記念日に何も持たず帰った彼。後日コートから出てきた一枚の紙に、私は理由を知りたくなりました
記念日の食卓
数日前から、私は少しそわそわしていました。付き合って3年目の記念日。二人でゆっくり過ごせるのは久しぶりで、彼の好きな煮込み料理を仕込み、デザートのケーキも取り置きしてもらっていたのです。玄関の鍵が回る音がして、私はエプロンのまま、笑顔で出迎えました。
「おかえり。今日、3年目の記念日だよ」
そう声をかけると、彼は小さくうなずいて、「ああ、ごめん。なんだか疲れちゃって」とだけ返しました。手にはかばんがひとつだけ。花も、小さな包みも、何もありません。
記念日を忘れているわけではなさそうなのに、彼の表情はどこか遠くを見ているようでした。
届かない言葉
食事の時も会話はあまり続きませんでした。彼は料理を口に運びながらも、何度もスマホの画面に目を落としています。心配になって、私は「何かあった?」と尋ねてみました。
返ってきたのは、「いや、別に。先に休むね」という短い言葉だけでした。記念日くらい、ちゃんと向き合ってほしい。そう思う一方で、ここ最近の彼が仕事に追われているのも知っていました。問い詰めて気まずくするのも違う気がして、私はケーキに立てるはずだったろうそくを、引き出しにそっとしまいました。
寝室から聞こえてくる彼の寝息を確かめながら、楽しみにしていた一日がただ過ぎていったことだけが、心に残りました。
一枚の控え
その出来事を引きずらないようにしていた数日後、彼のコートを洗濯しようとポケットを探ると、折りたたまれた一枚の紙が出てきました。それは近所の花屋の控えで、記念日にラッピング付きの花束を頼んだことが記されていました。
彼は、私のために花束を用意しようとしていた?それなのに、手ぶらで帰ってきた?頭の中で、いくつもの想像がふくらんでいきます。誰か別の人に渡したのだろうか。それとも、私に渡すのをやめてしまったのだろうか。せっかく選んだはずの花束を、彼はいったいどこへ置いてきたのでしょう。
その控えをどう受け止めればいいのかわからないまま、私は問い詰めたい気持ちと、本当のことを知るのが怖い気持ちのあいだで揺れていました。
そして...
考えれば考えるほど、悪いほうへ気持ちが傾いていきます。でも、私が一人で答えを決めつけてしまうのは、3年間を重ねてきた彼に対して、きっと違うのだと思い直しました。
あの控えの裏には、私の知らない事情が隠れているのかもしれません。だとしたら、想像だけで彼を責める前に、まっすぐ聞いてみよう。次に二人でゆっくり過ごせるときに、あの日の花束のことを尋ねてみるつもりです。
記念日にもらえなかった花束の理由を、私はまだ知りません。けれど、それを二人で話し合える関係でいたい。そう思えたこと自体が、今の私にとっては小さな前進でした。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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