後輩のプレゼンを「無理」と否定した私→彼女の受賞を知って気づいたこと
「添削」という名の、自分でも気づかなかった感情
後輩が初めてのプレゼン資料を持ってきたのは、ある春のこと。丁寧に作られた資料をめくりながら、胸の中に妙なざわつきが広がっていくのを感じました。入社2年目でこれだけのものを作れるのか、と。自分が同じ年次だったころ、こんな資料は到底作れなかった。そのざわつきの正体に気づかないまま、私は赤ペンを手に取っていたのです。「ここダメ」「やり直し」。書けば書くほど気持ちが落ち着いていくような、不思議な感覚がありました。
「あなたには無理」と書いた、あの一言
資料の最後に「あなたには無理よ」と書き添えたとき、一瞬だけ手が止まりました。本当にそう思っているのか。冷静に考えればわかるはず。でも、そのまま赤ペンを走らせてしまった。後から振り返れば、それは添削ではなく、自分が追い抜かれることへの恐れだったのだと思います。若い後輩が評価される場に立つこと。自分にはなかった機会を軽々と手にしていること。それが悔しかった。「無理」という言葉は、後輩に向けたようでいて、かつての自分に言い聞かせていたのかもしれません。
原案のまま出された、という事実
プレゼン当日、私はあえて会場に足を運びませんでした。数日後、そのプレゼンが社長賞を受賞したと知りました。最初に感じたのは悔しさではなく、もっと深いところを突かれるような痛みでした。「原案のまま出したらしい」。その一言が、じわじわと胸に刺さっていく。つまり私の添削は、一つも採用されなかった。赤字は全部、見当違いだった。後輩にとって、私のアドバイスは不要だったということです。
そして...
後輩宛てに「おめでとう」と打ちかけた文字を何度も消して、結局何も伝えられませんでした。素直に祝えなかった自分が情けなくて、でもそれが今の正直な気持ちでした。あの赤ペンは善意ではなかった。その事実をようやく認めたとき、少しだけ肩の力が抜けたような気がしたのです。
後輩の成長を喜べない先輩に、誰もついてこない。それはわかっている。だから次は、赤ペンではなく自分の言葉で、きちんと「おめでとう」を伝えたい。まだ言えていないその一言を、いつか届けられる自分でありたいと思っています。
(40代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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