【ランキング】アガサ・クリスティにあなたも騙される...『名探偵ポワロ』の秀逸トリック TOP10

【ランキング】アガサ・クリスティにあなたも騙される...『名探偵ポワロ』の秀逸トリック TOP10

2020.06.30 16:00

今年で生誕130年を迎える"ミステリーの女王"アガサ・クリスティ。彼女が生んだベルギー人の名探偵エルキュール・ポワロが手掛けた事件には珠玉のミステリーが多数あり、いまだに映像化されるなど根強い人気を誇っている。そんなポワロの決定版と言われる人気ドラマ『名探偵ポワロ』を元に、クリスティが仕掛けた数あるトリックの中でも秀逸なものを、クリスティ作品の映像・書籍を網羅してきた筆者が独断と偏見でランク付け! あなたはこれらを解くことができただろうか?(※『名探偵ポワロ』と原作のネタばれを含みますのでご注意ください)

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10位:第2話「ミューズ街の殺人」

鍵のかけられた部屋の中から、ある女性の射殺死体が見つかる。警察は自殺と考えるが、ポワロは遺体が発見された部屋にある妙な痕跡に気づき...というミステリー。死んだ女性の利き腕が左ではないなどと偽装することで自殺を殺人に見せかけ、その容疑で彼女を死に追い込んだ恐喝者を法的に葬る(絞首刑)というトリックは、第24話「スズメバチの巣」でも似た方法が使われかけた。今回は自殺した女性本人が罠を仕掛けたわけでなく彼女の友人が仇討ちのためにとっさに行動したというものであり、前もって計画したものではなかったにもかかわらず、ポワロをして「実に鮮やかで巧妙な殺人(正確には殺人未遂)」と言わしめている。

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9位:第32話「雲をつかむ死」

乗客乗員が10人ほどしかいなかった小型飛行機の中で金貸しの女性が死んだ。首に小さな刺し傷のあった彼女に死をもたらしたのは機内で飛んでいた蜂か、それとも...。第64話「オリエント急行の殺人」で各乗客が個室にいた急行列車よりもずっと狭い、一つの空間にポワロを含めた全員がいる中で、白昼堂々どうやって殺したのか? 真相は、みなが見落としがちな人物(添乗員)に変装して近づいたというもので、第36話「黄色いアイリス」などにも似た手口が使われている。容疑者の所持品に犯人に繋がるヒントが隠されているという意味で、エラリー・クイーンっぽい趣向も楽しめる。犯行動機がやや強引で後半は冗長だが、最初の犯行の巧みさは特筆もの。ポワロがさりげなく犯人を罠にはめるところもお見逃しなく。

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8位:第46話「アクロイド殺人事件」

富豪のアクロイドが刺殺された。探偵業を引退し、事件の起きた村で隠居生活を送っていたポワロが捜査に関わることになるが...。原作は出版当時、アンフェアではないかと議論を呼んだ問題作で、クリスティを一躍有名にした。クリスティ作品のランキングにはほぼ必ず選ばれ、本人もお気に入りとして挙げたことがある。その原作ではナレーターを務める医師がヘイスティングスのような単なる語り部かと思いきや、実は犯人で、自分の犯行に関する記述を削る形で語っていた点が問題視されたわけだが、後世に多大な影響を与えており、今では推理小説に限らず多くの作品でその手法を見ることができる。機械を使ったトリックも当時としては新しかったか。残念ながらドラマでは原作通りの映像化はできなかった模様で、ナレーターが殺人犯であることは示しつつ、その正体は終盤まで分からないように工夫されてはいるが、いかんせん原作と同じ効果を生んでいるとは言いがたい。

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7位:第20話「スタイルズ荘の怪事件」

クリスティの処女作でありポワロの初登場作。当時20代半ばだった彼女が「誰にも解けないミステリーを書いてみせる」と豪語して書いただけあり、デビュー作とは思えないほど巧妙ながらも不自然ではないトリックが使われている。のちの"ミステリーの女王"が初めて仕掛けた謎は、金持ちの老婦人が殺され、犯人は家族の誰か...というのちにクリスティ十八番となる展開。捜査の基本として真っ先に容疑者として疑われる夫は当日留守にしており犯行は無理かと思われたが、犬猿の仲と思われていた相手と実はグルで、共犯で彼女を殺したというのもお得意のパターンだ。神経質なポワロの癖をきっかけに重要な手がかりが隠されていることに気づくなど、彼の気質がうまく謎解きに生かされている。また、第一次世界大戦中に薬剤師の助手として働いた彼女の薬物に関する知識がすでにこの時から盛り込まれている点にも注目だ。

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6位:第31話「ABC殺人事件」

ある日ポワロのもとにABCと名乗る謎の人物から不審な手紙が届き、その文面の通りにアルファベット順に人が死んでいく、という連続殺人が発生。ポワロは事件の関係者とともに新たな犯行を防ぐべく乗り出すが...。単に自分の殺したい相手だけを殺すと利害関係から自分が犯人だと見破られてしまうため、無関係の人たちも殺すことで連続殺人事件に仕立てて「殺人で殺人を隠す」という犯人の考え方は、巧妙と言うよりも恐ろしいと言うべきか。犯人が手紙を送った先が警察でなくポワロだった理由も、別に作品としての盛り上がりを考慮したわけでなく、手紙が間違って配送されるよう仕組んで本命の殺人の時間を稼ぐためと筋が通っており、綺麗にまとまっている。

