松坂桃李、障がいを通して伝える“大人のラブストーリーの乗り越え方”「どの人においても必ず壁は出てくる」<ドラマ「パーフェクトワールド」インタビュー>
2019.06.11 08:00
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ドラマ『パーフェクトワールド』(毎週火曜夜9時~/カンテレ・フジテレビ系)で主人公・鮎川樹を演じる松坂桃李(まつざか・とおり/30)が、モデルプレスのインタビューに応じた。
ドラマ『パーフェクトワールド』ここまでの展開
不慮の事故により車いす生活を送ることになり、生涯一人で生きていくと決めていた建築士・鮎川樹(松坂)が、高校の同級生・川奈つぐみ(山本美月)と再会し、心を通わせていくことで2人の生き方が変化していくラブストーリー。一度は思いが通じ合った2人だが、互いの幸せを願い別れを決断。つぐみは樹に未練を残しながらも地元に帰り、幼なじみの是枝洋貴(瀬戸康史)からのプロポーズを受け入れる。そんな時、ある仕事で樹とつぐみが再会し―。
話題を呼んだ別れのシーン「その気持ちも分かる」
― 物語も終盤にさしかかっています。5話で描かれた樹とつぐみがお互いを思って別れを選ぶという展開には、視聴者から「切ない」という感想が多く上がっていましたが、ここまで振り返ってみていかがですか?松坂:第5話の別れのシーンは、自分の中でも“1章・完”みたいなところがあったので、印象深かったです。川奈と出会って自分の中でいろいろ変化があって、もう一度恋をしようと思えたけれど、やっぱり目の前に次々と出てくるどうしようもない障壁にぶつかってしまう。それで樹はああいう答えを出すんですけど、でもその気持ちも分かるんです。自分が親の立場だったらと考えると、土下座した相手のお父さんの気持ちも分かるじゃないですか。何も言えなくなりますね。
― そうですよね。さらに、是枝(瀬戸康史)のように何でもできる男性がそばにいるとなると…。
松坂:何でもできるし、全力で支えられるじゃないですか。まず、樹は川奈を線路から助けることもできない。でも是枝はおぶることもできるし、すぐに駆けつけることもできる。5話はそういう樹にはできないことが本当に多すぎました。
― 本当に見ていてつらかったです。5話以降も2人にとってつらいシーンが続いていますが、撮影に臨む心境もやはりつらいものがありましたか。
松坂:そうですね。でもこのつらさというか重さが、樹の気持ちを作るにあたってはとても手助けになるだろうなと思っています。
描くのは“大人のラブストーリーの乗り越え方”
― 私も樹やつぐみと同世代なのですが、このぐらいの年齢は付き合うことが結婚に直結しがちじゃないですか。だからこそより悩むというか。松坂:そういう年齢ですよね。親もそういうふうに見るから、お前は将来どうするつもりなんだという話になるし、やっぱり相手の人生を考えちゃうんですよね。だから、あの選択も分かるなぁと。
― 本作では、障がいのある方との恋愛には様々な困難があるということだけにフォーカスするのではなく、思い合う気持ちは障がいのない方と何も変わらないということも丁寧に描かれている印象です。障がいのある方の恋愛について、どのように捉えて演じられていますか?
松坂:乗り越えなきゃいけないことは、障がいのない人とちょっと違うのかもしれないんですけれども、どの人においても必ずそういう壁みたいなものは出てくると思うんですよね。その種類が違っているだけ。この年齢になってくると、皆さん何かしら大変じゃないですか?
― そうですね。結婚のタイミングなど、どんな人と付き合っていても問題はあると思います。
松坂:本当に細かく見たら数えきれないくらいの困難がいっぱいあって、樹の障がいはその中のうちの1つだと思うんです。無数にある中の1つ。なので、ハンディキャップを背負った人の恋愛ということではなくて、“大人のラブストーリーの乗り越え方”として、作品と向き合っていこうと思っています。
― 山本美月さんとは初共演ですね。序盤にあった2人のカップルシーンはすごい空気がナチュラルで微笑ましかったです。事前に山本さんと打ち合わせなどはされたんですか?
