インタビューに応じた石原さとみ(C)モデルプレス

石原さとみの「人生で最も大切なもの」 “心が強くなった”2020年と来年への願い<「人生最高の贈りもの」インタビュー>

2020.12.09 08:00

女優・石原さとみ(いしはら・さとみ)が2021年1月4日放送のテレビ東京系新春ドラマスペシャル「人生最高の贈りもの」(よる8時~)で演じるのは、余命わずかなことを隠し、父親のもとへ突然里帰りする主人公・ゆり子。限られた命と向き合うゆり子を通し、家族の尊さを描く。暗いニュースの多かった2020年が明け、2021年の始まりを飾る本作。撮影は昨年行われたというが、石原が今だからこそ本作へ抱く思いとは。彼女自身の人生観や、来年への希望も尋ねた。

石原さとみ×岡田惠和×石橋冠の最強タッグ「人生最高の贈りもの」

物語は、自身の余命がわずかであることを知った石原演じる田渕ゆり子が、突然実家の父親のもとに帰省するところから始まる。

人知れず余命宣告を受けていたゆり子。早くに妻を亡くし東京で一人暮らしをする父(演:寺尾聰)、長野で穏やかに暮らす夫(演:向井理)。彼女の家族や彼女を取り巻く人々は、大切な人に降りかかった運命をどう受け入れ、どう向きあい、そしてどんな同じ時を過ごすのか。それぞれの人生や思いが交錯する中で、ゆり子が胸に秘めていた決断とは…。

石原さとみ(C)テレビ東京
石原さとみ(C)テレビ東京
脚本を手掛けるのは、石原自身もファンだったというヒューマンドラマの名手・岡田惠和。監督は、60年以上の演出キャリアを誇り、2011年に旭日小綬章を受章した石橋冠が務める。石原が岡田脚本の作品を演じ、石橋監督がメガホンを握るのは今回が初。日本を代表する女優、脚本家、監督が結集し、「最高のタッグ」が実現した。

石原さとみ「家族の美しさや尊さが表現できたら」

― 脚本を最初に読まれたときの印象、そして実際に演じられたときの感想はいかがでしたか?

石原:いつか岡田作品に出たいとずっと思っていたのですが、今回台本を読ませていただいて、一番初めのト書きからすごく吸い込まれるように、一瞬にして想像力をかきたてられました。セリフとセリフの間の「…」がすごく多い作品なのですが、その行間をすごく想像させてくれる、考えさせてくれる脚本になっていて、読み手によってとらえ方が本当に違うと思います。私は最後まですごくワクワクしながら読ませていただき、胸が苦しくもなるけど、登場人物全員が優しくてとても温かく感じました。分かり合いながら何かを共有する幸せがあり、家族の美しさや尊さが表現できたらいいなと思わされました。

― 見どころはどんなところでしょうか。

石原:“表情”でしょうか。ただ一緒にご飯を食べたり、本を読んだり、時間を共有することの幸せを表情から感じ取れると思います。それぞれ抱えているものがあっても、それを言葉に出さず、ただ一緒に生活をすることが、どれほど尊くて、愛おしいものなのかが伝わる作品です。

コロナ禍で“当たり前”が変わってしまった今、ただご飯を食べたり、散歩をしたり、何かを一緒に作ったりすることが、どれだけありがたいことなんだろう、幸せを感じられることなんだろうと思わされます。この作品はコロナ禍になる前に制作された作品ですが、そういう幸せを感じられるということの大事さや、愛おしさを感じて、温かい気持ちになっていただきたいです。

石原さとみ(C)モデルプレス
石原さとみ(C)モデルプレス
― これまで特別な環境下の人物や特殊な職業の役柄を演じられることが多かった石原さんですが、本作では地方に暮らすごく普通の女性を演じています。ご自身にとってどのような作品でしたか?

