ビリー・アイリッシュ/photo by Getty Images

ビリー・アイリッシュの進化続けるレッドカーペットルック変遷 体型への偏見・ジェンダー規範から解放された“自己表現の徹底”

2024.03.14 13:15

2024年、映画「バービー」の挿入歌「What Was I Made For?」でグラミー賞&アカデミー賞のW受賞を成し遂げたビリー・アイリッシュ。進化を続ける彼女のレッドカーペットルックの変遷を振り返る。


ビリー・アイリッシュのレッドカーペットルックは“自己表現”

エンターテインメント界を席巻するセレブリティーが一堂に会す主要アワードのレッドカーペット。参加者たちは、ファッション界のプロフェッショナルから一般のSNSユーザーまで、世界中から何を着てきたかを注目され、その良し悪しを評価される。

(左から)ゼンデイヤ、マーゴット・ロビー、ビリー・アイリッシュ、アリアナ・グランデ、エマ・ストーン、ユージン・リー・ヤン/photo by Getty Images
(左から)ゼンデイヤ、マーゴット・ロビー、ビリー・アイリッシュ、アリアナ・グランデ、エマ・ストーン、ユージン・リー・ヤン/photo by Getty Images
女性はドレスに身を包むものという固定観念は払しょくされつつあるが、それでもほとんどの女性参加者は有名人気ブランドの可憐なドレス姿で優雅に登場する。場違いなドレスアップは批判の的にもなり、レッドカーペットでどうカメラに映るかは、キャリアにも関係してしまう。

フィービー・ブリジャーズ、ビリー・アイリッシュ、デュア・リパ、テイラー・スウィフト、ドージャ・キャット、ノア・サイラス/Photo by Getty Images
フィービー・ブリジャーズ、ビリー・アイリッシュ、デュア・リパ、テイラー・スウィフト、ドージャ・キャット、ノア・サイラス/Photo by Getty Images
そんな中でビリーは、デビュー当初から「ファッションは自分自身が誰であるかの表現だ」と主張するようなレッドカーペットルックを貫いてきた。22歳になった今もその挑戦を諦めないビリーは、我々の価値観を更新するための一筋の光のようにも見える。

バギースタイルを貫いた反骨精神の10代

ビリー・アイリッシュ/photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/photo by Getty Images
デビュー当初、10代の頃のビリーといえば、身体のラインを見せないオーバーサイズのストリートファッション的コーディネートがレッドカーペットでも当たり前。15歳でデビューした天才ソングライターの反骨的な姿は世界中に大きなインパクトを与えた。

ビリー・アイリッシュ/photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ(Photo by Getty Images)
ビリー・アイリッシュ(Photo by Getty Images)
17歳にして「bad guy」を世界に轟かせた彼女は当時、ヴィトンを着ても、グッチを着ても、シャネルを着ても、ルーズなパンツスタイルを貫き”bad guy”を体現。その姿は、常識への若き抵抗のように見えた。

ビリー・アイリッシュ/photo:Getty Images
ビリー・アイリッシュ/photo:Getty Images
ビリー・アイリッシュ/photo:Getty Image
ビリー・アイリッシュ/photo:Getty Image
そして「服の下がどうなっているのか分からなければ、誰もやせてる、太ってる、お尻がある、お尻がないなんて言えない」。これは当時の彼女が選択したボディシェイミング(体系批判)への対処方法でもあった。

大胆なボディラインの解放 体型への偏見に「気にしない」姿勢

ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
しかし20代を目前にビリーは、素肌やボディラインを大胆にあらわにし始める。雑誌のグラビアや、ファッションの祭典「メットガラ」、アワードのレッドカーペットで胸元を隠さず、コルセットでくびれを強調した女性らしいドレスを頻繁に着用するようになった。

ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
多くのファンを驚かせたが、これは大人になったビリーがまさにやりたいファッション表現だったのだろう。バギースタイルを貫いていた彼女がボディラインを主張させること自体が、全力の自己肯定のようだった。

ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
素肌を積極的に見せるようになったビリーは、あからさまに性的に消費される機会が多くなる。SNSで「Billie Eilish」と検索すれば体型があらわになったビリーの写真が上位に多数上がり、ドレイクのアルバム「For the Dogs」にはフィーチャリング参加したリル・ヨッティが「彼女はビリー・アイリッシュみたいな巨乳」とラップする「Another Late Night」が収録された。その是非については議論の余地があるが、彼女自身はこのことを「気にしたことがない」と明かしている。体型についてとやかく言われたくなかった彼女が、それを過去のものとして新たな可能性を広げたのだ。

「What Was I Made For?」と共に迎えた新なフェーズ

そんな紆余曲折を経たビリーは、女性の体の権利についてメッセージを提示する「バービー」のために「What Was I Made For?」を書き下ろした。ビリーと兄フィニアスは、完成前の映画を見て感動し、一夜にして曲の大部分を完成させたという。理想的な女性の象徴でもあるバービーが「私は何のために作られたの?」と自身の存在価値について自問自答する同曲。MVでは、ビリーがミニチュアになった歴代のレッドカーペット衣装を並べたあと、箱の中にしまい込んでしまう姿が描かれた。

ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
こうしてビリーは、レッドカーペットでのコーディネートも“過去最高”と一部で言われる新たなフェーズを迎えた。2022年頃から頻繁に彼女のスタイリストを担当しているアンドリュー・ムカマルの影響が大きい。アンドリューは「バービー」の主演マーゴット・ロビーのプロモーション時の全スタイリングを担当した人物だ。

女性的でも男性的でもありどちらでもない自分らしさの追求

アンドリューのもと、22歳のビリーによる自分らしさの表出はより洗練された。フェミニンとマスキュリン、ガーリッシュとボーイッシュをミックスさせ、そのどちらでもないビリー・アイリッシュ自身を表現するファッションジャンルを構築したにようにも見える。ビリーは昨年11月にインタビューで「肉体的にも女性たちに惹かれる」「正直に言って自分を女性だと感じたことがない」と自身のセクシャリティーを打ち明けている。

ビリー・アイリッシュ/photo:Getty Image
ビリー・アイリッシュ/photo:Getty Image
ビリー・アイリッシュ/photo:Getty Image
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特に絶賛された「ACADEMY MUSEUM GALA 2023」でのコーディネートは、上半身は女性らしい体型を強調しつつ、ボトムスはスカートにも見えるパンツスタイルを合わせ、都会的なスーツスタイルにレトロなストールを顔に巻いて秀逸なコントラストを見せた。

ビリー・アイリッシュ/photo:Getty Image
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ビリー・アイリッシュ/photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/photo by Getty Images
アンドリューは、トレンドの色使いやアイテムを用いつつ、ビリー・アイリッシュ以外の何者でもないスタイルを完成させる。トレンドのコルセットドレスもワイシャツをインナーとして合わせることでジェンダーミックスのムードに。ゴールデングローブ賞やアカデミー賞では同じくトレンドのスクールガールスタイルを取り入れたが、ここでもシルエットをあえて崩すことで誰もが納得するビリーらしさにつなげている。

今年のグラミー賞や、「SCREEN ACTORS GUILD AWARDS 2024」、「FILM INDEPENDENTS SPIRIT AWARDS 2024」では少しオーバーサイズのパンツスーツルックにネクタイを巻いたボーイッシュなスタイルを立て続けに披露。ネクタイ×シャツという男性的と思われていたスタイルは、彼女の新たなアイコニックなコーディネートになっている。

ビリー・アイリッシュ/photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
ビリー・アイリッシュ/Photo by Getty Images
反骨精神たっぷりのバギースタイルからスタートしたビリーによるレッドカーペットでの挑戦は、年齢やキャリアによって形を変えながら進化し続ける。TPOやパブリックイメージを気にせず自分を表現するというその姿勢が、レッドカーペットルックの価値観を更新し続ける希望となるのではないだろうか。(modelpress編集部)
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