

綾野剛&亀梨和也、ドラマ『妖怪人間ベム』以来14年ぶりの共演も「昨日会ったような感覚で再会できる大切な人」<でっちあげ>

綾野剛が主演を務める映画「でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男」が、6月27日(金)に公開される。本作は20年前、日本で初めて教師による児童への虐めが認定された事件を福田ますみがルポルタージュした『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』を三池崇史監督で映画化。今回は、児童へ体罰をしたという報道をきっかけに「史上最悪の殺人教師」と呼ばれた薮下誠一役を務めた綾野剛と、そんな誠一を追いかける記者・鳴海三千彦役の亀梨和也にインタビューを実施。撮影現場でのエピソードや、久しぶりの共演となった2人のプライベートでの交流などを語ってもらった。
14年ぶりの共演も「昨日会ったような感覚で再会できる大切な人」
――綾野さんが演じた小学校教諭・薮下誠一は、氷室律子(柴咲コウ)に息子への体罰で告発され、亀梨さん演じる週刊誌記者・鳴海三千彦らマスコミの実名報道で“殺人教師”のレッテルを貼られて、壮絶な人生を歩みます。亀梨さんとの共演は、テレビドラマ『妖怪人間ベム』(2011年/日本テレビ系)以来14年ぶりだそうですね。
綾野:何年間か空いても昨日会ったような感覚で再会できる大切な人です。お互いがお互いの作品を見ているのも大きいと思います。
僕にとって『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』は、亀ちゃんとの久々の共演や、三池崇史監督とも『クローズZERO II』(2009年)以来17年ぶりにご一緒できる喜び、さらには共演者の皆さまとの芝居の総当たりトーナメント戦ができる作品でしたので、とてもたぎりました。
亀梨:確かに、トーナメントだったね。
綾野:世代も、積み上げてきたプロセスも違う役者同士、お芝居を通してノーガードで真剣勝負する。こんな経験はなかなかできません。その中でも大勝負の1つとなったのは、亀ちゃんとのシーンです。
――印象的なお二人のシーンがいくつかありますが、撮影現場でどのように対峙していったのかを教えてください。
綾野:見える景色が少しづつ閉鎖していき、自分の足元と、地面を見るのが精一杯になった薮下の前に初めて鳴海が現れます。足音も聞こえずに。
下を向いている薮下と違って、鳴海は毅然としている。「薮下さんですよね」ときかれて、薮下は「はい」と反射的に反応してしまう。違和感を感じる間もなく、初速の速さに素直に「はい」と答えてしまう。生きているスピード感があまりに違うことを体感し、役との向き合い方、その集中力や姿勢にとても魅せられました。
綾野剛「緊張感を亀梨和也と乗り越えられる喜びと安心感があった」
――そして後日再び鳴海が現れる雨のシーンが、お2人のハイライトになりましたね。
綾野:雨降らしのシーンは、やり直すとなると衣装を乾かさなくてはいけないから特殊な緊張感がありますが、その緊張感を亀梨和也と乗り越えられる喜びと、とてつもない安心感がありました。
――その安心感はどこから?
綾野:14年前に『妖怪人間ベム』というドラマで亀ちゃんと初めてお芝居をしたとき、カットがかかった瞬間に「今の芝居すごい良かったよ! 最高だった!」と、とても真っ直ぐ伝えて頂きまして。
亀梨:偉そうにきこえるかもしれないけれど、シンプルに感動したんだと思う。すごかったって。
綾野:そのときに、「なんてピュアで素敵な人なんだろう」と思ったんです。『妖怪人間ベム』では亀ちゃんにたくさん引き出してもらい、引っ張っていただきました。
亀梨:「君、いいよ。頑張れよ」ってことじゃないからね(笑)。
綾野:「綾野くん、今のすごいよ、俺グッときてさ。今のシーンすごく楽しかった」とおっしゃる。その時初めて、「この役の作り方で間違っていなかった」と認めてもらえた気がしたんです。僕はその時、主演であり共演者に芝居の感想を伝えて受け止めてもらえる事が初めてだったので、ずっと心に残っています。圧倒的な安心感、他者を包み込む人間力。