石原:「なんてタイミングが合っていたんだろう」と思うくらいやりやすかったです。この作品を撮影する前は舞台をやっていて、その時期は人生で初めて朝食を作り、自分のお腹を自分で満たして豊かにするということができたタイミングだったんです。自分でお腹や心を満たすことの大切さを分かってからこの作品に入っているので、「それを共有することってこんなに幸せなんだ」という感覚が芽生えたようでした。

料理のほかにも花をいけてみるとか、ベランダに出て太陽浴びてみるとか、近所を散歩してみるとか、そういうことで幸せを感じたり、心が豊かになっていることを実感していたので、向井さん演じる夫との生活もとても理解できました。

石原さとみ、長年のファン・岡田惠和の脚本を演じて

― 岡田さんの脚本のファンだったそうですが、視聴者として感じていた魅力はどのようなところでしょうか。

石原:有村架純ちゃんの作品や、小泉今日子さんの作品など、いろいろな作品がありますが、温かくて、くすっと笑えて、リアリティがあるのに少しだけファンタジーのようでもある“岡田ワールド”がしっかりされていて、いち視聴者として「どういう台本で作られているのだろう」と思っていました。

― 実際に岡田さんの脚本を演じてみて、感じたことはありますか?

石原:今回は父娘の話で、行間とト書きがとても多い作品なのですが、現場に任せているというか、文字先行ではなく人を見て書いてくださっている気がして、とても愛を感じる台本だと思いました。引っ張って行ってくださるような台本が多い中で、この作品は託して信じてくださっていることが台本からとても伝わってきました。まだ岡田さんにお会いしたことはないのですが、終わった後もいろんな方に「岡田作品またやりたいです」と言ってしまうくらい虜になりました。

寺尾聰や向井理との印象は

石原さとみ(C)モデルプレス
石原さとみ(C)モデルプレス
― 現場はどのような雰囲気でしたか?

石原:ものすごく楽しかったです。楽しいと言うと軽い印象になってしまうのですが、愛おしさや優しさ、思いやりがずっと溢れている現場でした。久しぶりに再会したスタッフさんもいらっしゃって、みんなが優しかったんです。それがすごく新鮮で、とても幸福感がある現場でした。

― 寺尾さんとの父娘共演はいかがでしたか?

石原:すごく愛してくれました。私の作品を見てくださり、最初に私の印象についてお話ししてくださったり、気さくにいろんな話をさせていただいたりして、本当の娘のように優しく慕ってくださいました。実は撮影後もお会いしていて、寺尾さんのライブにもプライベートで行かせていただき、たまにですが連絡をいただいています。娘を思いやる父のように、愛を与えてくださって、「本当にこの作品で寺尾さんに出会えてよかったな」「なんて心強いんだろう」と思わされます。

― 夫婦役を演じた向井さんの印象はいかがでしたか?

石原:初共演だったのですが、初めてとは思えないくらいたくさんお話ししました。一緒だったのは長野ロケだけでしたが、面白くて紳士で、ナチュラルで気さくで、自然体な人だと思いました。役柄がそれを助けてくれていたのかもしれませんが、黙っているときも心地よいし、本当に無理せずお話しできる方。気を使わない配慮をしてくださり、すごく良い空気を作ってくださったのでありがたかったです。この作品はキャストの皆さんが、お芝居以外のところでもそのままいてくださったので、演じているのを忘れるくらい居心地が良い現場でした。

― 撮影の合間には夫婦のような雰囲気も?

石原:初めましてだったので、単純な会話をしていましたね。「これどう思います?」とか「これどうなんですか?」とか、他愛もないけど、浅くはない会話をしていたと思います。

石原さとみ、人生で最も大切なものは?人生観を語る

― 想像しづらいかもしれませんが、もし石原さんがゆり子と同じような境遇だったらどんな風に時間を過ごしますか?

石原:私は大切な人や親にすぐに言うと思います。同時に、私だったらもっとがむしゃらに命にしがみつく気がします。生きたいという気持ちが強いので、受け入れて余生を過ごすという風にはならないんじゃないかな。家族を筆頭に、私の周りには一緒に病気と闘ってくれる仲間たちがいるので、心強い味方たちと一緒に過ごす中で、幸せを感じられることを作っていくのではないかと思います。1人になることはないと思います。

― 今までにはない行動をしてみたり、驚くような行動に出たりすることはなさそうですか?

石原:友達には会うと思います。なかなか会えていない子たちに会うとか、ちょっと地方まで足を運んでみるとか。あとは私は好奇心旺盛なので、その病気についてとことん調べると思います。そしてそれこそ、インタビューとかを残したいですね。その時の気持ちや行動とかを細かく文字に残して、その経験が誰かの生きる糧になったらいいなと考える気がします。

石原さとみ(C)モデルプレス
石原さとみ(C)モデルプレス
― “人生で最も大切なもの”はそのときによって変化すると思いますが、この作品を通して人生観に影響などはありましたか?

