妻の味噌汁を「薄い」と残していた俺→母に作り方を聞いて知った「実家の味」の正体
実家の味を基準にしていました
結婚して1年になります。平日の食事は、妻が作ってくれることが多くありました。ありがたいと思っていました。でも俺は、料理を食べるたびに無意識に実家の味と比べていました。特に味噌汁です。母が作るものは味が濃く、ひと口飲めばすぐに分かる味でした。妻の味噌汁は、それより薄く感じます。最初は、「もう少し濃いほうが好き」と言っていました。そのうち、「また薄い」と言うようになりました。妻が、「薄かったら足していいよ」と言っても、俺は自分で調整しようとはしませんでした。その日も味噌汁をひと口飲んで椀を置きました。そして、「お前の料理よりカップ麺食べてるほうがマシ」と言いました。言った瞬間に、さすがに言いすぎたとは思いました。でも、引っ込めることも謝ることもできませんでした。妻は、「じゃあ、そうして」とだけ返しました。俺は棚からカップ麺を出して湯を注ぎました。そのときは、それで自分の不満を分からせたような気になっていました。
自分の分だけがなくなりました
翌日、帰宅して食卓を見ると、妻の分しかありませんでした。「俺のは?」と聞きかけました。でも前の日に自分で、「カップ麺のほうがマシ」と言っています。何も言えませんでした。それから、俺は自分で夕食を用意するようになりました。コンビニの弁当。総菜。カップ麺。最初のうちは、それでいいと思っていました。好きな味を自分で選べます。でも数日たつと、選ぶものも似てきました。隣では妻が自分で作った料理を食べています。妻の味噌汁の匂いがすると、以前なら「薄い」と思っていたのに、なぜか気になりました。それでも、「また作って」とは言えませんでした。あんなことを言ったあとで、妻が俺の分を作らないのは当然です。だから、自分で実家の味を作ればいいと思いました。母に作り方を聞いて、同じものを作ってみよう。そうすれば、自分が何を求めていたのかも分かる気がしました。
母の味を作るつもりでした
休日、妻が買い物へ出たあと、母に電話しました。「味噌汁って、どう作ってた?」と聞きました。母は、「急にどうしたの」と笑いました。だしや味噌の量を聞こうとすると、「毎回適当よ」と言われました。俺は、「でも、うちの味噌汁ってもっと濃かっただろ」と聞きました。すると母は、「あんたが濃いの好きだったからね」と答えました。「俺に合わせてたの?」。「そりゃそうでしょ。お父さんはもう少し薄いほうが好きだったけど、あんたがよく飲むから濃くしてたの」。その返事を聞いて、これまで妻に言ってきた「薄い」を思い返しました。俺がずっと「実家の味」だと思っていたものは、家の決まった味ではありませんでした。母が俺の好みに合わせて変えていた味でした。それなのに俺は、その味を普通だと思い、妻にも同じものを求めていました。電話を切ったあと、冷蔵庫を開けました。妻が普段使っている分量を書いたメモが貼ってあります。俺は、その通りに味噌汁を作ることにしました。
書かれている通りにだしを入れ、味噌を溶きました。味見をすると、やっぱり俺には少し薄く感じました。いつもの俺なら、ここで味噌を足していたと思います。でも、そのままもうひと口飲みました。これが妻が毎日作っていた味です。俺が「薄い」と言って残していたものを、自分で最後まで作ってみようと思いました。そこへ妻が帰ってきました。「何してるの?」と聞かれ、「味噌汁」と答えました。少し迷ってから、「言っていいことじゃなかった。ごめん」と伝えました。妻はすぐには何も言いませんでした。俺は、母に電話したことを話しました。「母さんに味噌汁の作り方を聞いた」と話すと、妻は「私のじゃなくて?」と聞き返しました。「最初は、実家の味を作ろうと思ってた」と答えました。「でも、母さんに『あんたが濃い味好きだったから濃くしてただけ』って言われた」、そこまで言うと、自分でも情けなくなりました。「ずっと、母さんの味が普通なんだと思ってた。でも、あれも俺に合わせてくれてただけだった」。俺は冷蔵庫のメモを指しました。「だから今日は、これで作ってみた」。
そして...
妻が味噌汁を味見しました。俺も自分の椀へよそいました。妻から、「薄い?」と聞かれました。少し考えてから、「前なら薄いって言ってたと思う」と答えました。「今は?」。「少なくとも、薄いから駄目っていう味じゃなかった」。妻は、「実家と同じにする必要はないよ」と言いました。妻からはもう1つ、「味が合わないなら普通に言って。でも、『カップ麺のほうがマシ』みたいな言い方はもうやめて」と言われました。俺はもう一度謝りました。今は休日に、俺が味噌汁を作ることがあります。妻から、「今日ちょっと濃い」と言われる日もあります。俺も、「今日はもう少し濃いほうが好きかも」と言います。味の好みを伝えることまでやめたわけではありません。ただ、実家の味を基準にして、妻の料理を上か下かで決めることはなくなりました。母の味も、妻の味も、誰かに合わせながら作られているものだった。そのことを知ったのは、自分で初めて鍋の前に立った日でした。
(30代男性・営業職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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