彼女に内緒で冊子を作った俺が、自分のページに一行だけ残した理由
頭を下げて、言葉を集めて回った
普段は連絡を取らない相手にまで、突然の頼みを送りました。急なお願いに戸惑いながらも、みんな引き受けてくれたのです。集まったページには、俺の知らない彼女の時間が詰まっていました。友人との旅行、新人だったころの失敗談、妹が便箋に書いた長い手紙。読みながら、彼女がどれだけ大事にされてきたかを、俺は改めて知りました。
最後に残った、自分の一枚
全部のページを綴じ終えて、最後に残ったのが自分の一枚でした。ペンを持っても、何を書いてもみんなの言葉の隣では薄く見える気がして、なかなか進みません。この一冊を作ったことが、いちばん伝えたいことのはずだ。そう言い聞かせて、俺は余白の真ん中に一行だけ書きました。「言葉にするの、苦手でごめん」。嘘ではない、いちばん正直な一行のつもりでした。
「これだけ?」に、うまく答えられなかった
出来上がった冊子を手渡すと、彼女は一枚ずつ、うれしそうにめくっていきました。けれど俺のページにたどり着いたところで、彼女の表情が変わったのが見えたのです。彼女はページを開いて「これだけ?」と聞いてきました。この一冊ぜんぶが俺からの言葉だと言えばよかったのに、自分で説明するのが照れくさくて、「そういうの、得意じゃないから」とだけ返しました。彼女の笑顔がぎこちなかったことには、気づいていました。
そして...
今になって思うのは、作って渡すことと、ちゃんと言葉にすることは別なんだということです。一冊を差し出せば伝わると、俺は勝手に思い込んでいました。あの白い余白は、彼女には冷たく見えたのかもしれません。次に会ったら、今度は冊子ではなく、直接あの一行の続きを話そうと思っています。
(30代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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