稲葉友、10年ぶり“坊主”解禁 出演作相次ぐ裏に過去の悔しさ「仮面ライダードライブ」仲間からの刺激<モデルプレスインタビュー>
2017.11.10 17:30
views
俳優の稲葉友(いなば・ゆう/24)が、3年ぶりの舞台に立つ。『すべての四月のために』(東京芸術劇場 プレイハウスにて11月11日より上演)にて、日本陸軍二等兵・高田太平を演じる稲葉は、今回、自ら頭を丸め役に挑む。モデルプレスは「3年という長い時間が空いた意味があった」という稲葉の芝居に対する情熱を聞いた。
目次
同作は第二次世界大戦下の朝鮮半島近くに浮かぶ島を舞台に、理髪店を営む朝鮮人一家(夫婦と四姉妹とその夫)と、彼女らを取り巻く、朝鮮人、日本人軍人たちの物語。戦時下という困窮した日常の中で、愛し、憎み、泣き、笑い、未来への道筋を何とか手繰り寄せようと愚かしくもがく人々の姿を描き、彼らの情けなくも愛おしい姿を通して、人間存在の本質をあぶり出し、時に重く、鋭く、人生、民族、時代を照射する。稲葉演じる太平は日本陸軍二等兵。主人公の妻で四姉妹の次女・秋子(臼田あさ美)と不倫関係にある。
役作りで10年ぶりの坊主に
「内容としては重たい…今の僕たちは本当に想像することしかできない部分が多いです。戦時下の状況だったり、差別だったりを想像するのは難しいところでもあります。作品自体は重たい内容なのですが、笑える箇所もありますし、根本的には家族の話で心の温まるストーリーなので、お客さんが帰り道にぼんやりと色々なことを思ってもらえればいいのかな」と今回の舞台の印象を語る稲葉だが「でも内容は別として、舞台が久しぶりなので、それが超楽しくて」と笑顔を見せる。「『舞台をやりたいです!やらせて下さい!』ってよく言っていたんです。それで今回、念願叶って、しかもこんなに大きい作品で大きい箱で…それが何より嬉しい。稽古場という空間に立つだけでドキドキしましたし、『稽古ってどうやってしていたっけ?』『本番ってどんな感じだったっけ』とワクワクした気持ちが大きいですね」。
今回、軍人役に挑むため、丸刈りにした。「台本を読んで、すぐに『これは坊主だ』って。坊主にできるのは、ちょっと嬉しかったですね。基本的に仕事でしか髪型を変えないのですが、最近は、髪の毛にダメージが蓄積されている感じがしていたので嬉しかったです」と楽しんでいるよう。
坊主頭は10年ぶりだそうで「中学生の時にノリで坊主にしました。その頃、襟足を伸ばしたスタイルや、トップがツンツンしている髪型が流行っていたんです。でも当時の僕は『いや、逆に坊主なんじゃねえか』って(笑)。家で親父にバリカンでやってもらいました。あれが最初で最後の坊主だったので、今回は10年ぶり2度目ですね。だから、すごく新鮮でした。今回は、稽古場の近くの床屋さんで坊主にしました。今作でも、いわゆる理髪店・床屋さんが舞台となるので『せっかくだからここで切ろう』と思い、稽古が始まる前に早めに行って、やってもらいました。現場では『おはようございます』のノリで頭を出して、皆さんに触ってもらいましたが、『おお~』『やってきたか!』『似合う、似合う』という感じでした」。
プライベートでも様々な反応が返ってきたそう。「この前、(竹内)涼真と内田(理央)と会ったのですが、内田は死ぬほどリアクションなくて!俺が最初は帽子で頭を隠していて、『おつかれ!』って帽子をとったら、『ああ~』って(笑)。思わず『あの…坊主にしたこと気づいた?気づいてる?』と聞いたら『えーでも別に似合うから、なんか普通』と言われて『は~そっか~。見せがいがねぇな、こいつ』と思いましたよ。その後に涼真が来たので、同じように見せたら目を丸くしてすごく驚いてくれて。『お前のリアクション、100点か』とツッコミました(笑)」。
稲葉友の役作り
稲葉はこれまでも、女装男子(『レンタル救世主』/NTV)や地味なスーツにメガネ姿の根暗男(『キャバすか学園』/NTV)など爽やかな外見を封印したインパクトのあるビジュアルで注目を集めてきた。今回の坊主頭を含め、そうした徹底した役作りへは熱意を感じるが「『レンタル救世主』や『HiGH&LOW』で女性の心を持つ人の役をやった時は、なんとなく毛を剃ったんです。正直すね毛とか剃っても、タイツを履いていたし、衣装の丈も長かったし、正直見えない部分なんですけどね。でも『役作りのために剃りました!』『役作りのために坊主にしました!』という気持ちではないです。たまたま今回の髪型が坊主だっただけで、それほど抵抗もありませんでした」と本人はいたってフラット。「単純に、印象が違うじゃないですか。戦時中の兵隊役なのに、『坊主じゃないんだ。髪が長いな』とお客さんが気になって芝居に集中できなくなったら嫌なんです。だから、演じる側としても坊主の方がやりやすいし、見る側も見やすいと思って」。
