中華『桃の木』が紀尾井町に移転!素材とスパイス使いの巧みな技に心を奪われる、東京を代表する中華の名店
2020.08.20 18:00
東京を代表する中華の名店が、『赤坂 桃の木』として紀尾井町に移転!
慶応義塾大学三田キャンパス近くの閑静なエリアにあった中華料理店『御田町 桃の木』。オープンからわずか5年、『ミシュランガイド東京』で一つ星を獲得。『ミシュランガイド東京2015~2020』では6年連続二つ星を獲得し、瞬く間に予約の取りにくい超人気店になった。
東京・三田で15年愛され続けた『御田町 桃の木』だが、永田町駅直結の「東京ガーデンテラス紀尾井町」へ、名前も新たに『赤坂 桃の木』として移転したのは2020年3月のこと。
「今までも何度か移転のチャンスはありましたが、この場所の窓からの景色を見て、とても緑が美しく、心に残り…。そして今年、ついに移転しました」と新店舗のきっかけを教えてくれたのは、オーナーシェフの小林武志さん(写真下)。
しかし、今までよりずっと広い店舗に移動したとはいえ、席数はほとんど変えていないという。ゆったりした空間使いが、贅沢な気分を一層盛り上げる。
さらには、コースの価格も同じまま。
「『桃の木』はあくまでも『桃の木』。あえてそのままを守ろうと思い、お店の基礎となる部分は引き続き変えずにいます」と小林さん。
そんな小林さんの経歴はというと、辻調理師専門学校を卒業後、辻調理技術研究所で8年ほど講師を務めたあと、吉祥寺『知味 竹爐山房』をはじめ、数軒の中華料理店で研鑽を積み、2005年に『御田町 桃の木』を開店。
小林さんが提供するのは、野菜や魚介類を多用したシンプルな味わいの広東料理をベースにした、“ボーダレス”な中華料理。
果たしてそれはどのようなものなのか? さっそく新生『桃の木』の料理を見せてもらった。
2日かけてとったスープに浮かぶのは、思いがけない食材を組み合わせた水餃子
1品目は水餃子。馴染みのある水餃子かと思いきや、厨房から運ばれてきた瞬間から、不思議な香りが漂う。それがこちら「ゴルゴンゾーラチーズと海老餡の水餃子」(写真上)。紀尾井町への移転後に、メニューに加わった一品だ。
翡翠(ひすい)色の美しい皮は“青よせ”と言われる和食の技法を用い、緑黄色野菜を練りこんだ自家製のもの。
この皮でやや粗めに刻んだ海老とゴルゴンゾーラチーズを包み、スープで茹で、仕上げにみじん切りにした金華ハムとトリュフオイルで仕上げる。
まずはお皿に顔を寄せると漂うトリュフの香り…。水餃子をひと口噛むと、優しい海老の味わいに濃厚なゴルゴンゾーラチーズの香りが口いっぱいに広がる。スープを飲むと、澄んだコンソメの滋味深い香りが喉をじんわり温める。
これほどまでに、提供時から食べ終わるまで、何層も香りの扉が開かれる水餃子はそうはないだろう。
さらには、この黄金色のスープの作り方にもこだわりが。
まず、スープづくりに使用する鍋は、スタンダードな鉄製のものではなく、金気(かなけ)が出ないようにアルミ製のもの。
その鍋で鶏ガラスープをとり、冷蔵庫に入れてしっかり冷やし、固まった脂分を取り除いたあと、さらに鶏ひき肉と豚ひき肉を加えて煮込み、2日かけてやっと完成するという。
仕上げのスープにも細かく気を使う姿勢が、ここまで高いレベルの一皿を作り上げるのだとおもわず納得。
揚げたピータンに染み込むのは、1㎜以下に細かくカットした野菜のソース
次は「揚げピータンの油淋ソースがけ」(写真上)。そのままでもおいしい高品質のピータンをさらに揚げるという、実に手間のかかる一品。その理由を小林さんに問うと「揚げてから油を切ることで、ピータンの表面がちりめん状になり、ソースの絡みがよくなるんです。香ばしさも加わるので、よりおいしく仕上がります」とのこと。
調理過程を見せていただくと、中華鍋の上でピータンをカットしながら揚げている。なんでも、中の卵黄がレアなので、手のひらで切ったら即揚げないと崩れてしまうのだそう。
小林さんはどの食材も手間を惜しまず、その味を最大限引き出すために丁寧に仕上げている。例えばソースもそうだ。
アップで見ると香味野菜がごくわずか1mmにも満たないような細かさにカットされているのがわかるだろうか? これも野菜の繊維を壊さないよう、叩いたりすりおろしたりせず、香りと味を高めるための工夫だという。
ここまで手間をかけたこの一品、ひと口かじるとザラっとしたピータンの食感と卵黄のまったりしたコク、それをすっきり仕上げるソースの爽やかな組み合わせが極上だ。
唐辛子まみれのお皿の中には、意外な食材が!
