時代とともに変わる“朝ドラ”「私たち最後だよ」―― 「半分、青い。」を書き上げた今<脚本・北川悦吏子インタビュー前編>

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【半分、青い。/モデルプレス=9月28日】9月29日に最終回を迎えるNHK連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合/月曜~土曜あさ8時)。同作は、故郷となる岐阜と東京を舞台に、ちょっとうかつだけれど失敗を恐れないヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁)が、高度成長期の終わりから現代までを七転び八起きで駆け抜けるおよそ半世紀の物語。全156回を書き上げた脚本・北川悦吏子がモデルプレスのインタビューに応じた。<前編>
北川悦吏子(C)モデルプレス
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時代とともに変わる“朝ドラ” 北川悦吏子「私たち最後だよ」

― 全156回分の執筆、お疲れ様でした。まずは書き上げた今の心境を教えてください。

北川:疲れました。死にました…まだ死んでいます(笑)。やっぱり誰に聞いてもそうみたいで、“朝ドラ”を書いた人には「よくやったね」と言われます。去年(2017年)の1月1日から書き始めたんですけど、4ヶ月後にお友達とお花見に行ったときには「楽勝だぜ」って言っていたみたいで(笑)。

― いつ頃から大変さを感じるようになりましたか?

北川:100本目を書いている頃に急にガタッときたんです。それが去年の10月くらいだったと思います。だんだん人に会えなくなってきて、人とご飯を食べるっていう選択肢がなくなってきて、家で書くか寝るか…自分で時間を決められない時期に突入にしてからは辛かったです。

― 第100回は、映画「名前のない鳥」の監督権を巡って涼次(鈴愛の当時の夫:間宮祥太朗)と祥平(涼次が慕う映画監督:斎藤工)のやりとりが繰り広げられた頃。鈴愛と涼次の関係もこの頃から崩れていきますが、鈴愛の心情というものも北川先生の精神面に影響していましたか?

北川:鈴愛が描くことの苦しさに耐えられずマンガ家をやめるくだりは、自分の苦しさを鈴愛に乗っけていたような部分があり、その少し後くらいにボディーブローのように効いてきましたね。思いつくために糖分を補給するし、甘いものを食べまくって、一番酷いときは、2週間で6キロ太りました。今まで着ていた服が着られなくなりましたし、あの頃は辛かったです。今はダイエットして戻りつつあるんですけど、でも、この脂肪は、全部書き上げた勲章だ、と愛しんであげよう(笑)、とさえ思います。そのうちには、戻したいですが。

北川悦吏子(C)モデルプレス
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― 脚本は3日で1本書き上げていたとお伺いしましたが、スケジュール的な辛さもあったのでしょうか?

北川:単純に分量が民放の連ドラの4倍なんですけど、書く時間は1.5倍くらいしかないんです。だから3日に1本あげる計算になります。毎回3日間リングに上がり続けている感覚です。「この時間で何ができますか?」っていう。そのリングの上で相手をどう倒すのか、156回、頭でやりました。でも、働き方改革で少し変わるみたいですね。

― 変わる?

北川:撮影の期間が伸びるらしいので、作家もこれまでより長く執筆期間が取れると思います。今は1作品半年ですが、もっと遡ると山田太一先生とか1作品で1年放送があった時代もあって、そこから今の形になって、今後は働き方改革で放送期間は変わらず製作期間が伸びる。これは作家にとってはすごくポイントで、朝ドラ作家たちは皆言っています。「私たち最後だよ。苦しかった人たちで座談会やろう」なんて、話たりして(笑)。本当に地獄。

― 「なつぞら」(2019年度前期/ヒロイン:広瀬すず)も、撮影期間の関係で早い発表となりましたよね。時代の流れとともに変化していくということでしょうか。

北川:とにかく“朝ドラ”は、脚本家と、ヒロインが大変で。半分くらいの脚本家が、途中で逃げたり、クラッシュしている、という話も聞きました。スケジュールと仕事量が尋常じゃない。これから“朝ドラ”を書く作家の方たちが、少しでも、楽なスケジュールで書けるのは、本当にいいことだと思います。単純に、時間が足りない、と言ってる人も少なからずいます。私の場合は、体調に不安があり、倒れるかもしれない、というリスクが伴うので、短期決戦の方がありがたかったですが。それは特殊な事情ですね。

SNSで視聴者と積極的に交流「やってる意味があった」

北川悦吏子(C)モデルプレス
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― 北川先生はTwitterで積極的に視聴者と交流されていますが、そのドラマの見方というのも現代らしさがあるなと感じました。脚本家の意見をリアルタイムで知れるというのは、視聴者にとって貴重な場になっていると思います。

北川:“朝ドラ”をやってフォロワーさんが13万から15万に増えました。前から日記のようにツイートしていたんですけど、今回私のツイートを見て「2倍楽しい」って言ってくださる方も多かったので、やってる意味があったのかなと思いました。感想を聞きながら、書くのは楽しかったです。美濃権太があんなに、受けたりね(笑)。

― 今回積極的に交流していく中で、印象に残っている感想や意見はありましたか?

