「スマホばかり見て」と私の趣味の写真を嫌がった彼→誕生日に渡したアルバムを開いた瞬間
どこに行ってもスマホを向ける私
旅行先で、カフェで、夜景の見える場所で。私はどこに行ってもスマホを構えていました。海辺の波打ち際、駅前のイルミネーション、お店の小皿に盛られた料理、犬と歩いた帰り道。
忙しい平日を乗り越えて訪れる週末の景色は、何でもないように見えて、私には宝物のようでした。彼に「ね、ちょっとだけ撮ってもいい?」と聞いては、何枚かシャッターを切る。それが私の習慣だったのです。
最初の頃、彼は「またか」と言いつつ笑って待ってくれていました。けれど少しずつ、その顔から笑いが消えていったのです。
「目の前を楽しめばいいのに」
ある夜、2人で出かけたレストランでのことです。窓越しの夜景がきれいで、私はいつものようにスマホを向けました。
彼がため息混じりに「目の前を楽しめばいいのに」とつぶやいたのです。続けて「写真ばっか撮ってないでさ」とも。「スマホばかり見て」というひとことは、ここ数カ月、彼から何度も聞いていました。
私は「うん、ごめん」と返して、スマホをカバンにしまいました。彼の言うことは正論です。隣にいる人より画面を見ているのは確かに失礼な話でした。
ただ、写真を撮ってきた理由は彼に伝わっていない。その思いだけが消えないまま、家に帰ったのです。
誕生日に渡したアルバム
それから1週間、私は彼の前ではカメラを出しませんでした。代わりに、1人の時間を使ってこっそり進めていたものがあります。彼の誕生日に渡す予定だったフォトアルバムです。
2年分の写真を選び、印刷して、台紙に貼って、ひとことずつコメントを添える。半年前から少しずつ準備してきました。
彼の誕生日の夜、ケーキの後で私はそれを差し出したのです。「ちょっと地味なんだけど」と言いながら。
彼はアルバムを開いて、ページをめくっていきました。海辺の波、駅前のイルミネーション、犬と歩いた帰り道。そのほとんどに、彼自身が小さく写り込んでいたのです。
そして...
彼のページをめくる手が止まりました。「これ、ずっと撮ってたやつ?」と聞かれて、私は「うん。スマホばかり見てたのは、ちゃんと残したかったから」と返したのです。
彼はしばらくページに目を落としたまま、何も言いませんでした。やがて、ぽつりと「何も知らずに文句だけ言ってごめん」と漏らしたのです。その声は、ずいぶん小さくなっていました。
それから彼はもう一度ページの最初に戻って、1枚ずつゆっくり見直しはじめました。最後のページを閉じたとき、こちらをまっすぐに見て「ありがとう。今までで1番嬉しい誕生日だ」と言ってくれたのです。気づくと、彼の手が私の手を握っていました。
私はうまく言葉が返せませんでした。隣にいる人をそのままの形で残したかっただけの2年分が、こうしてちゃんと届いた。それだけで、十分だったのです。
(20代女性・販売職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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