疑えば疑うほど引っ込みがつかなくなった。俺が彼女に謝れなかった、自分だけが知る理由
同期が送ってきた一枚
「駅で彼女さん見かけたよ!男の人と歩いてたから声かけなかったけど」
同期は彼女の会社がある駅の近くに住んでいて、俺の誕生日の集まりで一度だけ彼女に会ったことがありました。彼女の隣には、黒いコートを着た男の後ろ姿も写っていました。2人の間には少し距離があって、並んで話しているだけにも見える写真です。
同僚だろうと考えることもできたのに、気づけばSNSを開いていました。大学のサークルの先輩で、彼女の元彼でもある人のアカウントを、卒業してからもフォローしたままにしていたのです。一番上の投稿は、彼女の会社がある駅のすぐ近くのカフェで撮られたものでした。
「今日、元彼に会ったでしょ」
「会ってないよ?どうしたの急に」
「だけ」が読めなかった
写真を送り、誰が撮ったのかという問いには答えずに、隣にいた男のことを問い詰めました。同期に見られていたとは、言いたくなかったのです。返ってきたのは、こんな説明です。
「会社の先輩だよ。駅まで一緒に歩いただけ」
その一文を見て思い出したのは、前の彼女と付き合っていた頃の自分でした。ほかの女性と会っていた日、俺は「仕事帰りに同僚と軽く寄っただけ」と送っていたのです。結局その嘘がばれて、関係は終わりました。
自分がそうだったから、「だけ」という言葉を素直に読めない。気づけば彼女の返事を、昔の自分の文面に重ねていました。
「ふーん。先輩ってことにしとけば済むと思ってる?」
「済むとかじゃなくて、本当に先輩なんだって」
「本当は元彼の方が好きなんじゃないの?」
引っ込みがつかなくなって
それを送ったあとで、同期にも連絡しました。
「隣の男の人って、どんな感じだった?」
「黒いコートの人。改札の前でお互い頭下げて別れてたよ。え、なんかまずかった?」
頭を下げ合って別れる相手なら、仕事の帰り道と考えるほうが自然でした。元彼の投稿も、同期の連絡よりずっと前に載せられたものです。
彼女はたぶん、本当のことを言っている。そう分かりかけた頃には、次のメッセージが届いていました。
「なんでそうなるの?先輩の部署も名前も言えるよ」
読んだまま、しばらく画面を見ていました。ここで謝れば、俺の勘違いだけが残ってしまう。疑えば疑うほど引っ込みがつかなくなって、打ったのはこんな一文でした。
「別に。疑われるようなことしなきゃいいだけじゃん」
そして...
「謝ってはくれないんだね」
既読をつけたまま、入力欄に「ごめん」と打ちました。送信ボタンの上で親指を浮かせて、また消しました。謝れば、なぜあそこまで疑ったのかも話すことになる。前の彼女にしたことを知られるのが、怖かったのです。
同期には「大丈夫」とだけ返して、彼女とのチャット画面を開いたまま、スマホを伏せました。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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