松坂:「こうやってみようか?」という相談はしなかったですね。段取りやテストを何回かやっていく中でお互いが帳尻を合わせて、本番で合わせるというか。最初からバチッと決めるのではなくて、徐々に歩み寄っていくような感じは樹と川奈の関係に似ているかもしれません。
― 松坂さんにとって、連続ドラマでは初めてのラブストーリーでもあります。キャスト発表時には「ちょっとこそばゆい」とコメントされていましたが、それも歩み寄っていくうちに慣れてきた感じでしょうか?
松坂:最初はこそばゆさがありました(笑)。でも、最近はあまりそういう「好きだ」「愛してる」とかそういう感情を吐露するシーンが少なくなってきて。今は逆にこそばゆさより、重さみたいなものがのしかかっている感じです。
「立って芝居したいな」樹の心境をリアルに実感
― 松坂さんの自然な車椅子操作にも注目が集まっています。撮影前からご自宅に車椅子を持ち込んで練習されたそうですね。松坂:はい。自宅のリビングやオフィスでのシーンなどは自分でも分かるようになってきたんですが、ロケになってくると車椅子で自分が体験したことがないシチュエーションばかりなので、現場にいらっしゃる車椅子指導の先生に「この動きだったら、こういうふうに動けますか?」と毎回確認しながらやっています。今でも車椅子の練習は続いています。
― 私もドラマを拝見していて、立っている時の感覚や視界では気づかないような障害物がこの世にはたくさんあるんだろうなということにも気づかされました。見えている景色が違うんだろうなと。
松坂:本当にそうなんですよね。最近はなくなってきましたけど、やっぱり最初の方は見上げながらお芝居をする中で「あぁ、立って芝居したいな」と思っていました。
― それが樹にとっては日常なんですよね。
松坂:そうです。僕がそういうふうに思ったということは、樹自身も今でもやっぱり歩きたいという気持ちがどこかにあるんだろうなというのも実感として湧いてきました。
― 樹は人に頼らずなんでも自分で解決しようとするタイプですが、松坂さん自身は樹に似ていると感じる部分はありますか?
松坂:あまり弱みは見せたくないという気持ちは分かるかなと思います。どちらかというと頼られたいし、信頼してほしいですし、でも、その信頼を得るためにはやっぱり自分でなんとかして結果を出すために頑張らなきゃいけない、と思いがちではありますね。この作品を通して、“頼ること”は本当に大事だなと感じています。ある程度は頼って、ちゃんと呼吸しないと。
― わかります。樹は身体的な障がいという意味だけではなくて、精神的な意味でも生きづらそうだなと思います。
松坂:そうなんですよね。「ちゃんと深呼吸できてるかな?」って僕自身も演じていて思います。
松坂桃李の困難を乗り越える方法、夢を叶える秘訣
― 松坂さんは困ったことがあった時、周りに頼ったり相談するタイプですか?松坂:仕事に関しては、今はマネージャーさんに相談しながらやっています。それによってだいぶ僕自身も楽になったなと思います。
― 相談できるようになったのは何かきっかけがあったんですか?
松坂:ある程度話し合いをする時間を設けてもらえるようになってきたというのが大きいかもしれません。20代前半の仕事し始めの頃は、「これやりなさい。次はあれして。次はこれをして…」「はい!はい!はい!はい!」みたいな(笑)。それがだんだん月日とともに、年に何回か今後の仕事について話す機会ができ始めてから、自分の中でも負荷がなくなったなという感じはありますね。
― では、樹のように壁にぶつかった時、相談すること以外にどのように乗り越えていますか?
松坂:そういう時はもう時間が解決してくれるかな、って僕は思ったりするんです。壁にぶつかって失敗したとしても、時間とともにそれがちゃんと血肉になるというか、次にまたそういうことが起きた時に、その経験があるからこそ優しくできたり、何か対応できたり、気持ちが分かったりするし、それがまた次の役に活かされたりするかもしれない。
だから、その時は「うわ~」とか思ったりするんですけど、でも無理にそこで黒を白に変えようとはしない。時間とともに馴染ませていく、じゃないですけど、そういうふうにしていきますかね。
― では、モデルプレスの夢を追いかける読者に向けて、松坂さんが考える「夢を叶える秘訣」をお伺いしたいです。
松坂:小さい目標をいくつか立てること。夢は夢であるにしろ、それは置いておいて、そこにいくまでの過程として、本当に何でもいいんですけど小さい目標を立てるんです。例えば「明日朝7時に起きる」とか(笑)。自分の中に“朝7時に起きることができた”という“できたこと”を積み重ねていく。
― 成功体験が自信になっていくと。
松坂:そうです。「100歩歩く」とか「朝ご飯をしっかり食べる」とかでもいいですし、そういう自分のできたことを1個ずつ積み重ねていくと、時間はかかるかもしれないですけど、確実に夢に近づくような気がします。
― 松坂さんは、樹のように自分を律することができるタイプですか?
