好きな子が会えるとあげてくれた候補日を、僕が予定ありにしていた理由
「打ち合わせかよ」と笑われて
初めて会う約束も二度目も、僕は仕事用の予約ページで日程を決めてもらいました。空いている枠を選んでもらえば、やりとりは一往復で済みます。効率としては正しくて、彼女も笑って付き合ってくれていました。
三度目の相談では、彼女のほうから先に候補が届きました。
「来月なら、18日か21日か26日が空いています」
「了解。ちょっと調整するから、少し待ってて」
そう返してすぐ、僕は三つの枠を閉じました。打ち合わせで埋まる前に確保しておく、それだけのつもりでした。
同業の友人にその段取りを話すと、返ってきたのは短い笑いでした。
「打ち合わせかよ」
図星でした。思えば僕は一度も、自分の言葉で彼女を誘ったことがありません。
誘い文の下書きと、満席の店
ちゃんと誘うと決めて、まず店を探しました。二度目に会った帰り、彼女が行きたいと話していた路地裏のイタリアンです。予約サイトをのぞくと来月分はどの枠も埋まっていて、僕はキャンセル待ちに登録しました。
誘いの文面も下書きしました。三行に増えたり一行に戻ったり、送らないまま育っていく文章を、段取りのうちだと思っていました。店が取れたら、仕上げた下書きと一緒に渡す。その順番が、一番きれいに見えていたのです。
そのあいだ、彼女への連絡は止まっていました。枠は押さえてある。準備は進んでいる。自分では動かしているつもりの三日間を、彼女の側から眺める発想がありませんでした。
彼女から見えていたもの
キャンセル待ちの通知より先に、彼女からメッセージが届きました。
「予約ページ、見ました。忙しそうなので、落ち着いたらまた誘ってください」
読み返して、ようやく思い当たりました。彼女も、あのページをいつでも開けるのです。僕が確保のつもりで閉じた三つの枠は、外から見れば、選べなくされた三つの日付です。それも、自分の伝えた日だけ。避けられたと読むのが自然でした。
通話ボタンを押すまで、迷いませんでした。出てくれた彼女に、僕は早口のまま、順番も考えずに話し始めていました。
「あれは埋まったんじゃなくて、埋まらないようにしてたんだ」
「行きたいって言ってた店の予約が取れてから、誘うつもりだった」
店がまだ取れていないことまで、そのまま全部しゃべっていました。少しの沈黙のあとに返ってきた声は、責める調子ではありませんでした。
「先に言ってよ」
「ごめん。先に言えばよかった」
「お店なんて、どこでもよかったのに」
その一言で、僕の三日分の段取りは、音もなくほどけました。
そして...
結局、キャンセル待ちはあてにしないことにしました。21日に二人で会って、店は目についたところへそのまま入りました。
完成した段取りを渡すより、途中のままでも言葉にすればよかったのだと、ずいぶん遠回りして覚えました。予約ページは今も仕事で使っています。ただ、彼女に渡す日付だけは、リンクの代わりに自分の言葉で送ると決めています。
(20代男性・Webデザイナー)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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