『四代目 高橋屋』が銀座に進出! あの芸能人にも愛される老舗のうなぎ専門店

2021.09.15 18:00

こだわりがつまった店内はまるで、“小さな美術館”!

江戸時代、埼玉県・杉戸は多くの旅籠(はたご)がひしめく宿場町として知られていた。『うなぎ割烹 四代目高橋屋』(以下、『高橋屋』)は、初代が旅人のために家の近くで獲れるうなぎをふるまい、「うなぎの天ぷら」を考案して評判となったのが始まり。

二代目が『高橋屋』を名乗って店を拡大し、三代目が室町三井家によって設立された名割烹『松の茶屋』で修業して現在の料理のベースを確立した。

そして四代目が看板料理であるうなぎの蒲焼きにさらに改良を加え、歌舞伎界にもファンを拡大。先代からの念願だった銀座進出を果たし、『銀座 四代目 高橋屋』をオープンした。

場所は「歌舞伎座タワー」から徒歩1分ほどのビルの4階。建築家・黒川紀章氏の愛弟子である松井大輔氏の設計による店内は、一歩足を踏み入れた瞬間から黒川イズムを感じさせる、スタイリッシュで研ぎ澄まされた空間だ。

決して広いとはいえない店内だが、2面に大きく切り取られた窓から銀座の三原橋交差点方面が一望でき、ゆったりとした雰囲気。座ると動きたくなくなるほど座り心地のいい座面の大きな皮張りの椅子、カッシーナ製の優美なペンダントライト、なめらかで美しい楓材のテーブルとカウンターが設えられている。

飾り棚には、北大路魯山人の作品が2点。食器や什器はすべてがオリジナル品か作家物……と、まるで小さな美術館のような空間だ。

老舗四代目の“総料理長”と、一流和食店出身の若き“料理長”がタッグ!

料理長の田中翔児さん(写真上・左)と、総料理長で『高橋屋』四代目の高橋明宏さん(同・右)。

高橋さんは築地の割烹『海恵(けいけい)』(※現在は閉店)で修業した後、父から直接『松の茶屋』の料理の奥義を受け継いだ。幼い頃から両親に銀座によく食事に連れてきてもらい、銀座への憧れを育んでいたそうで、「この店は、『高橋屋』のプライドを磨く店にしたい。ですから本店以上に食器にもしつらえにもお金をかけて、こだわり抜きました」と意気込みを熱く語る。

田中さんは高校時代から料理人を志して地元の『高橋屋』に入り、『銀座 小十』では日本を代表する気鋭の料理人・奥田透氏から直々に薫陶を受け、パリ支店『France Paris 奥田』でさらに腕を磨いた注目の若手料理人。伝統と革新を象徴する2人の料理のマリアージュも、『銀座 四代目 高橋屋』の楽しみだ。

また2人の背景に見えている松本幸四郎・市川染五郎父子から贈られた開店祝いの花からもわかるように、『高橋屋』は歌舞伎界に熱烈なファンが多いことでも有名。埼玉県・杉戸の本店から歌舞伎座に届ける「うな重」は年間数百食分にものぼる。明治座でも歌舞伎の公演がある時は、歌舞伎座、杉戸の本店、明治座と二往復することもあるという。二代目・市川猿翁(えんおう)は、高橋さんを自宅に呼んで料理を作らせたこともあるほど。

前菜、お椀、鉢物… すべては「うな重」をおいしく味わうための“助走”として計算されている

『銀座 四代目 高橋屋』で提供するコース料理はうな重以外に9品が付く「銀座 懐石」(19,800円)、8品が付く「四代目 懐石」(14,800円)、7品が付く「PARIS 懐石」(9,800円)の3コース。その中から今回は 「PARIS 懐石」を紹介しよう。

「うなぎの前のお料理はすべてうなぎを最高に美味しく味わっていただくための“助走”と考え、一つひとつが主張しすぎないよう心掛けています」と田中さん。

一品目は、前菜の「豆乳の湯葉仕立て 生ウニ乗せ」(写真上)。濃い豆乳にだしをきかせ、生ウニを乗せた一見シンプルな料理だ。

スプーンを入れると、ウニの下から翡翠のように鮮やかな緑色の茶豆があらわれる。白、橙色、緑と色の自然の持つ鮮やかな色味が、器の渋く幽玄な色味とあいまって、ためいきが出るような美しさ。そして、ほとんど塩味を感じさせない豆乳の自然でほのかな甘みが、ウニの野性的な磯の香りとうまみ、茶豆の甘みを最高に引き立てていることにも驚く。

