伊野尾慧＆伊原六花「パラレル夫婦 死んだ“僕と妻”の真実」

本作は、事故で死別したはずの夫婦が「1日3分、部屋の中でだけ再会できる」という“制約だらけの奇跡”に振り回されながらも、「お互いの死の真相」と「不倫の真相」を追う夫婦再生ラブ＆ミステリー。伊野尾が夫・並川幹太、伊原が妻・並川なつめを演じ、2人のほかTravis Japanの松倉海斗、野村康太、齊藤なぎさ、岐洲匠、八嶋智人らが出演する。

「パラレル夫婦」誕生のきっかけ

― 「パラレル夫婦 死んだ“僕と妻”の真実」は完全オリジナル作品ですが、ドラマを作るに至った経緯を教えてください。

田中：まず、今1クールで40本以上もドラマがあるので埋もれないようにしたいと思ったからです。恋愛ドラマや夫婦ドラマも毎クール何本かあって、その中で注目していただけるような作品を作るためにはどうしたらいいか考えたときに、見たことがなくて自分が1番面白いと感じるものにしたいと思いました。恋愛ドラマには制約や障害が付きものですが、部屋の中だけで1日3分会えるという制約があると、その葛藤や切なさがたくさん描けるのではないかなと感じたんです。ラブコメディみたいなベタなキュンではなく、考えさせられたり切なくなったりいろいろな感情を持てるドラマにしようと制約の部分から設定しました。

もう1つの理由は夫婦仲を検証することでメッセージを伝えられるのではないかと感じたからです。コロナ禍でもそうだったように、夫婦は一緒にいる時間が増えると一般的に仲が悪くなることもよくあるじゃないですか。本当は一緒にいればいるほど仲良くなるのが理想なのですが現実はそうではないから、ドラマの中で3分だけしか会えない、一緒にいられないとなったら、仲良くなったり上手くいくこともあったりするのではないかと検証する意味もありました。それでも上手くいかないことも多いとは思いますが、一緒にいることによって得られるものは何かということに気づけたら、ドラマを通じて本当に伝えたいメッセージを一般化して捉えていただけるのではないかと考えました。

伊野尾慧＆伊原六花のキャスティング理由

― 主演の伊野尾さん、伊原さんをキャスティングした理由をお聞かせください。

田中：伊野尾さんは頭が良いはずなのにそれを少し隠して、明るく開放的に振る舞えるのがぴったりだなと思いました。幹太はすごく純粋で一直線で、好きという感情が行き過ぎる“溺愛夫”なのですが、そういう真っ直ぐさや純粋さを伊野尾さんなら上手く演じてくれるのではないかと感じました。お互い死に別れているのに、なつめが向こうの世界で不倫をしているのではないかという訳が分からない発想をしてしまうくらい純粋な幹太を、バカっぽくも、視聴者の皆さんが感情移入できるように演じることができると思ったのです。

伊原さんはドラマの設定通りの芯が強くてしっかりした女性だなと思った以上に、ここ数年のご活躍を拝見して一緒にお仕事がしたいと思ったのが1番の理由です。元々はダンス部というところから始まって、ここまで表現力も含めて全てにおいてお芝居が上達されているのは、相当なモチベーションを持って努力をされているからだと感じましたし、ストイックさがないとできないことだと思うのでリスペクトする気持ちがずっとありました。出演されていたドラマ「肝臓を奪われた妻」（2024／日テレ系）も拝見していましたが、あれほど難しい役を24歳の若さで見事に演じられていてすごいなと感心しました。

― 撮影を通してお2人の印象は変わりましたか？

田中：伊野尾さんはものすごく考える方だなと思いました。頭が良く、テレビでお話されているのを聞くと可愛らしさまで計算されているという賢さも感じていました。その印象も間違っていないと思いますが、実際に関わってみたらすごくストイックでいろいろ考えてくれるんです。台本を読んで「こうしよう」「こう見えるのではないか」「何が1番ベストなのか」などとすごく考える方で、やっぱり賢いなと。そして同時に驚いたのは、素晴らしい柔軟性も兼ね備えていて、現場で監督や私が「もっとこうすればいいのではないか」と言ったときに、まずは僕たちの意見に対して「1回やってみます」「なるほど、僕にはなかった考えです」と言って受け入れてくれますし、その受け入れ具合が他の俳優さんと比べて飛び抜けているなと思います。これもきっとすごく頭が良いからですね。さらに提案を受け入れて演じてくれるだけでなく、「こっちの方が良い」「やっぱり自分が用意してきたものでやってもいいですか」と自分の意見もしっかり持たれているので、その部分のバランス能力がすごいなと思いました。もっと頑固な部分が強い方だと思っていたので柔軟性にも驚かされましたね。

