モデルプレスのインタビューに応じた石原さとみ(C)モデルプレス

石原さとみを“突き動かすモノ”とは「今に固執することが怖い」<モデルプレスインタビュー>

2018.01.16 07:00

女優の石原さとみ(31)が、モデルプレスのインタビューに応じた。2018年2月2日よりスタートする舞台「密やかな結晶」で主演を務める彼女。「4年間、ずっと舞台をやりたいと言い続けてきました」と、念願の挑戦。舞台にこだわる理由、4年間の変化、彼女を突き動かすモノとは――?インタビューでは、“今”の思いを聞いた。

石原さとみ4年ぶり舞台「密やかな結晶」


原作は芥川賞作家、小川洋子氏(「博士の愛した数式」他)の同名小説。脚本・演出は、日本アカデミー最優秀脚本賞・読売演劇賞最優秀作品賞の鄭義信氏(「焼肉ドラゴン」他)。有機物であることの人間の哀しみを見つめ、現代の消滅、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く物語を、人生と人間への愛を、笑いも苦しさも悲しみも喜びも一つの作品で芸術的に表現する鄭義信によって舞台化する。

石原にとっては、2013年「ピグマリオン」以来、4年ぶりの舞台。共演には、村上虹郎、鈴木浩介、藤原季節、山田ジェームス武、福山康平、風間由次郎、山内圭哉、ベンガルなどを迎える。

念願の挑戦「本当に嬉しいです」


石原さとみ(C)モデルプレス
「本当に嬉しいです」。念願の挑戦は、彼女の頬をゆるくした。

「『舞台をやりたい』と言う思いはずっとあったんですけど、なかなかタイミングが合わなくて。4年経ってしまいましたが、ついに実現しました」。

石原の舞台デビューは、主演のヘレン・ケラーを演じた2006年「奇跡の人」。その後も、故・つかこうへいさん作・演出の「幕末純情伝」(2008年)やジュリエット役を演じた「ロミオ&ジュリエット」(2012年)など、計6本の舞台に出演してきた。

そして、今回。石原本人が出した希望は、「演劇らしいものをやってみたい。でも、分かりやすくその世界に入り込める作品。すごく派手というわけじゃなくて、言葉として台詞が残るもの」。複数あった作品候補の中から選び出したのが、この「密やかな結晶」だった。演出家に関しても「以前、鄭さんの舞台を拝見してから『いつかご一緒したいな』と思っていたので、今回の作品で願いが叶いました…自分が頭の中でやりたいと思っていたことが形になっていくのが、すごく楽しいです」。

石原さとみにとって舞台とは…


石原さとみ(C)モデルプレス
舞台の魅力は、「さらけ出せる」ことだと石原。

「映像や写真だと切り取られてしまう。映像で育っているので、もちろん好きな部分もたくさんあるんですけど、舞台だと稽古期間も長いので、恥も晒せるし失敗もできる。それを乗り越えていくことも稽古中にできるし、本番が始まってからも毎日発見がある。自分のコンディションも整えなきゃいけないし、それは自分との戦いで鍛えられている感じがするんです」と明かし、「幕末純情伝」でのつかさんとの思い出を振り返る。

「つかさんの一挙手一投足に全部反応していたあの時間がすごく尊くて、またあの感覚を味わってみたいなという気持ちがあります。未知だからこそ、怖いのは怖いですし、苦しくなることは辛いですけど、その分楽しみなんです。誰かのせいにできないし、舞台上に立ってしまえば誰も助けてくれない。まんま出される感覚が、楽しかったんです。つかさんとの時間は、1分たりとも楽しくない時間がなかった。ずっと楽しくて、奇跡的な時間だったなと思います。そういう意味では、鄭さんと一緒にやれるっていうのもすごく楽しみ」。

恥をさらけ出すことへの抵抗はないという。「早く分からないって言いたいです。たくさん失敗して、それに立ち向かっていきたい」と“失敗”よりも、その先で得られる何かに目が向いていた。

石原さとみ(C)モデルプレス

今興味があるものは「iPS細胞」!?


それは、石原の好奇心によるものだと思う。「好奇心は昔から旺盛で、知識欲みたいなものは年々増えていっています」と常に学ぶことを楽しんでいる。

「iPS細胞にすごく興味があって、山中(伸弥)教授に会いたいって言い続けていたら、この間、NHKの番組で共演させていただきました。まだまだ知らないことがたくさんあるから、その道の最前線にいる方の話を聞くことがすごく新鮮で楽しいんです」と笑みをこぼした。

「今に固執することが怖い」石原さとみを“突き動かすモノ”


4年ぶりの舞台。「(『奇跡の人』の)ヘレン・ケラーなら怒りや苦しみ、つかさんの舞台なら愛情、『ピグマリオン』なら儚さや輝きたい欲、をそれぞれ学びました。舞台は、そのときに“生きた時間”が確実に何かに繋がっていく気がするんです」。

