

俳優・荒木飛羽が「スメルズ ライク グリーン スピリット」で魅せた新境地 “二面性”とは異なるグラデーションという武器

2024年に深夜ドラマとして放送され話題を集めた「スメルズ ライク グリーン スピリット」が、2025年6月27日より「劇場版 スメルズ ライク グリーン スピリット」として全国で公開中。主役である三島フトシを演じたのは、いま注目の若手俳優・荒木飛羽だ。繊細なテーマの作品を盛り上げ、「この夏一番面白い」とまで話題にさせた演技力。難役を説得力抜群に演じてみせた俳優の軌跡を振り返り、その演技力と魅力の源泉に迫る。
数々のイケメン俳優の幼少期を演じ分けた子役時代
荒木は2005年9月生まれの19歳で、テレビ初出演は2014年にテレビ朝日系列で放送された深夜ドラマ「死神くん」。デビュー時はわずか8歳だが、幼少期の頃から端正な顔立ちを活かして“イケメン俳優の子ども時代”役を演じることが多かった。
山崎賢人や窪田正孝、片寄涼太、新田真剣佑といったイケメン俳優が出演する作品において、彼らの幼少期を担当したのが荒木。登場人物によって異なるキャラクターや人物像、心の機微などを表現する力は子役時代からすでに備わっており、多くの視聴者がその繊細な演技に心を奪われものだ。
荒木の人気を決定づけた作品として真っ先に思い浮かぶのは、2019年に日本テレビ系列で放送されたドラマ「あなたの番です」だろう。マンション内で展開される“交換殺人ゲーム”がテーマとなっており、近年では珍しい2クール連続で放送されたことも大きな話題となった。
ベテランから若手まで30名を超えるキャストが出演する中で、当時14歳であった荒木は両親に長年にわたって監禁されていた少年・榎本総一役を怪演。初登場時は両親からの虐待に耐える少年という印象であったが、実は幼少期に動物を殺害するなど猟奇的な行動を見せ、手に負えなくなった両親から隠し部屋に監禁されていたことが明かされる。
ストーリーが進むにつれて段々と意外な本性が見えてくるなか、荒木の演技もそれにあわせて変化していく。無垢でか弱い少年の顔と、時折見せる狂気じみた雰囲気。二面性を持つミステリアスな少年を見事に演じ切り、多くの視聴者の心を掴んだ。荒木が登場するシーンは決して多くはなかったが、同作の結末を左右する重要な役どころ。わずか14歳にして強烈なインパクトを残した荒木は、この作品を機に子役から実力派俳優としての一歩を踏み出すこととなる。
俳優・荒木飛羽の新境地
2020年代に入ると、ドラマ「First Love 初恋」「ばらかもん」や映画「あのコはだぁれ?」などさまざまなジャンルの作品・役柄で存在感を示した荒木。そんななか、2024年秋に放送された「スメルズ ライク グリーン スピリット」は荒木の新境地ともいえる作品となった。
荒木が演じたのは背中まで伸びた黒のストレートヘアというビジュアルで、メイクや女装で「カワイイ自分」に変身するのを心の拠りどころとする三島フトシ。序盤ではクラスメイトによる陰湿ないじめを受けていたが、ある生徒と秘密を共有してからその生活が一変する。
内に閉じ込めていた「カワイイ自分」への憧れ。誰にも知られたくない、それでいて曲げたり捨てたりはしたくない気持ち。繊細な心情に揺さぶられながらも強くブレない芯を持つフトシという難役は、これまで荒木が経験してきた役柄とは方向性が全く異なるように思える。わかりやすく振舞えば作り物っぽさが出る、自然すぎる素振りではテーマを表現するのに足りない。性のアンバランスに悩む学生の不安定さは、単純な言葉で表現できるような明快さを持っていてはいけないのだ。
イジメに苦しみながら、世間の“あたり前”とのズレを感じる閉塞感。自分と同じ気持ちを持つ相手を知った際は安堵からくる柔らかな笑顔がこぼれ、慣れない“友人”との接し方に苦慮する。徐々に心を開き、心情が変化していく際の丁寧なグラデーションは「あなたの番です」で見せた“二面性”とは全く異なる。
「スメルズ ライク グリーン スピリット」では非常に難解かつデリケートなテーマに挑戦した荒木。その後2025年2月より放送されたフジテレビのドラマ「おとなりコンプレックス」では、“美少女顔”男子の真琴を演じることになる。同役はボーイッシュ女子の幼なじみ・あきら(瑚々)を一途に思い続ける男子だが、幼いころから母と姉に女装させられてきたという過去を持つ。
同役は「女性らしさに憧れている」わけではないものの、普段からメイクにウィッグなど“イイ女”生活がすっかり板についた男子。容姿こそ女子顔負けだが、好きな子を全力で守るという男らしい二面性を持ち合わせている。
もちろん荒木の中性的な顔という要素もあるかもしれない。だが「スメルズ ライク グリーン スピリット」を通じて、“男らしさ、女らしさ”というコンプレックスを抱く役柄に高い説得力を持たせられるようになったことが荒木の俳優としての新たな武器となったことは間違いない。
現在上映中の「劇場版スメルズ ライク グリーン スピリット」は、ドラマ本編のカットに原作・ドラマにもないオリジナルエピソードを追加した再編集版。荒木という俳優のステップアップを目の当たりにするにはピッタリの作品な同作を、劇場で確かめるのもいいだろう。
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