北川:独特の感想を寄せてくださる方もいて、「なるほどな」とか「そう思うのか」とか私が気づいてなかった感想が届くことも多かったです。最近だと、鈴愛の「律は看板に守られて生きてきた」「菱松電機を辞めるな」「より子さん(律の当時の妻:石橋静河)とやり直せ」って言うセリフについて、「鈴愛は自分自身をブランドとは思えないけど、より子をブランドと思っているからあのセリフなんだ」っていう感想がきて、深い!と思いました。

― 面白いですね。その感想を聞いて観ると印象が変わりそうな。

北川:私はそう考えて書いたわけじゃないんですけど、鈴愛にとって律は手に入らなかった人だから、全く外れているわけではなくて。そう考えてあのシーンは観ると余計切なく感じると思います。和子さん(律の母:原田知世)の最後に律が苺を買いに行くシーンについても、「一期一会にかけてるんですよね?」って感想がありました。面白いですね。

あと、鈴愛は、回るものが好きだね、という感想を見つけたんです。小さな時のゾートロープとか、拷問器具の発明とか(笑)、だから扇風機なんだ!なんて感想を見つけて、ああ、気がつかなかった、確かにそうだ、と思って、それは、そのままセリフに書きましたね。そういうことが、楽しい。これは、“朝ドラ”の前からやってることです。Twitterの感想から思いついて、それに応えるように何かを書く。私は話し相手がいると、どんどん書けるタイプなので。

― 色々な受け止め方があり、それをすぐに共有できるというのはSNSの強みですよね。

北川:やっぱりドラマはある程度自由に観てもらうものなので、その感想を知れるっていうのが面白い。皆で作っているっていうと違うのかもしれないけど、私がそれをRTして拡散して、皆で楽しんでいる感じがするんですよ。“朝ドラ”なんて特に、毎日やってるわけで、毎日のおしゃべりのように、感想を読むのを楽しみにしていました。

あとは、みなさん、いつのまにか自分のことを喋りだす。そういうのを読むのも面白かったです。私の場合は、こうで…なんて。なんか私のドラマって自分はどうだってことを喋りたくなるみたいで。鈴愛が涼ちゃんに振られたときも、友達から「芸術家の恋人と付き合ってたとき、私もああいう目にあって…」みたいなLINEがきたんです。知らなかった、そんな目にあってたのか、とか思いました(苦笑)。

★後編に続く。(modelpress編集部)


「半分、青い。」衝撃の最終週「それを書かないと物語が終われない」 脚本・北川悦吏子の思い<インタビュー【1】>


「半分、青い。」永野芽郁と佐藤健、脚本・北川悦吏子の目にはどう映っていたのか<インタビュー【2】>



北川悦吏子(きたがわ・えりこ)プロフィール

北川悦吏子(C)モデルプレス
北川悦吏子(C)モデルプレス
1961年12月24日生まれ。1989年、脚本家デビュー。『愛していると言ってくれ』(1995年)、『ロングバケーション』(1996年)、『ビューティフルライフ』(2000年)など恋愛ドラマがヒットし“ラブストーリーの神様”と呼ばれる。『ビューティフルライフ』では、第18回向田邦子賞、第8回橋田賞を受賞。

あらすじ(9月28日放送)

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永野芽郁/「半分、青い。」より(C)NHK
永野芽郁/「半分、青い。」より(C)NHK
ようやく現実と向き合う気持ちになった鈴愛(永野芽郁)は、単身、ある場所を訪ねる。東京では、鈴愛の帰りを待つ律(佐藤健)のもとを、正人(中村倫也)が訪れていた。そこに、鈴愛と律あての速達が届く。封筒を受け取った律が差出人を確認すると、秋風羽織(豊川悦司)と書かれていた。その中には、秋風から鈴愛と律に贈る言葉が…。一方の鈴愛も、思わぬ人物からのメッセージを聞かされることになる。

佐藤健/「半分、青い。」より(C)NHK
佐藤健/「半分、青い。」より(C)NHK


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