海老しんじょうに冬瓜とマイタケをあしらった「お椀」(写真上)。こちらも汁は上品な淡い味付けだが、大ぶりに切ったエビのプリプリした食感と、なめらかなすり身のコントラストが絶妙だ。

椀の蓋裏に描かれた蒔絵(まきえ)は、湯気で濡れて桜と花火がいっそう艶やかに輝き、箸を取るのも忘れて見入ってしまうほど。花火に桜とはめずらしい取り合わせだが、聞けば『高橋屋』本店の広大な庭には店を構えた当時から巨木の「百年桜」があり、それにちなんで一年を通じて桜の器を使っているとのこと。

最も驚くのは、3品目の小鉢「黒アワビと野菜の炊き合わせ」(写真上)。黒アワビのやわらかさ、素材一つひとつの風味の鮮烈さ、そして最後に絞り込んだスダチの香りと酸味……。こんなに爽やかな炊き合わせがあったのか、と衝撃を受ける。

熊本産の黒アワビ、熊本産のツルムラサキ、肉厚で皮がやわらかい赤ナス、フルーツトマトを別々に炊き、炊きあがるタイミングをきっちり合わせて仕上げることで、すべてのうまみが融合してお互いを引き立て合うのだという。

「うなぎは脂が多いので、爽やかな酢の物のような炊き合わせにしています。汁にすべてのうまみと風味が溶け込んでいますので、ぜひ汁まで飲み干してください」という田中さんの言葉どおり、遠慮せずに器に口をつけて、最後の一滴まで味わってほしい。

「奇をてらわず、一つひとつの基本を丁寧に。それが『小十』で学んだスタイルです」と田中さん。『小十』では最初の1年間はサービスを担当し、いきなり奥田氏の“カウンター脇”を任された。身近で多くのことを学んだが、フランス店で働き海外の多彩な料理と接する機会を持ったことで、あらためて和食のすばらしさに開眼したと語る。

目に見えない小骨を毛抜きで抜き切るから味わえる、究極のふわとろ感!

いよいよ、「うな重」(写真上)の登場! 季節の草花が描かれた輪島塗りの重箱、日月紋の廬山人写しの会津塗りの椀も特注品。箸を取る前に思わず、しみじみ見入ってしまう美しさ。

蓋を開けると、ふんわり広がるうなぎの香り。ミルで削る香り高い山椒をかけ、身を持ちあげると、とろけそうなやわらかさが箸から伝わってくる。口に入れるとふわふわで、どこまでもなめらか。“クリーミィ”と表現したくなる。

それもそのはず、『高橋屋』では蒸しあげた後、身の中に潜む目に見えるか見えないかほどの小骨一本一本を、職人が毛抜きで抜き取っているのだ(写真上/写真提供『高橋屋』)。

この小骨は細かすぎて生の状態では抜くことができず、火が通って初めて抜くことができる。その数、なんと一串に150本から200本ほどで、熟練の職人が集中しても2分から5分はかかる。四代目の高橋さんが冷めたうなぎ蒲焼を食べて、小骨の微妙な引っ掛かりを感じたことがきっかけで始めたという。

「小骨を抜くのは確かに大変ですが、身のなめらかさに歴然とした差が出ます。とくに冷めた時に食べるとその差は大きい。うなぎは冷めた状態で召し上がるお弁当の需要が多いので、手間はかかってもやる意味があると思って始めました」(高橋さん)。採算度外視のこの丁寧な仕事により、『高橋屋』のうなぎのファンが一気に拡大した。

身はどこまでもクリーミィだが、炭火の上で一瞬も手を止めずに返し続ける“百手返し”(写真上・左)で、うなぎ全体が均一な美しい黄金色にふくよかに焼き上がる。焼きがしっかりしているからこそ、身のふわとろ感がより引き立つのだ。