だから雨のシーンにたどり着くまでに不安は全くありませんでした。辿りつかなくてはいけないフェーズに向かうための大きな存在として、そこに亀梨和也という役者がいてくれたことは、本当に支えになりました。
亀梨:雨のシーンが2人にとっての重要なポイントになるというのは、僕も台本を読んですごく感じていました。僕が演じた鳴海は、週刊誌の記者。僕としては持ったことがない角度の役柄でした。だから亀梨和也像みたいのものをどこまで捨てられるか整理できないと受けられないと思って、オファーに即答できなかったんです。
個人的には綾野剛という俳優さんに圧倒的リスペクトがあって、すごくいい刺激をもらっているけれど、この作品の中では綾野くんを追い詰める立場だから、お芝居では微塵もそれが見えてはいけない。自分の中でどう負けずに立つかが1番の課題でした。
――どう対処したのでしょう。
亀梨:役柄を通して、“のまれない”ことに重きを置いたんです。みんな裸一貫でいる中で、鳴海だけが武器を隠し持っているようなゆとりがある。人間としての強さのようなものがあるというのを裏テーマにしていました。
綾野:普段は他者やファンの方々への愛にあふれている亀ちゃんですが、鳴海になったとたん、目の中に感情が全くなくなる。その目を見たときに、「絶対に薮下の言葉は鳴海には届かない」と思えた。お芝居って、最後にはエモーショナルな部分といいますか、技術では測れないものがあるのだと思います。それは亀ちゃんが27年のこのお仕事で培われた鍛錬、鍛力なのだと思います。
雨のシーンでは雨降らしなしの“リアルゲリラ豪雨”
――実際の現場では、どんなやり取りがあったのですか。
亀梨:現場では、「こうやりたいんです」というより、テストやってドライやって、その流れの中で生まれていったものをリアルに感じて演じるだけです。剛くんは連日ずっと撮影が続いていたけれど、僕はスポットで参加していたから、監督に「もっと悪い顔、もっといやらしい顔して」という栄養のヒントをもらいながら、「そんなにいっちゃっていいの?」という気持ちで微調整しつつ(笑)。
でもそれって、剛くん演じる薮下がこの作品を通して変動していく温度感にどうはめ込むかだから、ライブ感を楽しませてもらった気分です。
綾野:それと、嵐を呼んじゃったんですよ、亀ちゃん。
亀梨:あれは、この作品が持っている力だなと思った。
綾野:大雨のシーン、途中から本物の豪雨です。
亀梨:最後のカットは雨降らしなしの、リアルゲリラ豪雨(笑)。話にしか聞いたことないけれど、黒澤映画のように「雨がくる、待つぞ」みたいなことではなく、リアルに(笑)。
綾野:傘も飛んでいきましたね。
――傘が動くシーンもリアルだったんですか!
綾野:扇風機使ってないです。
亀梨:ノーファン。
綾野&亀梨:アハハ(爆笑)
亀梨:最後に歩いていくとき、「いや~、すげえな」と思った。
綾野:雨ってあんなに痛いんだね。立っていても溺れそうなほどの雨で、驚きました。
――あの名シーンに、そんな裏話があったとは!
亀梨:これは僕の悪い癖かもしれないけれど、実はあの場で「もうひとつ、何かできるかな」と考えちゃったんです。
綾野:全然悪い癖じゃないですよ。
亀梨:あのシーンで僕も傘をバーンと飛ばして、お互い濡れている方が象徴的なのかなとも思った。でも後から見ると、やらなくてよかった。バーンってなると、エンタメ的になりすぎちゃう。僕はエンタメ的脳みそが働きがちだから、その制御をしたことも含めてかすごく印象に残っているシーンです。勉強になりました。傘ちゃんと持っててよかった(笑)。
――傘を持っているところに、鳴海の冷静さが出ていましたよね。
亀梨:そうそう。そこが裏テーマだったから。
お互いの“成長”と“今” を目の前で体感し合えた
――綾野さんは、初対面のときの亀梨さんの言葉に支えられていたということですが、綾野さんの抱く亀梨和也像とは?