最後に運ばれてきたのは、鉢にこんもりと盛り付けられた唐辛子の山! メイン食材はこの山の中に潜んでいる。「辣子鶏(ラーズージー)」などの名前で呼ばれる、唐辛子まみれの鶏肉料理を見たことはないだろうか? こちらはその茄子バージョン。「茄子のから揚げ」(写真上)だ。
ここにも、小林さんならではの調理方法が。
まず、茄子は油の温度差を均一に揚げるため、かき混ぜながらカリッと色よく揚げ、しっかり油を切って落ち着かせる。このひと手間で、後味が軽く仕上がるのだそう。
そして山椒の粒と唐辛子を乾煎りして香りを引き出し、そこに薬味などを足しながら茄子を戻し、味を調える。
この間、どこから食べても味が均一になるように、手を休めず鍋をあおり続けることが大切だそうだ。
熱々を供されると、山椒の香りがテーブルいっぱいに! その香りだけで、厨房から席にサーブされるまでのルートがわかるほど。
いかにも辛味を感じる見た目だが、茄子をいただくと、衣のクリスピー感と中のとろけるような食感のコントラストに驚く。言われないと茄子だとわからないほどの新食感!
山椒と唐辛子も、いざ食べてみると意外なほどふんわり心地よい塩梅。この組み合わせの相性のよさに、いくつでも食べられそうなほどだ。
シェフ自ら作ったワインリストは、どれも『桃の木』の料理にマッチ
『桃の木』の料理に合うお酒は…と小林さんに伺うと、「ワインです!」と即答。無類のワイン好きという小林さん、料理に合わせて、自らセレクトしたワインリストを作ったというから驚きだ。フレンチならともかく、中華料理店でシェフ自らワインリストを作るとはかなり珍しい!
料理を作った張本人が選んだワインと中華料理の組み合わせは、ぜひ試してほしい。
食材選びから仕上げまで、細やかな心遣いで作り上げる新生『桃の木』の料理
中華料理には必須であろうと思われるごま油さえ、料理そのものの香りが消えてしまうので使わないというほど、素材そのものが持つ“香り”にこだわった小林さんのボーダレスな中華料理。野菜はその土地や水で味が変わるので、中国由来の野菜は台湾産を選んで使い、魚介類は産地や締め方にもこだわり、魚の蒸し物などの料理にはその日獲れたものを直送してもらうなど、自身の求めるレベルの食材を選ぶことからこだわりを持つ小林さん。
その想いをくっきりと浮かび上がらせるように、テーブルの上で“香り”を放ち、特別なおいしさを開花させる『赤坂 桃の木』の料理。
窓からも新緑の木々が香り立つような新しい店内で、ぜひ新生『桃の木』の味を体感してほしい。
【メニュー】
▼コース
<ランチ>
・シェフお任せコース 12,500円
・ランチスタンダードコース 15,000円(ディナーコースと同様)
<ディナー>
・スタンダードコース 15,000円
・フカヒレの醤油煮込みコース 22,000円
・フカヒレ、北京ダックコース 30,000円
・フカヒレ・アワビコース 50,000円
・佛跳牆(最高級乾物スープ)入りおまかせコース 100,000円
▼ドリンク
日本酒 一合 1,000円~
他、ビール、紹興酒、中国茶、ソフトドリンクなどあり
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税・サ別です
赤坂 桃の木
東京都千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス紀尾井町3F050-3155-1309(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
土・日・祝
ランチ 11:30~14:00
(L.O.13:00)
17:30~22:00
(L.O.21:00)
水曜日
その他臨時休業あり
https://r.gnavi.co.jp/1py8ar4k0000/
この記事の筆者:佐川 碧(ライター)
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