3年ぶりの舞台出演 変化は
前回の舞台出演から3年。その時間は稲葉をどう成長させたのか。「はっきりと成長を自覚している事はないのですが、単純に後輩がいる立場になったことは大きいです。これまでは、どの現場に行っても一番歳下のことが多かったんです。それがだんだんと変わってきて、今回も事務所の後輩・浦川祥哉も出ていますし『後輩もいるから、ちゃんとしなくては』と思っています」と謙遜しつつ「昔よりも、人とのコミュニケーションは取れるようになったかな。25歳ぐらいになってくると、若くない扱いをしてもらえるじゃないですか。だからより色々な話ができるようになりましたね。くだらない話だけでなく、仕事の話も作品の話も。そういった部分でより深いコミュニケーションが取れるようになったことは、3年という長い時間が空いた意味があった気がします」と分析した。映像作品に多数出演 その裏にある“悔しさ”
舞台を離れていた間、稲葉は映像作品に多数出演。2015年『仮面ライダードライブ』にて広く知られるようになり、その後もドラマ・映画『MARS~ただ、君を愛してる~』(NTV)、『HiGH&LOW』(NTV) 、ドラマ『レンタル救世主』、『キャバすか学園』(NTV)、『潜入捜査アイドル・刑事(デカ)ダンス』、大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)のゲスト出演を重ね、女装男子、根暗男、新人アイドルなど多種多様な役を演じ、その都度、視聴者へインパクトを与えてきた。「働かなきゃという感じで手数は多い…(笑)。でも色々な作品に出させていただいたことで、僕を知ってくれる人が増えたことはすごく嬉しいです。仮面ライダーに出る前は舞台をやっていて、大きな劇場で主演させて頂いたことも何度かありました。でも、そうなった時に自分の知名度が低く、お客さんを呼べず席が埋まらない、という状況も正直あったんです。あまり言い方は良くないかもしれませんが、その時『お客さんに舞台に来てもらうには、映像やらなきゃ』って正直思ったんです」。
「あのタイミングで仮面ライダーに出演し、その後も映画・ドラマに出させて頂いている事は、すごく運が良いなと思いますし、もちろん映像の芝居で学んだこともたくさんあります。でもそこで僕を見つけてくれた人たちをどれだけ、劇場に引きずり込めるかっていうのは自分の中でやっぱりあります。どんなに良い作品でも、どんなに自分が情熱を注いでいても、お客さんに観てもらわないとどうしようもない。当時そういう悔しさがあったので、僕をきっかけに演劇を見るようになったという人が1人でも多く出てきてくれたら嬉しいなと思います」。
芝居への情熱はどこから来るのか
芝居への熱意を強く感じさせる稲葉。2009年、第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで過去最多の1万5,491人の中からグランプリを受賞し芸能界入りを果たすが、当時から芝居に情熱を向けていたわけでは無かった。「ジュノン受賞時は、インタビューで『何がやりたいですか』と質問され『お芝居と音楽やりたいです』ってなんとなく言っておいた方が良いかなと思い、言っていました(笑)。その後、事務所に入り、実際に何をやるか、となった時も芝居がやりたいとは思っていませんでしたね。当時、バンドをやっていたので、音楽をちゃんとやりたいな、と思っていました」。
しかし稲葉が挑んだのは“芝居”だった。「初めは『芝居をやって来い』って言われたんです。でも、始めたら不覚にもすごく楽しくて。芝居を続ける中で、色々な人・作品との出会いを経験していき『一生この仕事ができたらどんなに素敵なんだろう』と思うようになり、そこからは、とにかく芝居の仕事ができる場所で生きていたいと思うようになりました。昔から熱烈に芸能界に憧れていたわけではないし、この仕事をするまで、演劇なんて学校行事くらいでしかやったことがなかったので、変な感じですよ。今こういうこと話しているのって」と照れたように振り返る。
『仮面ライダードライブ』出演者からの刺激
