小栗旬、三谷幸喜氏から掛けられた“言葉” 小池栄子との対峙で学んだ悲しみの乗り越え方とは<「鎌倉殿の13人」インタビュー前編>
2022.11.20 11:00
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NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(毎週日曜よる8時~)で主演を務める俳優の小栗旬(おぐり・しゅん/39)。11月20日の第44回から、物語はクライマックスの序曲「実朝暗殺」に突入し、12月18日の最終話までラスト4話を駆け抜ける。そんな目が離せない展開を迎える中、小栗がモデルプレスら報道陣のリモートインタビューに応じ、本作の脚本を手掛けた三谷幸喜氏の凄みを余すことなく語った。そして、キャストとの熱い演技合戦から小栗が学んだ悲しみを乗り越える上での人生論とは?<前編>
「鎌倉殿の13人」ストーリー
1180年、源頼朝は関東武士団を結集し平家に反旗を翻した。北条一門はこの無謀な大博打に乗った。頼朝第一の側近となった義時は決死の政治工作を行い、遂には平家一門を打ち破る。義時は、2人の将軍の叔父として懸命に幕府の舵を取る。源氏の正統が途絶えた時、北条氏は幕府の頂点にいた。都では後鳥羽上皇が義時討伐の兵を挙げる。武家政権の命運を賭け、義時は最後の決戦に挑んだ―。
「鎌倉殿」とは鎌倉幕府将軍のこと。頼朝の死後、彼らは激しい内部抗争を繰り広げるが、その中で最後まで生き残り、遂に権力を手中に収めたのが、13人の家臣団の中でもっとも若かった北条義時である。
小栗旬、約1年半の大河ドラマ撮影を回顧
― 撮影お疲れ様でした。まずは、クランクアップされた心境を教えてください。小栗:(しばらく考え込みながら)何とも言えない感じというか、今まで経験してきたクランクアップとはまた少し違う感じでしたね。まだまだ続けていたいという気持ちももちろんありましたが、それと同時にやっと終わったんだとホッとする気持ちもあり、一言で言い表すのは難しい心境でした。ですが、もうあの日に全部置いてきたので、今はすっかり日常に戻り、通常営業です(笑)。もし今から「もう一回義時をやれ」と言われても「全くできない。何も覚えていません」と言えるくらい本当に納得のいく終わり方をさせていただき、引きずるような感覚もなく終われたので、スパッと切り替えることができました。
―本作を通して義時や鎌倉幕府に新たなイメージを持たれた視聴者の方も多いと思います。
小栗:そうですね。義時って、僕にとってあまり馴染みのある存在ではなかったんです。ただ、今回のドラマを経て確実に“孤独な男だった”というイメージは視聴者にも新たに受け取ってもらえたのではないかと思います。そのために前半はものすごく明るくて真っ直ぐだった彼を見せてきました。本当はそこから何も変わっていないのですが、どうしても執権という立場である限り、悪者に見えるように振る舞わなければいけない。大きな矛盾の中で進み続けなければいけない状況によって、北条義時という人物を面白い人間像として育て上げることができたと思います。
小栗旬、三谷幸喜氏から掛けられた印象的な言葉とは?
― クランクアップ後、三谷さんとご連絡されましたか?小栗:撮影が終わって次の日に「全部終わりました。やりきってきました」みたいなメールを送りました。三谷さんからは「ご苦労様でした」と返ってきて、お互い一通ずつ程度の他愛もないやりとりをしていました。
― なにか印象に残っている言葉はありますか?
