4割近くもリスクが変わる!? 認知症を避けたい40代以上が、今日から取り入れたくなる意外な生活習慣

2026.05.10 20:45
提供:All About

【医師が解説】認知症は誰にでも起こりうる病気ですが、生活習慣によって発症リスクを下げたり、進行を遅らせたりできる可能性があります。運動不足や難聴、脂質代謝異常症がある場合は、少し注意が必要です。今日からできる脳の健康習慣を解説します。(※画像:Shutterstock.com)

「認知症になったら、それまでの自分を失ってしまう」と、恐怖感を覚えている人は少なくないようです。実際には、認知症になっても、その人らしさが完全に失われるわけではありません。しかし、できるだけ予防したい病気の1つであることは確かでしょう。

そもそも、「年齢とともに脳が衰えるのは仕方ない」と思っていませんか? その考えは、必ずしも正しくありません。認知症は、誰もがなりうる病気ですが、生活習慣によって、発症リスクを下げたり、進行を遅らせたりする可能性があると報告されています。

日常のちょっとしたポイントを押さえることで、脳の活力が保て、将来の認知症予防につながる可能性があるのです。例えばWHO(世界保健機関)は、2019年に「認知症予防のための12の提言」を公表し、それぞれの推奨度やエビデンスレベルを示しています。

今回は、2026年に発表された最新の論文をもとに、40代・50代のうちに意識したい「脳の健康づくり」のコツをご紹介します。

日本人の認知症リスクを上げる「難聴」「運動不足」「脂質異常」

最新の研究によると、認知症の約38.9%が日常生活の工夫で予防できる可能性があると報告されています。

発表された論文によると、日本人における認知症にかかわる14のリスク要因として、以下のものが挙げられています。

・教育歴
・難聴
・高LDLコレステロール
・うつ
・脳外傷
・運動不足
・糖尿病
・喫煙
・高血圧
・肥満
・過度の飲酒
・社会的孤立
・大気汚染
・未治療の視力低下

なかでも影響が大きいとされた上位3つは、以下の通りです。

1位:難聴(影響度6.7%)

意外に思われるかもしれませんが、日本人の認知症リスクのトップは「難聴」でした。音が聞こえにくくなることで脳への刺激が減り、コミュニケーションの機会も減少しがちになります。これが脳の健康に影響すると考えられています。

2位:運動不足(影響度6.0%)

日本は交通機関が発達し、デスクワークの仕事も多いため、日常的に体を動かす機会が少ないです。体を動かさないことで全身の血流が悪くなり、脳に十分な酸素や栄養が届きにくくなります。また、運動をすれば、脳の神経回路を育てて守るための栄養分(「BDNF」と呼ばれるタンパク質など)が増えやすくなることも分かっています。

3位:脂質代謝異常症(高LDLコレステロール)(影響度4.5%)

40~50代になると健康診断で指摘される人が増えるコレステロール異常も、大きなリスク要因の1つです。コレステロール異常も、運動不足や食生活といった生活習慣と深く結びついています。血管の健康は、脳に影響を及ぼすのです。

これらのほかにも、人とのかかわりが減る社会的孤立や高血圧、糖尿病なども、重要なリスクとして挙げられています。

今日から実践! 脳を若々しく保つ生活習慣、3つの新常識

上位のリスク要因は、いずれも日常生活と密接に関係しています。将来の脳の健康を守るために、今からできる3つのポイントを紹介します。

1. 耳の健康を守る

難聴は高齢になって突然始まるわけではありません。「人と話しているとき、聞き返すことが増えた」「イヤホンの音量が少し大きくなった」と感じたら、耳鼻咽喉科での聴力チェックを検討しましょう。

40~50代で、もし聴力の低下が見られた場合、軽く考えてはいけません。耳のセンサーである有毛細胞は非常にデリケートで、大きな音を長時間聞き続けることでダメージを受けます。一度失われてしまうと基本的に元には戻りませんので、失わない工夫が大切です。

・動画視聴や音楽を聴くとき、イヤホンの音量は控えめにする
・イヤホンを1時間連続で使用したら、10~15分は外して耳を休ませる

小さな習慣の工夫が大切です。

2. 1日20分の運動を習慣にする

北海道教育大学の研究では、20分程度の運動でも脳によい影響があるとされています。

短い運動でも、脳の中で記憶をつかさどる海馬という部分が刺激されるようです。「長期増強(LTP)」と呼ばれる、記憶定着にかかわる働きが促されると考えられています。ジムに通ったり、激しいスポーツをしたりする必要はありません。大切なのは、毎日の生活の中で少しでも体を動かす時間を増やすことです。

・通勤時にいつもより少しだけ早歩きをしてみる
・エスカレーターではなく、階段を使ってみる
・テレビを見ながら、または家事の合間に、軽いストレッチをする

無理のない範囲で体を動かすことが大切です。

3. 血管の健康を意識する

コレステロールや血圧の異常は自覚しにくく、気付かないまま進行してしまうのが怖いところです。健康診断で「やや高め」と指摘された場合は、「特に困っていないから大丈夫」と考えず、食生活を見直すタイミングと捉えましょう。

・肉類などの脂質の多い食事を少し控える
・青魚や大豆製品(豆腐・納豆など)、野菜を意識して積極的にとる
・必要に応じて医療機関に相談する

といった対策が有効です。

脳の健康は、生活習慣を少し工夫するだけで大きく変わる!

認知症を完全に防ぐ方法は、現代の医学ではまだ確立されていません。しかし、生活習慣のちょっとした工夫で、よい変化が期待できるのであれば、できるところから始めてみるべきでしょう。

脳の健康は、上記の通り「耳を守る」「体を動かす」「検診結果に目を向ける」といった日々の積み重ねで大きく変わります。加えて、日常生活を少しだけ意識することが大切です。

・適度な運動を続ける
・会話や趣味で人とかかわる時間を持つ
・バランスのよい食事を心掛ける
・質のよい睡眠をとる
・糖尿病や高血圧などを放置しないで受診する

不安が強くなると、「ちょっとした物忘れ」に過敏になることもあります。そのようなときは一人で抱え込まず、家族や医師に相談することも大切です。

人生100年時代。自分らしい毎日を長く続けるために、ぜひ今日からできることを考えてみましょう。

■参考文献
Koichiro Wasano,Kasper Jrgensen.The potential for dementia prevention in Japan: a population attributable fraction calculation for 14 modifiable risk factors and estimates of the impact of risk factor reductions.Lancet Reg Health West Pac.2026 Jan 11:66:101792.

Noriteru Moritaa,Toru Ishiharab,Charles H. Hillman,et al.Movement boosts memory: Investigating the effects of acute exercise on episodic long-term memory.JSAMS 2025;28:256-259.

20分間の運動で記憶力アップ!8週間後も効果が続く!.国立大学法人北海道教育大学 岩見沢校芸術・スポーツ文化学科

秋谷 進プロフィール

小児神経学・児童精神科を専門とする小児科医・救急救命士。プライベートでは4児の父。子どもの心と脳に寄り添う豊富な臨床経験を活かし、幅広い医療情報を発信中。


執筆者:秋谷 進(医師)

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