綾野:それぞれのオリジナリティや個性に対して真摯にリスペクトを表現できる人。だから亀ちゃんといるとみなぎりますし、いろいろな想像力を掻き立てられ、共有し合えます。長く続けているからこそ起こり得た14年ぶりの共演は、ご褒美のような時間でし、お互いの成長と今を目の前で体感し合えたのも幸せでした。またすぐ共演したいです。
亀梨:『妖怪人間ベム』で共演することになったとき、『野ブタ。をプロデュース』(2005年/日本テレビ系)も担当していた河野(英裕)プロデューサーに、「素晴らしい俳優さんだよ」と聞いていたから、勝手にわくわくしてた。僕は『野ブタ。~』のとき、河野さんに「山P(山下智久)はああいうキャラだから、亀梨くんは絶対にこの枠を崩さないでくれ」と言われていたし、自分で枠を設けたり、良くも悪くもはみ出さないようにしているところがあった。
綾野:真摯に真ん中を生きているってことですよね。
亀梨:積み上げてきた枠に行き詰まっていたからこそ、剛くんを見て「こんなにお芝居って自由なんだ」、「こんなに気持ちでやれるんだ」と思えたんだよね。そこから14年間で、綾野剛という人間もいろいろなことをめちゃくちゃ積み上げてきているじゃないですか。物理的な作品での立ち位置や責任も含めて、バージョンアップされている。
『妖怪人間ベム』のころは、勢いと感性の塊だったけれど、今はそれに責任と全体像を見極める冷静な目がプラスされた。でも僕が当時感じたきらめきも失ってなくて。そこはすごいよね。僕はどこかできらめきを伏せた時代があったから、尚更それを感じたのかな。
本作では、“主演”ということだけではなく、広い視界と受ける責任感がにじみ出ていた。僕も主役という立場でお仕事させてもらう機会が多いけれど、今回剛くんの主演作に参加させてもらって、自分の作品とは違う感覚を味合わせてもらえた。それはすごく大きかったですね。
綾野:恐縮です。ありがとうございます。とてもうれしいです。こうして頑張ってきたことがまたひとつ結実させてもらえました。いつだって真ん中に本気で立つことができるから、亀ちゃんはいろいろなことが豊かにできるんです。今作でも、亀ちゃんという存在に精神的支柱を担ってもらいました。
――それにしても、薮下という役はハードでしたよね。冒頭では小学生を追い込む非情さを見せ、その後は鳴海たちマスコミや世間に追い込まれる。このようにふり幅の大きい役を演じる時って、家に帰っても気持ちがすさんだりしませんか?
綾野:映画は僕1人で気持ちを抱えるものではなく、チームで作る総合芸術です。そして決められた時間の中で臨む労働でもあります。ですから役を生きる時は、楽しみにしてくださっている皆様を支えに、チームと共に役に誠実に向き合う。それだけです。
取材・文/坂本ゆかり
撮影/山田大輔
【綾野剛】
ヘアメイク/石邑 麻由
スタイリスト/佐々木 悠介
衣装協力/ジャケット、リング(ヴィンテージ/RESURRECTION)、シャツ(ヴィンテージ/King of Fools)
【亀梨和也】
ヘアメイク/豊福 浩一(Good)
スタイリスト/佐藤 美保子
関連記事
-
新垣結衣が語りに!“伝説の家政婦”タサン志麻さん夫婦に密着「たくさんの人の心にスッとしみこむはず…」<ふたりのディスタンス>WEBザテレビジョン
-
東京03の超絶サクセスストーリー 全国ツアーだけで「1年食えるくらいはもらえる」WEBザテレビジョン
-
<BLACKPINK>「あつまれ どうぶつの森」内に“BLACKPINK島”がオープン!MVのセットやステージを再現WEBザテレビジョン
-
松井玲奈、大粒の涙…新型コロナ感染中の思い吐露「人生の中では一番苦しいぐらいの数日間」WEBザテレビジョン
-
ジャニーズWEST中間淳太 “探偵”イメージの細身スーツで「小説現代」表紙に!推しミステリから自身の創作活動まで明かすWEBザテレビジョン
-
瀬戸朝香、“なかなか良い感じ”7歳長女によるメイクSHOTに反響「優しくて自然な感じすごくいい」「娘さんお上手!」WEBザテレビジョン
「映画」カテゴリーの最新記事
-
大森元貴&菊池風磨W主演「#真相をお話しします」最後の対談&2ショット公開モデルプレス
-
復讐を描いた新たな“トラウマ映画”、日本版予告映像解禁<MELT メルト>WEBザテレビジョン
-
「スーパーマン」熱烈ファン・チョコプラ、コンビ名由来にも関係?中島健人がツッコミ「絶対嘘でしょ」【スーパーマン】モデルプレス
-
中島健人、名前の由来は「スーパーマン」から 永遠のセクシー目指す“ベスティー”姿で愛語るモデルプレス
-
マーベル最新作「ファンタスティック4:ファースト・ステップ」予告映像&場面写真解禁…“家族”の絆で巨大な敵に立ち向かうWEBザテレビジョン
-
映画「スマーフ」最新作、9月に日本公開決定 宮野真守・早見沙織・山寺宏一ら吹替版声優発表モデルプレス
-
世界的ロック歌手の若き日の苦悩と情熱を描く「スプリングスティーン 孤独のハイウェイ」日本公開決定WEBザテレビジョン
-
吉岡里帆&水上恒司“ゼロ距離”で見つめ合う「九龍ジェネリックロマンス」メインビジュアル解禁 本予告・主題歌もモデルプレス
-
オダギリジョー主演「夏の砂の上」、漫画家・今日マチ子と小玉ユキによるイラスト版ポスターが公開WEBザテレビジョン