伊原さんは想像をはるかに超えるくらい“武士”のような人でした。思っていた以上にストイックで、どれだけセリフが多くても、前日が夜遅くても、入り時間が早くても、どんなに困難な状況であっても一切それを表に出さない。伊原さんに「大丈夫？」と聞くと「大丈夫です」と言って胸を叩くのもかっこいいなと思いましたね。

「パラレル夫婦」撮影現場の雰囲気

― 田村大和は幹太となつめの協力者のような立ち位置で、物語でも重要な人物となっていますが、松倉海斗さんを起用した理由も教えてください。

田中：テレビでの松倉さんを見て、ただのイケメンではなく、非常に明るくて強いこだわりを持っていると感じる瞬間があったからですね。田村は同期の2人のために何か力になりたいと思っていろいろ調べて、同じようにパラレルワールドを経験したインドの夫婦を探してくるなど、オタクの要素もありつつ、明るくて突っ走ってしまうようなキャラクターです。松倉さんにも少しオタクっぽい感じがあるなと思ったので、田村に合いそうだなと思いました。

― 現場の雰囲気はいかがですか？

田中：明るい人がすごく多くて「楽しい現場」とみなさん言ってくれています。会社メンバーの松倉さん、八嶋さん、齊藤さん、岐洲さんがみんな根から明るくて、会った瞬間に誰とでも仲良くなれるタイプで、その中でも八嶋さんと齊藤さんが特に素晴らしい明るさをお持ちで、2人を中心に、会って1週間後くらいにみんなでご飯に行っていた気がします。それくらい急激に仲良くなっていましたね。伊野尾さんと伊原さんももちろん明るいですが、それを上回る太陽みたいな八嶋さんと齊藤さんがいたことで、みんなも引き上げられてしんどい撮影スケジュールの中でも空き時間はずっと喋っていたり、リハーサルも笑いを交えながらやっていたり、すごく楽しくやってくれています。

伊野尾慧演じる“溺愛系夫”の印象に残っているシーン

― 以前の取材で伊野尾さんから幹太の“溺愛系夫”というフレーズはプロデューサーさんが考えてくれたと伺いましたが、印象に残っている夫婦のお芝居やシーンはありますか？

田中：いっぱいあります。お芝居でいうとソファーに座って喋っているときですかね。人は横並びだとそこまで相手の顔を見続けないと思うのですが、伊野尾さんはずっと目線を相手に向けてお話しされます。普通、少し前を向いて空を見上げたり手元を見たりしながら話してしまうところを、どんなときも向き合って会話されているんです。本人の癖でもあると思うのですが、すごく“溺愛系”の幹太らしいなと思っていつも羨ましく見ています。印象に残っているシーンだと、ミックスの終わりを感じていつ会えなくなるか分からないから、ホワイトボードにいろいろ書いているところです。「サブスクリプションを解約しましょう」「あの契約はどうなっていますか」「重いものは今のうちに棚の上から下ろしておきましょう」など、今後のなつめを心配して書いておくシーンがあって、溺愛ぶりがすごく表現されています。

★後編ではセットのこだわりや考察を掻き立てるための仕掛けについて聞いた。

（modelpress編集部）

「パラレル夫婦 死んだ“僕と妻”の真実」第11話あらすじ

幹太（伊野尾慧）の世界の田村（松倉海斗）や莉子（齊藤なぎさ）と再会したなつめ（伊原六花）は、久しぶりに会う仲間たちの温かさに触れ、「いっそ、そっちに行けたらなぁ」と、幹太と2人で子育てする未来に思いをはせる。幹太もまた、なつめに頼まれ、生まれてくる子どもの名前を考えることに。

そんな中、田村が、なつめを部屋の外に連れ出し、こちらの世界に連れてこようと言い出す。うまくいけば親子3人で暮らせるかもしれない——。幹太も一縷（いちる）の望みを抱くが、ミックスはマンションの部屋限定で、一歩でも外に出ればそれぞれの世界に戻ってしまうことを思い出す。すると田村は「トースターを中心に半径数メートルでミックスが起きているのではないか」と推理。つまり、トースターを部屋の外に持ち出せば、なつめも外に出られると考えたのだ。

その日の晩、定刻になってなつめが現れると、トースターを持った幹太は事情を知らないなつめの手を引いて外へ。手をつないだまま外へ出た2人は、事故以来失っていた、心からの笑顔を取り戻す。しかし、時間になるとやはりなつめの姿は消えてしまい…。それから、幹太たちはトースターを使ってさまざまな方法を試みるが、一方で莉子は、ミックスの時間が日に日に短くなっていることに気づく。このままミックスの時間が減り続けたら——。幹太は、ある思いを胸に、なつめの母・楓（南野陽子）を訪ねて…。