気になる彼が私の作品だけ展示台を低く下げた。理由を聞いても「気にしないで」とそっけなくて
目線の高さに並ばなかった、私の作品
私が通っているのは、ミニチュア作りを楽しむ趣味のサークルです。手のひらにのるくらいの小さな部屋を、家具や雑貨ごと作り込むのが好きで、半年ほど前から月に一度の集まりに参加していました。
そのサークルには、いつも展示の準備を率先して手伝う先輩がいます。物腰が穏やかで、誰の作品にも丁寧に向き合うその人のことが、私はいつからか気になっていました。
今回は、サークル全員の作品を集めた展示会です。同じ形の展示台がいくつも並び、みんなの作品が目線の高さにそろっていきます。ところが会場に着くと、私の展示台だけが、ほかよりずっと低い位置に下げられていたのです。
誰かが間違えたのかと思って近づくと、台を調整していたのは、あの先輩でした。
「気にしないで」と言われて
どうして私の作品だけ低くしたのか、気になって仕方ありませんでした。下げられた台の前にしゃがむと、自分の部屋だけが床に近い場所にあるようで、なんだか恥ずかしくなってきます。思いきって、私は先輩に聞きました。
「私のだけ、どうして低くしたんですか?」
先輩はちらりとこちらを見ましたが、「気にしないで」と言って、「そのほうがいいと思っただけだから」と続けました。それ以上は何も説明してくれず、ほかのメンバーに呼ばれて行ってしまいました。
私の作品は、目線の高さに置く価値もないということなのでしょうか。せっかく時間をかけて作ったのに、低い場所に追いやられたようで、家に帰ってからもずっとそのことばかり考えていました。
低い展示台の前に、人が集まっていた
展示会の当日、会場に入った私は、思わず足を止めました。低い位置にある私の展示台の前に、何人もの来場者が集まっていたのです。みんな少し腰をかがめて、上から私の作品をのぞき込んでいました。
天井のない小さな部屋は、上から見下ろすと、机の上のカップや、床に広げた本まで全部が見えます。背の低い子どもたちも、ちょうど目の高さで中をのぞけて、嬉しそうに指をさしていました。
目線の高さの台に置いていたら、正面の壁しか見えなかったはずです。低く下げられていたから、部屋の中の細かい部分まで、みんなにちゃんと届いていました。あの位置は、私の作品が一番きれいに見える高さだったのだと、ようやく気づいたのです。
そして...
低い場所に追いやられたと思っていた私の作品は、本当は、一番よく見てもらえる場所に置かれていました。それに気づいたとき、あのときの悔しさが、少しずつほどけていくのを感じました。
それでも、ひとつだけわからないことがあります。どうして先輩は、あんなにそっけない言い方をしたのでしょう。ほんの一言、理由を教えてくれたら、私はあんなに落ち込まずにすんだのに。
今度こそ、ちゃんと聞いてみようと思います。そして、低くしてくれてありがとうと、伝えたいのです。あの部屋を一番きれいに見せてくれたのは、ほかでもない、あの人だったのだから。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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