評価されやすい「交渉力がある人」3つの特徴
ビジネスにおいて、最終的に必要なものは覚悟と交渉力だと日々痛感しています。
交渉、苦手な人は本当に苦手なんです。そして「交渉が苦手」とは、立場が上にいけばいくほど決定的な「仕事ができない」の要因の1つになりがちです。
それなりに決済権を持つ部長職あたりで交渉力がない人、いますよね。そこより上の役職は、さすがに交渉力がない中で上がれるほど甘くないんですけど……。おっと愚痴になってしまった。
仕事上で必須な能力、いや生活においても必要な能力である「交渉力」ですが、得意な人と不得意な人がぱっきり分かれるもの。得意な人はどんどんできるようになるし、不得意な人は、そもそも交渉の視点がないことが多いです。
出だしから圧が強めになりましたが、今回はそんな「交渉力」についてのコラムです。
■交渉とは
まずは交渉とはどんなものなのか、言葉の意味を確認しましょう。
◇交渉の意味
交渉の意味は、大きく2つあります。このうち、ビジネス的に利用されるのは1になります。
1:特定の問題について相手と話し合うこと。掛け合うこと。
2:交際や接触によって生じる関係。かかわり合い。関係。
(出展:『weblio辞書』)
「特定の問題について相手と話し合う」の表現だと、少し柔らかいニュアンスが出ますが、実際の仕事の現場で求められる交渉とは「いかに自分たちの利益を最大化しながら合意を形成するか」と表すのが適切でしょう。
☆折衝との違い
交渉と似た言葉に「折衝」(せっしょう)があります。折衝は、「利害の一致しない相手と、問題の解決に向けて、話し合いなどの手段によって駆け引きすること」という意味です(出展:『weblio辞書』)。
ビジネスの場では、さまざまな立場の人がそれぞれの利害を抱えています。これを上手くつなげ、上手に着地点を決める駆け引きができる人が「折衝力のある人」となります。
正直、「交渉」と「折衝」を明確に切り分ける必要があるか? というと、実務上はほぼないと言って良いでしょう。
特定の問題に関して折り合いを付けて納得できるゴールを見つけるという点において、ビジネスでは駆け引きや利害関係がない場合はほぼなく、合意点が「自身の利益の最大化」という交渉の結果なのか、「妥協点」という折衝の結果なのかは、見る角度とその時々の状況で複雑に絡み合っているのが現実です。
◇交渉力があることのビジネス上のメリット
利益を最大化しながら合意をする点が交渉の重要なポイントです。ただ相手の主張を受け入れて合意を取ることとは、根本的に違います。
例えば製品を売り込む時に、相手が「半額だったら買うよ」「タダならいいよ」と吹っ掛けてきた条件で製品導入の合意を締結しても、それは相手の交渉(というよりはむちゃ)に飲み込まれただけで、交渉として成り立っていません。
交渉とは、この場合「半額は難しいが、20%引きは何とかなる。その代わり、オプションのこのサービスを1年契約してくれ」など、自分が通したい条件を通すことです。もちろんメリットを挙げ、相手が納得する条件に見せる必要がありますが。
前述の例の場合は、「50%引きも余裕でできる製品だったが、20%で押し込み、かつ別のサービスの1年契約を取った」が内実だったらどうでしょうか? 担当者は交渉が上手、という評価になります。
「交渉力がある」とは、「相手の課題を的確に捉えて、双方が納得する形で利益を得ることができる能力」ともいえます。ビジネス上のメリットは満点です。
■交渉力がある人の特徴
ビジネス上必須ともいえる交渉力ですが、交渉力がある人の特徴はどんなものがあるのでしょうか。
◇(1)大局を把握し戦略を考えられる
利益には、短期的な利益と長期的な利益があります。短期的な利益とは、その瞬間の「売る・買う」といった単純な利益。一方、長期的な利益とは「関係構築や、その後の大きな案件の受注」など時間を掛ける意味のある利益です。
例えば、これまで取引がなかった大企業に製品を売り込みたい場合、目先の利益以上に関係構築に意味があることは多々あります。その場合「導入事例として大企業側の公式サイトに自社の名前を出させてくれるのであれば、無償提供する」などの条件を出して交渉することができます。
これは、自社のポジションと利益が今後どう生まれてくるのか? を大局的に把握し、戦略を考えられる人でないとできません。
◇(2)相手の利益を把握できている
交渉が苦手な人は、自分側のことばかりで相手にとってどうメリットがあるのかを語れないことが多いです。
ところが、人は究極的には「自分にとって得になるから」動くし、意思決定をします。
相手にとっての得とは? メリットとは? その点をきちんと把握し、そのポイントに沿ったものを提案できるかどうかが交渉力の有無の違いです。
◇(3)譲れない一線が引ける
交渉は、相手にナメられたらできません。「この人は折れるな」「別に大した材料を持っていないな」と思われた瞬間、交渉相手としての土俵から降ろされることが多いです。