小栗:撮影期間中、時々出来上がっているものをご覧になった三谷さんから「あそこのシーン最高でした」「あそこの表情が素晴らしかったです」とメールをいただき嬉しかったです。あと、最終日は僕と小池栄子ちゃんの2人しか撮影が残っていなかったので、最終日前日、2人で「僕たち2人しか今回では体験しない状態だね」と話しながらものすごくソワソワしてしまっていました(笑)。栄子ちゃんと「ちゃんと眠れてますか?」とメールでやりとりをしていたのですが、その流れで僕は三谷さんに「眠れません」とメールを送ったんです。でも三谷さんから「安心してやってください。前日にこんなこと言うことじゃないかもしれないけど、完璧な義時だったから安心して明日を迎えてください」とメールをいただいて、「素敵なメッセージですね」と送ったら「寝起きにしてはなかなか気の利いたこと書いたでしょ?」と返信が来ました(笑)。
小栗旬が考える三谷幸喜脚本の“凄み”
― 今回改めて感じた三谷さんの脚本の魅力を教えてください。小栗:まず1つ言えることは、全編48回を通してこんなにも説明セリフが少なく済んでいる脚本はなかなかないと僕は思っていて、そこが三谷さんの優れているところの1つだと思っています。起きている物事によって世界観が見えてくる状況を脚本の中に描かれていて本当に凄いです。それでいて1人が長セリフを話すシーンもあまりないんです。もちろん人物の名前を羅列していくような大変なセリフもあったのですが、それ以外でセリフとして感情にそぐわないことは全くなくて、俳優としてはありがたいことだと思いました。偉そうにこんなこと言うのも気が引けますが、今回は本当に神がかっていたと思うくらい、毎回脚本を読むことが楽しみでした。
また、三谷さんは作品が転がり始めて自分たちが演じたキャラクターを見てからの方が、きっと脚本作りが捗る方なんだろうなというのも感じました。しかも最終回をああいう形で書いてくれたことも、他にも挙げたらキリがないぐらい今回(の脚本)はやっぱり凄いですよね。大河ドラマをこよなく愛している方なんだろうなというのは伝わってきました。なので、大河ドラマという場所で三谷幸喜さんの脚本でできたということが自分にとって一番ありがたいことでした。
源頼朝(大泉洋)・頼家(金子大地)・実朝(柿澤勇人)の3人の存在語る
― ここまで源頼朝(鎌倉幕府初代将軍/大泉洋)、頼家(頼朝の嫡男/金子大地)、実朝(頼家の弟/柿澤勇人)の3人の将軍を支えてきた義時にとって、3人はそれぞれどのような存在ですか?小栗:頼朝に関しては、本当に特別な存在です。頼朝から無理難題を押し付けられることも多かったのですが、頼家・実朝は、支えたいと思って色々なことをすることをしようとするもそれを受け入れてもらえない時間も結構ありました。その中で頼家に対しては、自分たちが頼朝とやってきた政を進めていく上で、彼が将軍としての気持ちが追いつくのを待とうと思っていたのですが、それがなかなか頼家には理解してもらえず、少し悲しい終わり方になりました。実朝に関しては、多分すごく優れた将軍だったと思うのですが、義時からするとどうしても許せないところがあったんです。義時を納得させられるだけの表現をしきれなかったことが最終的に2人を隔ててしまったのだと思います。
やっぱり思うのは、自分と自分の家族のことを考えている人たちが多い中で、どういう風に進めていったらこの鎌倉幕府というものが上手く成り立っていくのかということを、本当の意味で最初から最後まで考えていたのは義時だけだったのではないかと思っています。自分が強く思っているからかもしれませんが…。けれど、それをなかなか認めてもらえないとだんだん違う形での暗示を生んでいき、実朝との関係はこじれていってしまったのだと感じます。
小栗旬、山本耕史ら共演者に「非常に救われました」
― 三浦義村(義時の盟友/山本耕史)とは盟友でありながらもどこか危うさも感じる不思議な関係性でした。義時は義村をどのように解釈していましたか?小栗:義村はなかなか掴みどころのない人なのですが、基本的にはずっと「絶対に自分を裏切ることはない男」と思って過ごしてきました。ただ、あの鎌倉の世界を生き抜く上で、彼の“上手く立ち回った方が生き残れるし、死んだらおしまいではないか”というような考え方は非常に理解できます。義時としてはものすごく信頼を寄せていますし、幼い頃からずっとともに生きてきたので、いつになってもやっぱり幼なじみで、そういった関係性は抜けないままだったと思います。
― そんな山本さんとの現場はいかがでしたか?