松坂:いやいやいや。僕はめちゃくちゃいい加減で、自分によく負けるので(笑)。その目標を自分に課すことで、「これができたからきっと大丈夫」と思えます。
― ちょっと怠けがちな方にもおすすめの方法ということですね。
松坂:そうですね。まずは簡単に立てられる目標から。朝7時に起きる。1回でもいいから。
― 1回でもいいんですね(笑)。
松坂:ちょっと甘めに1回設定してみる(笑)。そこからですね。
― 最後に今後の見どころを。
松坂:観るのもつらいような展開が続いていますけれども、キラキラしたラブストーリーではなくて、現実と向き合ったラブストーリーというのがこの「パーフェクトワールド」の魅力の1つだと思っています。現実と向き合った2人が、今後どうやって目の前にある壁を乗り越えていくかというのが、例えば社会人同士でお付き合いをされている方の後押しになるかもしれない。境遇は違っても、何かのきっかけになるような要素がきっと出てくるはずなので、そういったところに注目してもらえればいいかなと思います。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
第8話あらすじ
高木圭吾(山中崇)と楓(紺野まひる)、夫婦の夢をどちらも叶える樹(松坂桃李)のプランは、2人に笑顔を取り戻し、樹は正式に、高木夫妻が建てる家の設計を請け負うことに。つぐみ(山本美月)もまた、建築中のバリアフリーのモデルルームを見学できるよう、仕事関係者にかけ合う。その一方で、2人がまた一緒に仕事をすると聞いた葵(中村ゆり)はいても立ってもいられず、松本で働くつぐみの元へ向かい、「樹くんと付き合うことになった」と嘘をついてけん制する。それを聞いたつぐみは、樹への想いを封印するように、高校時代に描いた思い出の絵を捨てる。樹もまた、つぐみが是枝(瀬戸康史)と結婚すると知り「幸せになれよ」とエールを送るが…。
建設工事の安全を願う地鎮祭当日、つぐみは元久(松重豊)に、樹と一緒に仕事をしていることを打ち明けようとするが、次の瞬間、強い揺れに襲われ、大きな地震が起きる。幸い、つぐみの家は被害が少なかったが、地鎮祭に参加するため、同じく松本にいた樹とは連絡がつかない。心配になったつぐみは、元久や咲子(堀内敬子)が止めるのも聞かず、家を飛び出す。
一方、東京で地震のニュースを知った洋貴は、つぐみから樹と連絡が取れないと聞き、葵と合流して松本へ向かうことに。葵の話によると、樹にとって何より心配なのは、排せつができないことによる尿毒症だという。最悪の場合、死にいたることもあると聞き、ますます不安が募るつぐみだが…?
物語はついに佳境へ。岐路に立たされ、激動する、それぞれの運命の行方は―?
松坂桃李(まつざか・とおり)プロフィール
1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。09年に「侍戦隊シンケンジャー」にてデビュー。11年『僕たちは世界を変えることができない。』、『アントキノイノチ』の2作で第85回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第33回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。その後は映画、テレビドラマ、CMなど多方面で活躍。主な映画出演作は『ツナグ』(12)、『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』(14)、『マエストロ!』(15)、『エイプリルフールズ』(15)、『日本のいちばん長い日』(15)、『ピース オブ ケイク』(15)、『図書館戦争 THE LAST MISSION』(15)、『劇場版 MOZU』(15)、『秘密 THE TOP SECRET』(16)、『真田十勇士』(16)、『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)、『キセキ -あの日のソビト-』(17)、『ユリゴコロ』(17)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)、『不能犯』(18)、『娼年』(18)、『孤狼の血』(18)。公開待機作に『新聞記者』(6月28日公開)、『蜜蜂と遠雷』(10月4日公開)、『HELLO WORLD』(9月20日公開/声の出演)がある。
【Not Sponsored 記事】
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