「どんなに言われてもこれ以上は値下げしない」「相手に対して丁寧に接しても下手には出ない」など、きちんとラインを設けることが必要です。
■交渉上手な人になる3つのコツ
簡単にできるコツがあれば誰でも交渉上手になれますが……とも思いつつ、次に私が重要だと思うポイントかつ、すぐに取り入れられることを記載していきます。
◇(1)見た目でナメられない
これは意外に大事。かつ、テコ入れすればすぐできることです。
見た目でナメられないというのは非常に重要です。人間、中身が知らない相手だったら、まず見た目で判断します。
「こわもて」で恰幅のいい大柄の男性と、人の良さそうな柔和な女性だったら、交渉の場では残念ながら前者に軍配が上がってしまいます。この「見た目の差」をなるべくなくすようにするのは、慣れない態度や習慣を身に付けるよりずっと楽です。
女性の場合は、メイクをしっかり仕上げたり、パリッとしたスーツとヒールで「デキる女性」を演出するなど工夫してみるのがおすすめです。
◇(2)しゃべり方でナメられない
「ばかっぽいしゃべり方」という表現があるように、しゃべり方で迫力を出していくことも重要なポイントです。
具体的には「でも」「やっぱり」などの話し言葉を排除していく。また「あー」「えー」などのつなぎ言葉も、できるだけ使わずに話すようにしましょう。
(1)と(2)だけでも、交渉は各段に通りやすくなります。
◇(3)主導権を譲らない
交渉は、相手と同等のポジションがあると思わせないと始まりません。格下と交渉しようと思う人はいませんよね。
交渉材料があると思わせないと(実際はなくてもです)、テーブルにつけないので、同じ土俵に乗る必要があります。たとえ謝罪する立場でも「今日話す内容・範囲・ゴール」を自分から提示し、相手と自分の双方が交渉の場にいると認識させることが必要です。
主導権とは決定権でもあるので、「決定すること」を自分で決めて提示するだけでも大きな意味があります。
この他に、もちろん大局を意識したり、相手の利益を考えることも重要ですよ。
■交渉時に使えるメール術
普段、意外と交渉で使う機会が多いのがメールなので、最後にメール術を紹介しようと思います。しかし、正直なところ、メールで交渉を完結するのは難しいです。ビジネス上では、基本的にメールは「交渉の場に相手を出させる」ことが目的のツールとして想定するべきです。
例えばアポ取りのメールであれば、「先方から具体的な日時をもらって打ち合せの場を持つ」がゴールです。これも立派な交渉です。
◇(1)具体的に、かつ相手のメリットを明記する
「ぜひ紹介したい製品があるので、ご連絡ください」というメールがきたら、本当によっぽど聞きたい話でなければスルーされるのがオチです。
少なくとも、日時候補と、なぜそれを紹介したいか、紹介以外にも相手にメリットがあるなどの具体的な要素が必要です。
メリットとは、他社事例の紹介や困り事のヒアリング、および解決方法の仮説の提示などです。
◇(2)簡潔で要件がすぐ分かる文面にする
メールを「見てもらう」「返信をもらう」というハードルは、予想以上に高いものです。
交渉とは、相手をその場に出すことで8割の仕事が完了したともいえます。そのためのアプローチとしてのメールは、そもそも「認識させる」点に大きなハードルがあります。
暇な人ならいざしらず、交渉をしたい相手が暇なことはまれです。そうなると、悪意のないスルーは起こります。
中には、タイトルだけで重要・不要を分ける人もいます。なるべく簡潔で分かりやすく、相手の目に触れるような工夫をしましょう。
◇(3)選択肢を提示し、選ばせる
メール文章に2個、または3個程度の提案と選択肢を記載し、そのうちのどれかを回答させるのもおすすめです。これは(1)と(2)とも連動しますが、相手が「考える・検討する」隙間をいかになくせるかが、メールにおいてはポイントです。
そのため、漠然と「どうですか?」と送るようなことは避け、「AとBならAだと思うがどうか、NGな場合は理由を聞かせていただきたい」など交渉材料を集めつつ、相手に回答させるような仕組みをつくることが重要です。
■交渉力を身に付けると仕事がスムーズに
交渉が得意な人、不得意な人は、はっきりと分かれます。多くは「自分で条件を作る・範囲を決める・合意する」という一連のプロセスにおいて、自分の意思決定およびそこに相手を巻き込むことができずに頓挫しています。
交渉するには、自分の立場をはっきりさせること、また、相手がどんな状況で何を欲しがっているのかを理解することが必要です。
失敗すると、その失敗した内容で条件を飲まざるを得ない、など自分に跳ね返ってくる場合もあります。
どこまでやるか、どこで引くかのラインをきちんと見極めて、自分側に有利にビジネスを展開できるように頑張りましょう。
(ぱぴこ)
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※画像はイメージです
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