石原:私は20代中盤くらいから、人生で最も大切なものは親友だと思っています。とにかく“人”が最も大切なものなのですが、家族は離れていてもつながっている感覚にもなれる一方、友情というのは離れていたらホコリがかぶりやすい関係性ではあると思うんです。だからこそ意識する努力がすごく必要だと感じるので、年々親友との時間が増えているし、大切になっています。

― 撮影は一年以上前だったと思いますが、今でも最も大切なものは変わっていませんか?

石原:そうですね。心から友情こそが財産だと思います。

2021年へ向けて「どんなときでも誰かを励ませる人になれたら」

石原さとみ(C)モデルプレス
石原さとみ(C)モデルプレス
― 本作は暗いニュースが多かった2020年が明けて、2021年の初めに放送されます。視聴者の方にどう伝わってほしいですか?

石原:この作品は、勇気を振り絞って父親に会いに行ったということがきっかけになり、何かが大きく変わっていく物語です。今はコロナ禍で“会う”ということが難しい状況ですが、インターネットを使うなどして、同じ時間を共有することはできる。 “会うということ”の形は変わっても、一緒の時間を過ごすということの大切さはより強くなったのではないかと思います。なので、それぞれがそれぞれのことをやっていても同じ空間にいるとか、ただ見えるところにいるとか、そういうことのありがたさが、より伝わる作品であったらと思います。この作品を見て、家族に電話をかけてみようとか、いつもは電話だったけどフェイスタイムにしてみようとか、そういう気持ちになってくれたら嬉しいです。

― 石原さん自身は2021年をどういう年にしたいという希望はありますか?

石原:2020年は色んなことがあって、心がすごく強くなった気がするんです。それは私だけでなく、世界中の人々に言えることだと思います。今を懸命に生きていることで、自分自身が強くなっていることを、それぞれがどこかで実感しているはずです。その上で、来年はもっと心を強くしたいと思うと同時に、今年強くなった分、もっと人に優しく、どんなときでも誰かを励ませる人になれたらいいなと思います。心が穏やかでいられるよう、コントロールできる自分になれたらともすごく思いますね。

― 今年は大変な年だったからこそ強くなったと実感されますか。

石原:試されてるなという気はするし、自分だけでなく、みんなが同じ状況で様々な困難を乗り越えているので。今、懸命に生きられているということは、強くなっていることの証だと思います。なのでこれからはその自分にしっかりと自信を持って、人に何かを与えられる人間になれたらいいなと思います

― ありがとうございました。

石原といえば今年、病院薬剤師の奮闘を描くドラマで主演を努めたことが印象深い。新型コロナによる未曾有の世の中で、病院を舞台にした作品を座長として引っ張る彼女の姿は、暗いトンネルの中にいる我々に、希望となる力を届けようという使命感さえ感じるものだった。役を通しても、1人の人としても、「誰かを励ませる存在になれたら」と頻繁に語る石原。その凛とした姿は、キラキラした人気女優という枠を取り払い、すべての人と同じ目線に立って我々を勇気づけてくれる。

「人生最高の贈りもの」では特別な能力を持っているわけではない、ごく等身大で平凡な女性を演じるが、だからこそあたりまえの“生”の尊さを改めて感じ、誰かとつながり合うことの大切さを再認識できる、まさに新たな年に人々が必要としている慰めや “励まし”となる作品を届けてくれるだろう。(modelpress編集部)

石原さとみ(いしはら・さとみ)プロフィール

出身地:東京都
生年月日:1986年12月24日
血液型:A型
身長:157cm
趣味・特技:お琴・テニス・ピアノ

2002年ホリプロタレントスカウトキャラバン、グランプリを受賞し、「わたしのグランパ」(03)で映画デビュー。NHK朝の連続テレビ小説「てるてる家族」のヒロインを演じて人気は全国区に。同局系ドラマでは水城せとな原作の「失恋ショコラティエ」(14)がシンドローム級の人気を巻き起こし、「5→9~私に恋したお坊さん~」(15)で月9枠初主演。近年の出演作は映画「決算! 忠臣蔵」(19)、主演ドラマ「Heaven? 〜ご苦楽レストラン〜」(19/TBS系)、「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(20/フジテレビ系)、主演舞台「アジアの女」(19)など。

石原さとみ(C)モデルプレス/ワンピース¥125000(フォルテ フォルテ/コロネット)、シューズ、アクセサリー(スタイリスト私物)■コロネット問い合わせ先:03-5216-6518
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