小栗:それこそ、今回は非常に共演者に助けられたところがいっぱいありました。特に名前を挙げさせていただくなら、耕史さんや栄子ちゃんは、「きっとこういう風に旬くんは考えているんだろうな」と理解してくれた上で2人が的確に自分のキャラクターを表現するためのリアクションを取ってくれるということが現場で多々ありました。そういう相手役とお芝居をすると、自分の中で誇張してキャラクターを見せる必要がなく、「無理しなくていいんだよな」と感じた瞬間がいっぱいありました。耕史さん自身も面白い芝居をされていますが、そこで義時というキャラクターが今自分の目にどう映っていて、それを見ているお客さんたちが自分のリアクションによってどういうことを義時に感じるのかということを考えてくださっていたので、非常に救われました。
小栗旬、小池栄子との対峙で実感した悲しみの乗り越え方
― 少しお話にも出ましたが、政子(義時の姉/小池)の存在はどのように捉えられていましたか?小栗:変な話、政子のおかげで北条の人たちは皆人生が変わってしまっているので、そこには色々と思うことがありますが(笑)、義時としては、ずっと一緒に過ごしてきている中で昔から変わらず、良いことは良いと言い、悪いことは悪いと言う政子というのは守りたい存在の1つだったのだと思います。これはあくまで僕個人の解釈ですが、「義時が最後の最後まで守りたかったものって何だろう?」と考えた時、そういう政子の純粋さと、泰時(義時の息子/坂口健太郎)が自分に楯を突いてきた瞬間に「100%守りたい」と感じたこの2つが、自分の中では肝だったと思います。それを真っ直ぐに演じてくれる小池栄子ちゃんと坂口くんがいたので撮影も非常に楽しかったです。
また、それこそ栄子ちゃんが演じているからなのか分かりませんが、「なんで普通にしていられるんだろう?」と思う瞬間がいっぱいあるくらい政子には苦しいことが次々と起こるんですよね。でも「それが人間なのかな」とも思ったりします。どんなに深い悲しみが来たとしても、自分の人生を終わらせない限り、自分の人生を生きていかないといけないとなると、悲しみや苦しみには一度蓋をしなければいけない瞬間もあるのだと思う時がありました。やっぱり栄子ちゃんが演じている政子は意外と明るいんですよ(笑)。それは栄子ちゃんが演じたからこそ、説得力を持って見せられた部分だと思います。
インタビュー後編では、本作が視聴者を沸かせる理由を主演・小栗が分析。さらに、俳優として痛感したこと、今後の展望までたっぷりと語ってもらった。(modelpress編集部)
小栗旬(おぐり・しゅん/39)プロフィール
1982年12月26日生まれ、東京都出身。ドラマ「GTO」で連続ドラマに初めてレギュラー出演し、その後もドラマ、映画、舞台と様々な作品で存在感を見せる。主な主演作としてドラマ「リッチマン、プアウーマン」「信長協奏曲」「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」「日本沈没-希望のひと-」や映画「クローズZERO」シリーズ、「ミュージアム」「銀魂」シリーズ「罪の声」など。また12月26日から東京公演を皮切りに、主演舞台「彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』」(東京・埼玉・愛知・大阪/2022年12月26日~2023年2月12日)がスタートする。小栗旬主演「鎌倉殿の13人」第44回あらすじ
後鳥羽上皇(尾上松也)の計らいにより、右大臣に叙されることとなった源実朝(柿澤勇人)。政子(小池栄子)が愛息の栄達を喜ぶ中、鎌倉殿への野心に燃える公暁(寛一郎)は三浦義村(山本耕史)のもとを訪れ、鶴岡八幡宮で執り行われる拝賀式について密談を交わす。三浦館の動きに胸騒ぎを覚える泰時(坂口健太郎)。一方、義時(小栗旬)の周りでは、朝廷と鎌倉の橋渡し役として存在感を高める源仲章(生田斗真)がのえ(菊地凛子)を…。
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