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5位:第53話「ホロー荘の殺人」

妻がいながら浮気を繰り返していた医師ジョンが射殺された。犯行直後に現場に駆けつけたポワロを含む人々は、血を流して横たわるジョンの横でその妻ガーダが銃を手に握っている姿を目撃。事件は単純に解決するかに思われたが、妻が持っていた銃を調べてみると犯行に使われたものではないことが判明し、肝心の凶器は行方不明。そんな中、ジョンと不倫関係にあった彫刻家のヘンリエッタが怪しげな行動を繰り返し...。様々な女性と浮気していた夫が堪忍袋の緒が切れた妻に殺され、それを知った愛人が罪滅ぼしの気持ちもあって妻をかばっていたという、ややこしい人間関係。ガーダは周りからボーッとした性格だと思われているものの意外と頭が働くという設定で、夫を撃った後、別の銃を構えていたのだ。そこに、ポワロも一目置く頭脳の持ち主であるヘンリエッタら親戚が揉み消しに協力したことで、事件は難航することに。凶器の銃やそのホルスターがどこに隠されていたかについては映像の中にヒントが潜んでいる。

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4位:第52話「ナイルに死す」

こちらも何度か映画化されている有名な話。財産家の若き美女リネットがナイル河を下る豪華客船でのハネムーン中に殺された。彼女に恋人を奪われたかつての女友達も乗船していたが、その彼女にもリネットの夫にも犯行は不可能で...。入り組んだ謎に挑むことになったポワロをあざ笑うかのように、船内で第二、第三の殺人が起きる。第20話「スタイルズ荘の怪事件」のように、被害者の夫と元友人がお金目当てに手を組んで殺したというのが真相。逆上した友人がかつての恋人であるリネットの夫を撃って足に大怪我を負わせたかに見えたのは二人の演技(空砲)で、医者を呼びに行ったりして人が周りにいなくなった隙に夫が妻の寝ている船室へ急いで向かい彼女を射殺した後、元の場所に戻って自らの足を撃ち、偽装していた。出来事の起きた順番が実は違うというのもクリスティお得意のトリックだ。第32話「雲をつかむ死」や第64話「オリエント急行の殺人」と同じ乗り物の中での殺人事件だが、芝居を打っている間に本物の殺人が行われるという点ではミス・マープルの「魔術の殺人」に近い。

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3位:第62話「三幕の殺人」

ポワロも出ていたカクテルパーティで、敵などいないはずの牧師が死んだ。被害者の飲んだカクテルに毒が入っていたかと疑われたが、飲み物はランダムに配られていた上、グラスから毒薬は検出されず、自然死と判定される。しかし再び同じ方法で人が死に、ポワロが真相解明に乗り出す。どちらも殺し方としては、飲み物に毒を入れて殺した後、みなが死体に気を取られている隙にグラスを別のものと取り替えていたという、比較的単純なトリック。最大の謎は、なぜ敵がいないはずの牧師が殺されたのか、いかに彼に毒入りの飲み物を飲ませたのかというものだが、犯人が俳優なだけあって、最初の殺人は二番目の本番に向けた単なるリハーサルだった(なので死ぬのは誰でも良かった)というのはクリスティらしい大胆な発想だ。

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2位:第64話「オリエント急行の殺人」

何度も映画化されているように、クリスティ作品で特に有名なトリックの一つ。大雪によって立ち往生となった急行列車の中に閉じ込められた多種多様な乗客たち。そのうちの一人が刺し殺され、偶然乗り合わせていたポワロはほかの乗客たちに話を聞いていく...。実は被害者はある誘拐殺人事件の犯人で、その事件によって人生を狂わされた12人が共謀して復讐していたという奇抜なプロット。ポワロと彼を欺こうとする乗客たちとの尋問シーンはもちろん、真相に辿り着いたポワロが犯人たちを法の手に委ねるか否かで苦悩する点も見どころだ。

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1位:第56話「葬儀を終えて」

金持ちの老人リチャードが死んだ。その葬儀で親族が集まった時、老人の妹のコーラが「兄は殺された」と言い出す。翌日、妹は無残な死体で発見され...。クリスティ王道のパターン、金持ちが殺され、その家族の中に犯人がいるというお得意のやり方かと思わせておいて、それを逆手に取ったところがとにかく巧い! 実際は老人が殺された云々を発言したのはコーラではなく彼女に化けたコンパニオン(話し相手)で、被害者が実際の価値を知らずに所有していた美術品を奪うために彼女を殺し、実際は自然死だったリチャードの殺人話をでっち上げることで自分への嫌疑を逸らそうとしていたのだった。アリバイ作りなどのためにキャラクターが変装するのはクリスティ作品の常套手段で、第33話「愛国殺人」や第47話「エッジウェア卿の死」でも使っているが、小説と違って映像作品だと変装であることがバレてしまうことが多々あるのに対し、今回は被害者が殺される前も後もろくに顔が映らないこともあって変装していたことが露見しにくいことも作品の完成度に寄与している。


今回はより入り組んだプロットを重視したため長編が多くなったが、『名探偵ポワロ』には短編も含めてほかにも秀逸なトリックは多数ある。そうしたトリック以外にも、ポワロや相棒のヘイスティングス、秘書のミス・レモン、ジャップ警部が綴るちょっとした日常のエピソードも楽しんでほしい。

Photo:

『名探偵ポワロ』
© ITV PLC

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