返した本に半券を挟んだまま、最後まで読めなかった俺の本心
別れを切り出したのは、俺のほうだった
付き合いが終わる前から、先に気持ちが離れていたのは俺のほうでした。彼女が将来の話をするたびに、俺だけがその未来を想像できなくなっていました。
それを正直に言えばよかったのに、俺は連絡を減らして、自然に距離ができるのを待ちました。最後には自分から別れを切り出したくせに、彼女から借りた本だけは手元に残ったままでした。
返さなければと思い、俺からカフェを指定しました。もう一度会う理由を、本に押しつけたのかもしれません。
最後のページを、開けなかった
本を返す前に、もう一度だけ読み進めようとしました。けれど、最後のページだけはどうしても開けませんでした。
その本は、彼女と一緒に行った展覧会のあとに借りたものでした。読み終えてしまえば、あの日のことも、彼女との関係も、本当に終わってしまう気がしたのです。だから俺は、読みかけのまま本を閉じました。
読んだと、嘘をついた
カフェで彼女に「最後まで読んだ?」と聞かれたとき、俺は思わず「読んだよ」と答えました。
本当は、最後まで読めていません。読み終えていないと言えば、まだ未練があるように聞こえる気がしました。別れを切り出したのは自分なのに、そんなことを言う資格はないと思ったのです。
彼女が「じゃあ、本を渡す前に半券を抜いておくべきだったね」と言った瞬間、俺は言葉に詰まりました。ページの間に、あの日の展覧会の半券が挟まったままだったのです。
そして...
半券が残っていたということは、彼女にはもう分かっていたはずです。俺が最後まで読んでいないことも、読み終えることができなかった理由も。
それでも彼女は、それ以上何も言いませんでした。ただ本を受け取って、小さく笑っただけでした。
別れを決めたのは俺です。けれど、本当に終わらせる覚悟ができていなかったのも、俺のほうだったのだと思います。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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