たれはあっさりしていてしつこくない。そして一般的な炭火焼きのうなぎだと一瞬あるかなきかに感じるだけの炭の香りが、ふんわり長く余韻として残るのも特徴だ。

この香りにも秘密があり、炭の香りを移すために、真っ赤に熾(おこ)した炭を週に一度くらいの頻度で、たれに入れるそう。このたれを一度味わうと、他の店では炭の香りが弱く、物足りなく感じるだろう。

2品の甘味まで、完璧にうなぎの美味しさを引き立てる

甘味は2品付く。1品目は「マスカット、ピオーネ、梨のミントゼリー掛け」(写真上)。「甘味は手をかけようと思えばいくらでもかけられますが、あくまでもうなぎの余韻を楽しむのが役割。旬の果物を盛り合わせて、ゆるく仕上げたミントゼリーで、うなぎの脂をさっぱり落としていただきたいと考えました」(田中さん)。

甘味2品目は、食後のお薄代わりの「抹茶のソルベ」(写真上)。底にひと口ほどの上品なこし餡を敷いている。乳製品を使用していないので、うなぎの脂がすっきり流されるよう。

助走から本番、そして余韻と、まさにうなぎを最高に美味しく味わうために考え抜かれたコースが堪能できるのだ。

単品で注文するなら、ここでしか味わえない「二段重」がおすすめ!

単品で味わいたい時には、天然直焼うなぎを別皿に盛り合わせた「天然熟成特上うなぎ御膳」(12,800円 ※要予約)、「うなぎ 二段重」(8,800円)、「特上うな重」(6,500円)、「うな丼御膳」(4,500円)がある。すべて吸物と香物が付き、プラス1,000円でコースと同じ甘味2品を付けることもできる。

中でもぜひ一度味わっていただきたいのが、関西風の直焼きと関東風の蒲焼の両方が味わえる、「うなぎ 二段重」。上段に関西風の直焼き、下段に関東風の白蒸ししてから焼き上げたうなぎがはさんである。直焼きは蒸しの工程を入れないため、脂がのったうなぎ本来のコクのある味わいを楽しめる。

関西風の直焼きうなぎを提供する店はほかにもあるが、小骨を抜いて直焼きしている店はここだけ。小骨を抜くとその穴から適度に脂が落ちるので、直焼きの脂っぽさが苦手な人も美味しく食べられる。『銀座 四代目 高橋屋』だけの「関東直焼き」ともいえる逸品だ。

食べ掛けのうなぎも、持ち帰ることができる!

同店のHPには、「懐石コース料理の途中で【最後のうな重】がお腹に入らない予想が付きました時点でお知らせ下さい。丸々のお持ち帰り、半分のお持ち帰り、どちらも対応させていただきます」と記されている。上の写真手前は、一人分の持ち帰り、奥は半分食べた場合の持ち帰り。高級店でありながら、こうした気どらない親身な親切さがあることも、ファンが多い理由だろう。

「銀座という一等地で、『星付きの店』というタイトルを持ちたいと思ったことも銀座に出店した理由のひとつ。そしてもうひとつの理由は、誰かを想う大切な日に使ってもらえる特別な店を、銀座にも出したかったからです」と高橋さん。本店には、かつて結婚式などの大切な日に使ったお客さんが、50年ぶり、60年ぶりに懐かしんで訪れることもめずらしくないという。

「銀座は日本各地から美食を求めて多くの人が集まる街。その銀座でも本店と同じように、長く愛される店にしていきたいんです」と高橋さんは語る。

【メニュー】
PARIS 懐石 (前菜・お椀・小鉢・うな重・味噌汁・香物・甘味)9,800円
うなぎ 二段重 (上段<直焼>・下段<蒸焼>・吸物・香物)8,800円

※ 上記価格のほかにサービス料(10%)。
※ コース料理に限り、皆様、同じコースでお願いしております。
※ 本記事に記載された情報は、取材日時点のものです。価格は税込みです。

撮影: 佐々木 雅久

銀座 四代目 高橋屋

〒104-0061 東京都中央区銀座4-12-1-401
03-3547-0021
11:30~16:00、17:00~22:00

https://www.takahashiya.org/

この記事の筆者:桑原恵美子(ライター)

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