月経前にイライラするのはなぜ?PMSとPMDDの違いと対処法|女性ヘルスケア専門看護師マリリンのおしゃべり相談室 第8回 月経にまつわる話 その3

2026.02.28 20:00
提供:anna

なんとなくの不調、見過ごしていませんか?
月経のリズム、気持ちの波、ちょっとした体のサイン。
女性の毎日には、理由のわからない「ゆらぎ」がつきものです。

企業で働く女性たちの健康を長年支えてきた産業看護師が、女性ホルモンと心と体のつながりについて、やさしく、ていねいにひも解いていきます。

「自分をもっといたわる」きっかけに、今日のお話を読んでみませんか?
今回は月経に関するお話の3回目。
女性だけでなく、男性にもぜひ読んでいただきたい内容です。

健康管理室にくる女性特有の悩み

会社の健康管理室には、「生理痛なので休ませてください」「生理中で頭痛がひどくて……」と、月経を理由に休養室の利用を希望される方が少なくありません。

専門医の受診を勧めても、「そこまで必要だと思わない」「市販薬でなんとかしています」と受診をためらう方も多いのが現状です。

月経に伴う症状は、治療によって軽くなる可能性がある疾患であることを、まだ十分に知られていないのかもしれません。

月経前症候群(PMS)と月経前気分不快障害(PMDD)

最近ではPMS(月経前症候群)という言葉も広まりましたが、認知度は女性で約54%、男性では16.8%程度といわれています。他人の痛みやつらさは外からは分かりにくいものです。特に男性は、パートナーや同僚・部下の心身の変化に無関心ではいられません。

PMSは月経周期に伴い、痛みやむくみ、イライラ感や気持ちの落ち込み、食欲増進など、300種類以上の症状があるとされます。多くは月経開始とともに軽減・消失します。

PMSの様々な症状に加えて、強く精神的に影響を受ける方は、PMDD(月経前気分不快障害)と診断されます。月経の約10日前から抑うつや強いイライラ、不安定な気分が続き、生活に大きな支障をきたします。

PMSもPMDDも、女性の生活の質(quality of life : QOL)を著しく悪化させるのは、間違いありません。思春期から症状は出現し、日常生活に支障があるほどの症状がある方は20~30%、重症の方や治療希望者は5~8%。3割以上の女性が、月経周期に伴い生活の質(QOL)が下がっていると感じています。

ストレスや家庭環境との深い関係

なぜ症状の強さに個人差があるのでしょうか。
そもそも、なぜ月経周期にともなって症状が現れるんでしょうか?
それに、治療を受けるメリットは症状が軽くなる以外にもあるのでしょうか?

前回もお伝えしましたが、初潮から初産まで長期間にわたり月経を繰り返すことは、子宮内膜症の一因になると考えられています。子宮内膜症がある場合、月経時に強い痛みが現れることがあります。また逆に、月経痛が強い方ほど子宮内膜症になりやすいという報告もあります。

月経時にはある程度の腹痛がみられることはありますが、毎月痛み止めが必要だったり、寝込むほど日常生活に支障が出たりする場合は注意が必要です。症状の重さには個人差があり、女性ホルモンの変動に敏感な方ほど強く出やすい傾向があるともいわれています。

症状の強さには、現在のストレスやこれまでの家庭環境も影響していることが分かってきました。ストレスが強いほど症状も強くなる傾向があり、両親との関係性に困難を抱えてきた方ほど精神症状が出やすいという報告もあります。

女性の心と身体は、さまざまな影響を受けながら症状を表します。痛み一つとっても、その背景には多くの要素があるのです。

しかし、毎月の不快症状を我慢し続けることは、あなたのQOLを下げてしまいます。大切な試験や仕事の日程は、月経を考慮してくれるわけではありません。

タイプ別・あなたが選ぶ対処法は?

症状の強さや困りごとは、人それぞれ異なります。
「少しつらい」方もいれば、「毎月しんどい」方もいます。
大切なのは、我慢することではなく、ご自身の状態に合った対処法を選ぶことです。

今の自分に合う方法を、一緒に探してみましょう。

◆基本の生活

・ウォーキングやジョギングなどの軽い有酸素運動は、どのタイプの症状にも効果が期待できます。
・身体の冷えは痛みを強く感じさせることがあります。足首やお腹、背中を温めてみましょう。温めることで身体だけでなく、心もゆるみます。湯たんぽもおすすめです。
・規則正しい生活と、十分な睡眠時間を確保しましょう。
・アルコールやカフェインは、摂りすぎないよう意識してみてください。
・食事は1日3食、できるだけバランスよく。まずは「抜かない」ことから始めてみましょう。

◆周囲のためにできること

「症状日記」を、数か月でも構いませんので続けてみましょう。月経周期とそのときの症状を記録することで、事前に対策を立てやすくなります。パートナーにも共有しておくと、「この時期はそっとしてほしい」など気持ちを伝えやすくなり、お互いの理解が深まります。

◆対症療法

医療機関を受診し、医師の診察のもとで処方を受けることになります。
イライラや不眠、むくみ、乳房痛、腹痛、頭痛など、それぞれの症状に合わせた薬物療法のほか、体質や症状に応じた漢方薬の処方を受けることも可能です。

◆ホルモン療法

低用量ピル(OC)は排卵を抑制することで、月経前症状や月経量を軽減します。PMSの治療を目的として保険適用となるOCもあり、これらはLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)と呼ばれています。

そのほかにも、黄体ホルモン製剤や性腺刺激ホルモン放出ホルモン関連薬など、専門医の診断に基づいてさまざまな治療法が選択されます。
これらの治療は、子宮内膜症の予防や進行抑制にもつながります。

症状が強い方は、10代のうちから婦人科を受診し、かかりつけ医を持つことを検討してみてください。
子宮頸がん検診をはじめ、女性特有の症状について気軽に相談できる環境があることは、大きな安心につながります。

◆精神科での治療

精神症状が強く現れる場合は、婦人科に加えて精神科での治療を併用することが有効な場合があります。
月経前の期間だけ服用する方法でも、特定の抗うつ薬が高い効果を示すことがあります。

◆医療を受ける勇気

女性はとても我慢強い方が多く、「生理痛は痛み止めでやり過ごせばいい」と思ってしまいがちかもしれません。けれど、その痛みは、もしかすると次の病気(子宮内膜症など)につながる“未病”のサインかもしれません。

あなたの心と身体が少しでも楽になり、毎日を元気に過ごせるように。
一度立ち止まって、正しい医療の力を借りるという選択肢も考えてみませんか。

ほんの少しの勇気が、未来のあなたを守ってくれます。

教えてくれた人看護師マリリン

在阪企業の産業看護師として活動中
女性の健康のサポートの必然性を感じ、セミナーなど多数実施
女性医学学会認定女性ヘルスケア専門看護師 女性心身医学学会認定専門看護師

写真/ピクスタ 文/看護師マリリン

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