念願が叶うまでの4年間、石原にとってはどういう時間だったのか――「4年間、すごく楽しかったんです。仕事面で言うと、月9主演もできて、お仕事ドラマもできて、やりたいことがどんどん叶ったなと思います。メイクもファッションもとことん好きになったし、20代らしくオシャレも恋愛も楽しめて。あと、親子関係もより近くなりましたし、兄に奥さんができて子どもができて、また違う関係を築けたなと。この4年は環境が大きく変わって、前よりも幸せです」。

「今、本当に楽しい」と口にしながらも、見つめる先は“今”より“未来”。「その“楽しい”は永遠に続かないから、今に固執することは怖いです。変化がなくなればつまらなくなるしそうなる前に、新しいことをやりたい。舞台に挑戦するのもそうだし、新しいジャンルのドラマに挑戦するのもそうだし、違うものを勉強してみたいです。30代は、また好きなことが増えて、楽しみ方が変わっていくんだろうなと思います」。その好奇心こそが、彼女を突き動かし、可能性を広げていく。

石原さとみ(C)モデルプレス
石原さとみ(C)モデルプレス
舞台「密やかな結晶」は、2月2日~25日、東京芸術劇場プレイハウスにて上演。3月に富山、大阪、福岡公演あり。(modelpress編集部)

石原さとみ(いしはら・さとみ)プロフィール


1986年12月24日、東京都出身。2002年ホリプロタレントスカウトキャラバン、グランプリを受賞し、「わたしのグランパ」(03)で映画デビュー。NHK朝の連続テレビ小説「てるてる家族」のヒロインを演じて人気は全国区に。近年の出演作は映画「風に立つライオン」「進撃の巨人」(15)、「シン・ゴジラ」(16)、「忍びの国」(17)、ドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(16/日本テレビ)など。2018年は、1月12日から主演ドラマ「アンナチュラル」(TBS系、毎週金曜よる10時~)がスタートするほか、主演舞台「密やかな結晶」が2月2日~、東京芸術劇場プレイハウス他にて上演。

舞台「密やかな結晶」

<東京公演>
上演期間:2018年2月2日~25日
場所:東京芸術劇場プレイハウス(東京・池袋)
※3月に富山、大阪、福岡公演あり

原作:小川洋子「密やかな結晶」(講談社文庫)
脚本・演出:鄭義信
出演:石原さとみ 村上虹郎 鈴木浩介
藤原季節 山田ジェームス武 福山康平 風間由次郎
江戸川萬時 益山寛司 キキ花香 山村涼子/山内圭哉 ベンガル

<ストーリー>
海に囲まれた静かな小島。この島では“消滅”が起こる。香水や鳥、帽子など、様々なものが、“消滅”していった。“消滅”が起こると、島民は身の周りからその痕跡を消去し始める。同時にそれにまつわる記憶も減退していく。

『わたし』は、この島に暮らす小説家。近所に住む『おじいさん』とお茶を飲みながら話をするのが日課という静かな毎日。おじいさんは、わたしのことを赤ん坊の時から見守り続けているが、その頃からずっと若者の容姿をしている。わたしの母は秘密警察に連行され死んだ。鳥の研究家だった父も亡くなり、おじいさんだけが心安らぐ存在だ。

この島にも、少数ではあるが記憶が“消滅”しない人、記憶保持者がいる。彼らはそのことを隠して生活しているが、秘密警察は手を尽くし、彼らを見つけて連行する。島民が恐れる記憶狩りだ。

記憶狩りが激化する中、わたしの担当編集者R氏から、記憶保持者であることを告白される。もう二度と、大切な人を秘密警察に奪われたくないと思うわたしはR氏を守るため、自宅の地下室に匿うことを決意する。わたしの身を案じるおじいさんは R 氏の存在を危険視しながらも、わたしのためR氏を匿うサポートをする。

ナチスからユダヤ人を匿うような緊張の日々の中、わたしとR氏の心の通い合いは深くなっていく。R氏はわたしに、人間の生活に寄り添っていた些細なものたちがいかに愛おしいか、本来の豊かな記憶の世界へ引き戻そうとする。が、おじいさんにとってその行為は、わたしを秘密警察の記憶狩り対象者にすることに等しい。記憶を失うことでわたしが『わたし』ではなくなってしまうことを防ごうとするR氏は、わたしを危険にさらさず、島の世界の道理に順応して生きることで彼女を守りたいというおじいさん。考え方は全く違うが、わたしを大切に想う気持ち、守りたいという気持ちが二人をつないでいる。

秘密警察の苦悩、R氏の抑圧感、おじいさんのジレンマ、わたしの恐怖…様々な想いを抱えた島は、「消滅」がさらに増えていく。

4人はどう生きるのか。最後に消えるのはいったい何なのか?
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