「可哀想に」と隣人を見下していた私→あの日玄関先で見た光景に、言葉を失った
「やっぱりね」と思った日
隣に住む若い夫婦のことは、前からなんとなく気にかけていました。最近、壁越しに言い争う声が聞こえることもあって。旦那さんがスーツケースを引いて出ていったとき、正直「やっぱりな」と思いました。若い夫婦にはよくあること。そう自分に言い聞かせながら、どこかほっとしている自分がいたのです。
「うちはまだマシ」という安心感
私自身、夫との関係がうまくいっているとは言えません。会話は事務的な連絡ばかりで、休日も別々に過ごす日が増えました。けれど隣の奥さんを見ると、不思議と気持ちが落ち着いたのです。「少なくとも、うちはまだ一緒にいる」。それだけで、自分の暮らしがまだ大丈夫だと思えました。「大変だったわね。何かあったらいつでも言ってね」と声をかけたあの日、優しさのつもりでした。でも今思えば、あの言葉は自分を安心させるためだったのかもしれません。
止められなかった噂話
エレベーターの前で知り合いと話しているとき、つい口にしてしまいました。「やっぱり若いうちの結婚ってダメよね。うちの旦那にも感謝しなきゃ」。
後ろめたさはありました。でも止められなかったのです。あの人の話をしている間だけ、自分の問題から目をそらすことができたから。
そして…
あれから3ヶ月ほど経った休日の午前中、買い物帰りに、マンションの入口で足が止まりました。隣の奥さんの玄関先に、あの旦那さんが立っている。「やり直したい」と頭を下げている。
奥さんは背筋を伸ばしたまま、淡々と言いました。
「届いてるよね、あの書類。サインしておいて」。その声は覚悟を決めた人の声でした。私はその場に立ち尽くすことしかできませんでした。
「捨てられた」のではなかったのです。彼女が「捨てた」のだと、そのとき初めて知りました。その夜、自分の部屋のソファでぼんやり天井を見つめました。私が「可哀想に」と見下していた隣人は、自分の人生を自分で決められる、私よりずっと強い人でした。本当に可哀想だったのは、人の不幸で自分を慰めていた私の方だったのです。
(50代女性・専業主婦)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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