「しばらく様子見」は避けて! 放置すると取り返しがつかない「危険な咳」の見分け方【医師が解説】
【総合内科専門医が解説】風邪は治ったはずなのに咳だけが3週間以上続く……。季節の変わり目に増える「長引く咳」は、「咳喘息」かもしれません。普通の咳との見分け方、放置は危険な理由、なぜ夜間に悪化するのか、適切な治療と受診の目安について、分かりやすく解説します。(※画像:Shutterstock.com)
「風邪は治ったはずなのに、咳だけがしつこく残っている」「夜中や明け方に激しく咳き込み、目が覚めてしまう」……季節の変わり目は、「長引く咳」に悩む方が急増します。
多くの方は「風邪の名残だろう」「喉が弱いから、乾燥にやられた」と自己判断してしまいがちですが、その背景に「咳喘息(せきぜんそく)」という病気が隠れていることは珍しくありません。
咳喘息は、普通の咳と区別がつきにくいため、見過ごされやすいのが厄介な点です。しかし、適切な治療をせずに放置すれば、一生付き合わなければならない「本格的な喘息」へ進行するリスクをはらんでいます。
喘鳴がないからと油断禁物!「咳だけ」が続く咳喘息のリスク
咳喘息は、気管支喘息の一種です。しかし、私たちがイメージする「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)や、激しい息苦しさがほとんどありません。「咳だけが出る」という点が最大の特徴です。
そのため本人も周囲も深刻に捉えにくく、「ただの風邪」「よくある咳」と勘違いし、放置してしまうケースが多々あります。しかし、体の中では着実に異変が起きています。気道の内側で慢性的な炎症が生じているせいで、刺激に対して非常に過敏になっているのです。この炎症を放置すると、ただ咳が長引くだけでなく、将来的に本格的な喘息へ進行し、一生涯、服薬が必要になるリスクが高まります。
一般的な呼吸機能検査では異常が見つからないことも多いため、専門的な視点での診断が不可欠です。
普通の咳と咳喘息の違い・見分け方……期間・時間帯・咳き込むきっかけなど
では、普通の咳と咳喘息は何が違うのでしょうか。正確な診断には、病院を受診する必要がありますが、両者の主な違いをご紹介します。
風邪による咳は、発熱、喉の痛み、鼻水などの症状と一緒に現れることが多く、原因となるウイルス感染が治まれば、1~2週間ほどで自然に軽快するのが一般的です。一方、咳喘息では、咳が3週間以上、時には数カ月にわたって続くことがあります。
咳喘息の場合、夜間から明け方にかけて激しくなるのが典型的な特徴です。また、季節の変わり目、ハウスダスト、花粉、ペットの毛、たばこの煙など、身の回りの刺激が咳の「引き金」になることも特徴です。会話中、運動後、冷たい空気を吸い込んだときなどに悪化しやすい傾向もあります。「眠れない」「仕事や家事に集中できない」といった形で、日常生活や睡眠に支障を来すことも少なくありません。
咳喘息の場合、感染症のときによく見られる痰が絡んだ湿った咳ではなく、乾いた「空咳」が主であることが多いです。
咳喘息に、市販の咳止めは効果なし? 市販薬が効かない理由と、放置のリスク
咳喘息が厄介なのは、市販の咳止め薬では根本的な改善が期待しにくい点です。一般的な咳止め薬は脳の咳中枢に働きかけるだけのため、一時的に症状を和らげられても、根本的な原因である炎症そのものを鎮める力はありません。そのため、「薬を飲んでいる間だけ少し楽になるが、やめるとまた咳が出る」という状態を繰り返してしまいがちです。
さらに恐ろしいのは放置のリスクです。適切な治療を受けなかった場合、約3割の人が本格的な「気管支喘息」へ移行するというデータがあります。気管支喘息になると、咳だけでなく、息苦しさや発作的な呼吸困難、ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴を伴います。日常生活の質(QOL)が著しく低下することは、言うまでもありません。
外出や運動を控えるようになったり、夜間の発作によって睡眠不足が続いたりと、仕事や家事、学業にまで影響が及ぶこともあります。こうした悪循環を防ぐためにも、咳がメインの段階で早めに対応することが何より重要なのです。
診断に重要な「問診」。治療の基本は「吸入ステロイド」による抗炎症治療
咳喘息の診断では、問診が非常に重要な役割を果たします。「咳がどのくらい続いているのか」「どの時間帯に悪化するのか」「過去にアレルギー性鼻炎や喘息を指摘されたことがあるのか」など、症状の経過や体質について詳しく確認します。
必要に応じて、呼吸機能検査や、気管支拡張薬を使った反応を見る検査などを行い、ほかの病気の可能性も含めて、咳喘息かどうかを総合的に判断します。
治療の基本は、「吸入ステロイド薬」を中心とした抗炎症治療です。単に咳を止めるのではなく、原因である気道の炎症そのものをしっかりと抑えることが目的になります。適切な治療を継続すれば、多くの場合、咳は徐々に改善し、日常生活への影響も軽減していきます。また、早めに治療を始めることで、将来的に本格的な喘息へ進行するリスクを下げることも期待できます。
咳喘息のサインを見逃さないために……受診を検討すべき症状チェックリスト
「たかが咳」と軽く考えてはいけません。以下の項目に1つでも当てはまるなら、呼吸器内科や内科への受診をおすすめします。
・咳が3週間以上続いている
・夜間や早朝に咳で目が覚める、あるいは寝付きが悪い
・市販の咳止めを1週間飲んでも改善しない
・冷たい風を吸い込んだり、電話で話したりすると咳き込む
季節の変わり目は寒暖差やアレルゲンが多く、気道が悲鳴を上げやすい時期です。長引く咳がある場合は、その正体を見極め、早めに適切なケアを始めることが大切です。将来的な喘息への進行を防ぎ、健康を守る大切な一歩を踏み出しましょう。
日本内科学会総合内科専門医。「やさしい言葉とわかりやすい説明」をモットーに、クリニック院長として外来診療に従事。糖尿病・生活習慣病に関するセミナー・講演会も多数。ひとりでも多くの人が健康的な生活を送れるよう、役立つ医療情報を発信中。
執筆者:荒牧 昌信(医師)
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