山田裕貴、初共演の堤真一は「僕より絶対おしゃべりなんですよ」

2025.06.23 20:48

俳優の堤真一と山田裕貴が、6月23日に都内で開催されたW主演映画「木の上の軍隊」東京完成披露上映会に登場。脚本・演出を手掛けた平一紘監督と共に、作品への思いやお互いの印象などを語った。

実話を基に描かれた井上ひさし氏原案の舞台を映画化

同作は、太平洋戦争末期となる1945年の沖縄で起きた実話をモチーフに描かれた、作家・井上ひさし氏原案の舞台を映画化。日米両軍の激しい攻防戦が展開される中、伊江島のガジュマルの木の上で終戦を知らぬまま2年も隠れ潜み続けた日本兵を、堤と山田がそれぞれ演じる。沖縄が制定している沖縄戦等の戦没者を追悼する「慰霊の日」である6月23日、東京で完成披露上映会が行われた。

メガホンをとった平監督は、沖縄出身ということもあり6月13日から先行公開されている沖縄の映画館を巡ったそうで「本当に小さなお子さんからお年寄り、中学・高校生、いろんな年代の方が見に行ってくれています」と万感の表情を浮かべた。

沖縄出身の新兵・安慶名セイジュンを演じる山田は「沖縄で公開されて、監督から『裕貴さんすごいですよ！行列ができていて全部“リロ＆スティッチ”だと思ったんですけど、全部“木の上の軍隊”で！ビックリです』って」と先行公開の沖縄での盛況ぶりを平監督から聞いたことを伝えると、平監督は「本当に『リロ＆スティッチ』だと思ったんです(笑)。でも、聞いたら『木の上の軍隊』で、胸をなでおろして、すぐに動画を撮って裕貴さんに送って電話しました」と、山田とのやりとりを明かした。

その上で、山田は「もちろん『リロ＆スティッチ』も素晴らしい作品だと思うんですけど、そういうエンタメも楽しみながら、戦争というものに目を向けてくれる人たちがこんなにもいるんだと。お客さんが入ったからうれしいのではなく、戦争というところをちゃんと大事に思って、子どもたちも見に行こうって思ってくれるのは本当にうれしいなと思っています」と力を込めた。

堤、山田の印象は「うそのない、真っすぐな人」

今作は実際にガジュマルの木を植樹して撮影が行われたという。宮崎から派兵された厳格な少尉・山下一雄を演じる堤は、伊江島での撮影について「(舞台となったガジュマルは)1年以上前から植樹したんです。1本のガジュマルじゃなくて、3本のガジュマルの木を植樹して、それがうまく絡み合ってああいう空間ができたんですけど、ちゃんと根付かなかったら撮影ができなかったんですよ」と打ち明けつつ、「僕今年で60歳なんですけど、60歳で木の上に登って見る景色ってすてきなんですよ！」と目を輝かせた。

続けて堤は「(今の時代に)リビングで寝っ転がってリラックスするという意味ではなく、ここに守られているという感覚はあの木じゃなければ生まれなかったと思うし、木の上にいることが苦ではないというか。ほぼ2人で木の上にずっといましたね」と回顧すると、山田も「人間って順応していくんですよね。最初は堤さんも木に登るときに『痛っ！』と言いながら登っていたのに、3日、4日たてばスルスルと登っていて。座れる場所、寝っ転がれる場所を自然に探していて、もしかしたら実話のお2人も木に対して、家のような感覚を持っていたのかなって思いましたね」と、モデルとなった2人の心情を慮った。

そんな中、W主演を務める堤と山田は今作が初共演という話題になり、山田の印象を聞かれた堤は「うそのない人だし、真っすぐだし、スタッフからも愛されて。ずっと隣の部屋だったんですけど、食事もたまにしてね。(山田は)ずっと減量のために干し芋ばっかり食ってたんですけど、僕も食事は制限しつつ。現場でもくだらない話とかして、制作の若いスタッフの子で、ハエを捕るのがめちゃめちゃ上手な子がいて。ビニール袋でハエを何匹も捕まえるんですよ！『おまえは宮本武蔵か！』ってぐらい(笑)。俺らは捕れなかったけど。そんなことをしていました」と山田の人となりを語りつつ、現場でのエピソードを披露。

それに対し、山田は「共演はなかったんですけど、10年くらい前にあるご縁でおうちにお邪魔させてもらったことがありまして。第一線で活躍する堤真一さんの家に行くなんて…と緊張しながら行ったんですけど、すごくフラットで。そのときも普通に話してくれて、それは今回の撮影現場でも変わらずに、この映画はこうだったとか、堤さんがすごいと思う表現者の人の話とか、僕より絶対おしゃべりなんですよ。僕のほうが『へえ～』と聞いていることが多くて」と印象を語る。

さらに、山田は「あと撮影終わりに『今日コンビニのタイミングだよな？』って聞いてきてくれるのがうれしかったですね」と話すと、堤はうなずきながら「現場からホテルに戻るのも一緒だったので、(山田のほうは)もし寄りたくないと思ってるなら悪いなと思いつつ、どうしてもコンビニでお酒を買いたかった」とニッコリ。

ただ、コンビニにも劇中の衣装のまま入っていたらしく、山田は「あの衣装のままコンビニに2人が現れるものだから…。皆さん撮影していることは分かってくださっているんですけどね。『日本兵が現れた！』って(笑)」と、少し驚かせてしまう場面があったことも付け加えていた。

映画「木の上の軍隊」は沖縄先行公開中、7月25日(金)より東京・新宿ピカデリーほか全国ロードショー。

◆取材・文・撮影＝月島勝利(STABLENT)