの懐の深さを毎回すごく感じます。僕自身「こんなふうにやるのかな」と考えてリハーサルに向かって現場が始まるんですけど、道長はまひろによって引っ張られることの方が多いかなという印象です。特にあげるとすると、だいぶ序盤になっちゃうけど第5回の告白のシーンは非常に印象に残っているし、まひろに目を奪われて佇んで見ることしかできなかったです。吉高さんがすごいところは、強いんだけど弱くもあるように見えるところがすごいなと思っています。
― 道長はまひろのどういったところに一番惹かれたと思いますか?
柄本:言葉で表せられるような惹かれ合いの強さじゃないんですよね。どこで惹かれているかどこを憎んでいるかが同じというイメージ。そういったこともひっくるめてソウルメイトだと思っています。くしくも出会ってしまう、どんなに会わないようにしていても繋がってしまって必ずどこかではまた会ってしまうという。
僕がまひろを魅力的だなと思う部分を言葉にしてみると、猪突猛進なまっすぐさ。まひろと道長というフィルターを介してセリフのやりとりをしていて、さっき言ったように前に言ったことと真逆のようなことを言う部分で明らかに矛盾してくるのにどっちも嘘じゃない。まひろさんという人は嘘がない。翻弄してやろうということもなくて全部まっすぐに放たれていく言葉だから嘘じゃないのが魅力で、そこの表現が吉高さんは毎回すごいなと思います。本音を言うと、道長とまひろはここに惹かれているというのがない、度外視した惹かれ合い方をしているような気がします。
柄本佑、“普通”を心がける理由「“平安”だと意識したら即座に終わる」
― 柄本さんのこれまでの作品の中でもおそらく一番偉い人物を演じているのではないかと思うんですが、権力者を演じるのはいかがですか?柄本:多分一番偉いんじゃないですかね(笑)。今後この偉さを超える役もなかなかないかもしれないです。今まさにそこで葛藤している最中なんですけど、1つ思っていることは最高権力者と思わないこと、結局1人の人間であること。当然そういう差配をしなくてはいけない瞬間とか、世の中のことを考えて帝を案内していくとかはあるんですけど、根っことして一番大事になってくるのは、第9回で自分の手で掘って埋葬した散楽の方たちにまっすぐに謝ってしまうようなところ。そこをベースにしてもっとベースは末っ子ののんびり屋であったということを大事にしたいと思っていて、そういうベースがないと最高権力者をこれから演じてもふわふわしたものになってしまうような気がしています。平安時代の役を演じているけど、より普通を求められているのかなと思って、今この2024年を生きている自分がものすごく大事な気がして、“平安”だと意識したら即座に終わるなと思ってやっています。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
「光る君へ」第12回あらすじ
道長(柄本佑)の妾になることを断ったまひろ(吉高由里子)。為時(岸谷五朗)が官職に復帰する目途もなく、生計を立てるためにまひろの婿を探すことを宣孝(佐々木蔵之介)が提案する。その頃、まひろと決別した道長(柄本佑)はかねてから持ち上がっていた倫子(黒木華)との縁談を進めるよう兼家(段田安則)に話す。一方、姉の詮子(吉田羊)は、藤原家との因縁が深い明子(瀧内公美)と道長の縁談を進めようと図るが…柄本佑(えもと・たすく)プロフィール
1986年東京都出身。2003年に映画「美しい夏キリシマ」で俳優デビュー。同作で、第77回「キネマ旬報ベスト・テン」新人男優賞、第13回「日本映画批評家大賞」新人賞を受賞。2018年に主演作「素敵なダイナマイトスキャンダル」「きみの鳥はうたえる」「ポルトの恋人たち-時の記憶」が公開され、キネマ旬報ベストテン主演男優賞、毎日映画コンクール男優主演賞などを受賞。近年の主な出演作はドラマ「心の傷を癒すということ」(NHK/2020)、「知らなくていいコト」(日本テレビ/2020)、「天国と地獄〜サイコな2人〜」(TBS/2021)、「ドクターホワイト」(関西テレビ/2022)、「空白を満たしなさい」(NHK/2022)、映画「痛くない死に方」(2021)、「先生、私の隣に座っていただけませんか?」(2021)、「真夜中乙女戦争」「ハケンアニメ!」(2022)、「シン・仮面ライダー」「春画先生」「花腐し」(2023)など。大河ドラマへの出演は「風林火山」(2007)、「いだてん〜東京オリムピック噺〜」(2019)以来3回目。
【Not Sponsored 記事】
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