多くの作品で出会いがあったが、特に『仮面ライダードライブ』の仲間の存在は大きかった。竹内涼真や内田理央、上遠野太洸、馬場ふみか…。同作には今、まさに注目を集める若手俳優が多数出演していたが、稲葉はそんな彼らから、今も刺激を受ける。「涼真がたくさんテレビに出ているのを見て『良かったな~』って。あの作品が終わってからの涼真が、バーンと一気に売れて色んな作品に出たことは本当に嬉しいです。ああいう人が売れない世界なんて嫌だなと思うので。内田は本当に仕事の幅が広い。演技だけじゃなく、バラエティもやるし、雑誌では専属モデルもやっているし。僕には彼女のようなバイタリティはないし、器用に色々やるタイプではないから、単純にすごいと思います。本当に兄弟みたいな関係なので、よそで彼らが褒められている話を聞くと嬉しいですし、『俺も頑張ろう』と刺激を受けます。ただ、どっかで『俺は俺だしな』とも思うんです。だからライバル関係というよりは、なんだろう…元気にやっているのが嬉しい…(笑)。待って、俺は誰目線なんだろう(笑)」。
お互いに忙しくなっても、交流は続いている。
「こないだも会ったんですけど、それをInstagramに投稿したら、すごくレスポンスがあって。仮面ライダーで僕らを見つけてくれた人たちが喜んでくれるんです。仮面ライダー後に、各々別のところで頑張って、でもまだ仲が良いので再会して。それを、仮面ライダーを観ていた方が喜んでくれることは、僕らもすごく嬉しいです。また共演できたら、すごくハッピーなことだし、いつか『今思えば、あの作品超豪華じゃん』と思ってもらえるようにしっかりやんなきゃな」と落ち着いて語る。
稲葉友のこれから
そんな稲葉の夢は何なのか。「近いところでいうと、舞台を自分で作りたいです。企画を立ち上げるところから。本を決める、演出家を誰にする、キャストもこういう人を呼ぶ、というところから1回やってみたいです。今まで色々な先輩や人に出会ってきて『こういうお芝居は好きだな』『こういうのがやりたいな』と感じた自分が、今作ったらどういうものを目指して、どういう人が集まって、どういう人が助けて下さるのか、そしてどういう作品が完成するのか。それをやった時のお客さんの反応にも興味があるし、終えた後の自分の姿にも興味があります」と目を輝かせる。「例えばアーティストの方は自分が曲を出すじゃないですか。それは自分の作品。僕らは自分の作品と言うけど、実際は脚本がないと話せないし、監督がいて演出家がいて、初めてそれを体現できる。それもあって、自分で1本立ち上げたいという夢はできました。ちょうど事務所が新劇場『浅草九劇(アサクサキュウゲキ)』をオープンさせたという環境もあるので、現実的に頑張りたいです」。
さらにもっと大きな夢もあるという。自身は男3兄弟の末っ子。温かい家庭で育ってきた環境が与えた影響も大きい。「将来的に、結婚して子供がいて、家族仲良くて、で良い感じに死ねたら良いな(笑)。すごく遠いところのぼんやりとしたビジョンなんですけどね。うちは親父も母親も健在で仲が良いし、親戚も仲が良い。それに兄弟がいて良かった。だから自分もそういう家族を作れたら良いなっていう理想の形だと思っています。親が作ってくれたような家族を俺も作りたいです」と真面目に語る一方、「もっと『国民的俳優になりたい』とか言った方が良いのかな?(笑)。でも国民的俳優は涼真がなってくれたら良いんですよ」といたずらっぽく笑う。
“国民的俳優”。稲葉の描く将来は少し違うようだ。「涼真は『ひよっこ』に出ていましたし、俺も朝ドラやれるなら超やりたいですよ。おばあちゃんはすごく喜ぶだろうし、親父も毎日見るだろうし。大河ドラマもレギュラーで出られたら、また喜んでくれると思うし。もちろんそこに求めていただけるくらいに自分が成長しなきゃな、という思いはあります。それでも正直、涼真が王道だとしたら、僕は2番手とか3番手とかで良い仕事ができるようになりたい。そういう俳優さんが好きなんです」。
夢を叶えるために
最後に夢を叶える秘訣を尋ねた。「色々な事を蔑ろにしないというのが絶対条件。やりたいことだけをやるというのは想像以上に難しいので。すごく単純なところだと例えば、周りにいる人たちが気分悪くならない人でいることはすごく大事だと思います。そういう積み重ねが、いざという時『あいつは良いやつだから』といって回り回って助けてくれることに繋がる気がします。やりたい夢ができた時に、どれだけ助けてくれる人がいるかって大事だと思うんです。夢を叶えるためにスキルだけを磨いてもそれは叶わないし、1人じゃ何にもできない。成功している人たちは、色々な人に愛されているから『いざ動こう』と思った時に人が集まって来るんでしょうね。そういうことを俺も先輩や親、会社から教わりました。人として大事なことを忘れないでやり続けるってことが夢を叶えるためには必要だと思います」とエールを送った。「とにかく人間としても俳優の稲葉友としても、色々な人に求められたいという思いは強いです。『俳優やってくれ』と頼まれてやっているわけじゃなく勝手にやっていて、それでも好きになってくれた人がいて応援してくれていて…。その思いにはずっと応え続けたいです」と穏やかな口調で語る稲葉。「舞台を自分で作りたい」という彼の夢が叶う時は、そう遠くない気がした。(modelpress編集部)
