通知画面に光った「大好き」を、俺は開かずにポケットの中に押し込んだ
ポケットの中で光った画面
金曜の夜、彼女と電話を終えたあと、同僚との飲み会に向かいました。「おやすみ。今日楽しかったね」と言って通話を切り、駅へ歩いている途中にポケットの中でスマホが震えました。ロック画面を見ると「大好き」の文字。不意打ちでした。口元が勝手にゆるんで、慌てて引き締めました。
あとで返そう。
そう思って画面を消し、スマホをポケットに押し込みました。居酒屋に入り、ビールを何杯か空け、仕事の愚痴で盛り上がっているうちに、スマホのことはすっかり頭から抜け落ちていました。
帰り道のざわつき
終電間際、同じ方面の女性の同僚と駅まで歩きました。他愛もない仕事の話をしていたとき、ふと彼女がこう言ったのです。「彼女さん、大事にしたほうがいいよ。ああいう子、なかなかいないから」。悪気のない一言だったと思います。でも、そのとき妙に胸がざわつきました。隣を歩く同僚の横顔に、ちらっと目がいった自分に気づいて、慌てて視線をそらしました。帰宅してポケットから出したスマホの画面は、もう真っ暗でした。充電器はすぐそこにあったのに、つなぐ気になれませんでした。そのままベッドに倒れ込んで目を閉じました。
通知の山
土曜の夕方、ようやくスマホを充電しました。画面が点灯した途端、通知が一気に流れ込んできました。「起きた?」「心配してるんだけど」「電話出てよ」。すべて未読のまま溜まった彼女のメッセージ。その一番上に、あの「大好き」がまだ残っています。
すぐに電話をかけました。「ごめん、充電切れてた」。彼女は「丸1日だよ? 丸1日、連絡取れなかったんだよ?」と、声を震わせていました。
そして...
「本当にごめん」と繰り返しました。充電が切れていたのは嘘じゃない。でも、土曜の朝に起きてすぐ充電しなかった理由までは言えませんでした。あの帰り道、同僚の横顔に目がいったこと。彼女の「大好き」を通知で見たとき、嬉しさのすぐあとに、ほんの一瞬だけ「重たい」と感じてしまったこと。その一瞬が怖くて、スマホに手を伸ばせなかったのです。
彼女はきっと、あの「大好き」への返事を待っています。たった数文字でいい。それなのに、昨夜の自分を思い出すと、同じ重さの言葉を返していいのかわからなくなる。充電が切れていたのはスマホだけじゃなかった。あの夜、俺の中の何かも、少しだけ途切れていました。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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