彼女の企画を、俺だけが別の資料に移した。誰にも言えなかった理由
名前が消えていく資料
会議後、チームの企画はひとつの共有資料にまとめられていきました。誰の案かよりも、チーム全体の提案として見せるための資料です。
その中で、いちばん筋がよかったのは彼女の企画でした。けれど、そのまま一緒にしてしまえば、彼女の名前は残りません。先輩の資料の一部として扱われてしまうのが目に見えていました。
だから俺は、彼女の企画だけを別ファイルに移しました。彼女の名前を残したまま、役員に見せるためです。
「これは、別で進めるから」
デスクに戻ると、彼女が来て「私の案だけ、別にしたんだね」と言いました。
本当なら、その場で理由を説明すればよかったのだと思います。けれど職場では、俺たちが付き合っていることをほとんど誰も知りません。
「君の名前を残したかった」と言えば、特別扱いに聞こえる気がしました。彼女のためだと言いながら、周りの目を気にしていたのは俺のほうです。
結局俺は、「これは、別で進めるから」とだけ返しました。彼女の表情が変わったのはわかりました。それでも、俺は説明を飲み込みました。
役員の前で選んだファイル
数日後の会議で、議題が一巡したあと、俺はあの別ファイルを開きました。
画面には、彼女の名前がついた企画書が映っています。俺は「これは彼女の案です」と伝え、そのまま内容を説明しました。
役員からは前向きな反応があり、企画は次に進むことになりました。離れた席で、彼女がこちらを見ているのがわかりました。
そこで初めて、俺は考えました。守ったつもりの行動が、彼女にはどれだけ不安に見えていたのかを。
そして...
あとで二人になったとき、俺はようやく理由を話しました。「チームの資料に入れたら、君の名前が残らないと思って」
彼女は少し黙ってから、「だったら、ひとこと言ってほしかった」と言いました。
その言葉で、自分が何を間違えたのかがわかりました。彼女の企画を守ることばかり考えて、彼女自身の不安を見ていなかったのです。
次に同じ場面が来たら、ファイルを動かす前に、まず彼女に一行送ろうと思います。
(30代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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