稲葉友(いなば・ゆう)プロフィール
生年月日:1993年1月12日出身地:神奈川県
身長:175cm/B:88cm/W:76.5cm/足:27cm
特技:野球、バスケットボール、ハンドボール、逆立ち、歌、殺陣
趣味:観劇、漫画、掃除、音楽(バンド経験あり)、麻雀、DIY、お笑い鑑賞、歩く、写真を撮る、落語を聴く
2009年に第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞し、翌10年に俳優デビュー。11年の舞台『真田十勇士~ボクらが守りたかったもの~』では、舞台初出演にして主演をつとめた。16~17年にはラジオJ-WAVE「ALL GOOD FRIDAY」にパーソナリティーとして出演。マルチに活躍している期待の若手俳優。近年の出演作品に、映画『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』(監督:久保茂昭、中茎強・17)、主演ドラマ『ひぐらしのなく頃に』、『ひぐらしのなく頃に解』(BSスカパー!・16)などがある。
すべての四月のために
舞台『焼肉ドラゴン』の作・演出で演劇賞を総舐めにし、映画『月はどっちに出ている』『愛を乞うひと』で数々の賞に輝いた鄭義信による新作。主演は舞台『鉈切り丸』『ブエノスアイレス午前零時』『ビニールの城』や映画『ヒメアノール』など俳優としての存在感をますます放っている森田剛、四姉妹の次女・秋子の夫ながら、長女・冬子への想いを断ち切れない複雑な思いに揺れる男、萬石(まんそく)を演じる。萬石の妻で教員の、次女・秋子には、数多くの映画やドラマで活躍中の臼田あさ美、稼業の理髪店を手伝う長女・冬子には近年舞台でも実力を発揮する西田尚美、一家を見守る四姉妹の父に山本亨、理髪店に関わってくる日本陸軍少佐に近藤公園など、多彩な顔ぶれ。さらに、四姉妹の母で理髪店の店主、安田英順役は、これまで数多くの演劇賞を受賞し、今年の第42回菊田一夫演劇賞での大賞受賞も記憶に新しい麻実れいが務め、物語に深みを与える。
<あらすじ>
1944年春、日本植民地下の朝鮮半島近くの離れ小島。海のそばにある小さな理髪店には、たえず波音が聞こえてくる。戦況が悪化する中、英順(麻実れい)と夫の洪吉(山本亨)が営む理髪店では、次女・秋子(臼田あさ美)のささやかな結婚式が催されていた。ところが秋子の喜びは薄かった。新郎・萬石(森田剛)が、長女・冬子(西田尚美)に対する思いを捨てきれずにいるからだった。酒が配られ、歌を歌い、ようやく場が盛り上がりはじめてきた中、日本軍人の篠田(近藤公園)が、理髪店を日本軍専用とするとの辞令を持ってやってくる…。
【Not Sponsored 記事】
関連記事
「インタビュー」カテゴリーの最新記事
-
“福岡の16歳アイドル”LinQ有村南海、グラビアでも躍進 撮影までの体作り&表情のこだわり明かすモデルプレス
-
【「光る君へ」道長役・柄本佑インタビュー】出家シーンで実際に剃髪「一気にグッと来ました」 最高権力者の孤独を演じて思うことモデルプレス
-
「光る君へ」敦明親王役・阿佐辰美が話題 大河ドラマ初出演の心境&共演者に“救われた”エピソード明かす【注目の人物】モデルプレス
-
MADEINマシロ・ミユ・イェソ「顔が似ている」3人を直撃 日本で挑戦したいことはバラエティー出演【インタビュー】モデルプレス
-
TWICEナヨンの夢を叶える秘訣 “自分を信じる大切さ”語る【モデルプレスインタビュー】モデルプレス
-
櫻井海音&齊藤なぎさ【推しの子】実写化への“プレッシャーを上回った感情” 互いの呼び方&信頼も明かす【モデルプレスインタビュー】モデルプレス
-
【TWICEサナ インタビュー】夢を叶えるためには「勢い」が大事 中学時代のデビュー前から繋がる考えモデルプレス
-
BUDDiiS小川史記、“暗黒時代”支えとなった友の存在 後悔なしの20代振り返る【インタビュー後編】モデルプレス
-
「今日好き」こおめいカップルインタビュー、交際後は毎日寝落ち電話 意外だったスキンシップ事情「もっとしようかなと」モデルプレス