「文字だけじゃ気持ちは伝わらない」と逃げ続けた俺。彼女のある一言で→一晩かけて長文を打っていた
書けない人間
「文字だけじゃ気持ちは伝わらない」
彼女にそう返すたびに、本当は自分に言い聞かせていました。伝わらないんじゃなくて、俺がうまく書けないだけです。
彼女が丁寧に気持ちを綴ったメッセージに「了解」としか返せない自分が情けなかった。「電話でよくない?」と言うのは、声なら表情や間合いで補えるからです。文字だけの世界では、自分の気持ちを正確に並べる自信がありませんでした。
逃げられなくなった夜
あの夜、電話で少し空気が悪くなったとき、彼女が言いました。「文字でも本気なら相手に伝わるでしょ…」「え、無理だって」と笑ってかわそうとしたけれど、彼女の声はまっすぐでした。
「無理じゃなくて、一回やってみて。私に、文字で気持ちを伝えてみてほしい」
電話を切ったあと、メッセージの入力画面を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返しました。何を書いても嘘くさく見える。「好き」の文字すら、画面に打つと急に軽く感じました。布団に入ってからもスマホを握ったまま天井を見つめて、結局その夜は一文字も送れませんでした。
消しては打ち直した2時間
翌日、仕事の帰り道から覚悟を決めました。家に着いて机に座り、「うまく書けないけど、伝えたいことがある」と打ち出してから、思いつくまま指を動かしました。彼女がツッコむときの関西弁が好きなこと。怒った顔も泣いた顔も全部覚えていること。30回は消して打ち直したと思います。
2時間かけて出来上がった文章は、句読点の位置がめちゃくちゃで、読み返すと恥ずかしくなるようなものでした。でも最後の「文字じゃ伝わらないって言ってたのは、ちゃんと伝えたいのにうまく言葉にできない自分が怖かったから」だけは、嘘偽りのない本音でした。送信ボタンを押す親指が震えていました。
そして...
翌朝、彼女から「昨日のメッセージ、スクリーンショット撮った」と届いて、顔が一気に熱くなりました。「やめろ」と返したあと、少し迷って「また書く」と打ちました。
文字じゃ気持ちは伝わらない。ずっとそう思っていました。でも違ったのかもしれません。下手でも、時間がかかっても、選んだ言葉は消えずにそこに残る。俺が怖かったのは、伝わらないことじゃなくて、不器用な自分がそのまま伝わってしまうことだったのだと思います。それでも彼女がスクリーンショットを撮ってくれたなら、あの2時間は無駄じゃなかったはずです。
(20代男性・エンジニア)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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