

役所広司×黒沢清、日本映画史に残る名作『ニンゲン合格』『CURE』をプレイバック

俳優・役所広司と監督・黒沢清がタッグを組んだ名作をプレイバックする特集がCS放送「映画・チャンネルNECO」にて放送される。今回、テレビジョン編集部では、放送予定の『ニンゲン合格』(6月17日(火)21:00放送)と『CURE』(6月24日(火)21:00放送)に着目。2つの名作映画の魅力を紹介する。
昏睡状態から10年ぶりに目覚めた青年が家族再生に奮闘
『ニンゲン合格』は1999年に公開された作品。昏睡状態から10年ぶりに目覚めた青年が、家族再生に奮闘する様を描いたニンゲン・ドラマで、第11回東京国際映画祭コンペティション正式参加、第49回ベルリン国際映画祭へ正式出品された経歴を持つ。
物語は、14歳の時に交通事故に遭って以来、10年間ずっと昏睡状態に陥っていた豊(西島秀俊)が、ある日突然、眠りから覚めるところからスタート。その後のリハビリ期間を経て退院した豊は、父親の友人と名乗る藤森(役所広司)という風変わりな中年男性とともに、すっかり変わり果てた豊の家で共同生活を始めることになる。
なぜ、藤森は彼を迎えたのか。10年ぶりに目覚めた先で豊が知ったのは、彼の家族はすでに離散していたという残酷な事実だった。
10年の月日が変えたこと、その事実を前に行動する豊に心打たれる
この作品を見て感じたのは、やはり10年という月日の長さだ。何事もなかったように起きた豊だが、かつての友人たちは高校生活、大学生活を経て成人している。そのため、話がいまいち噛み合わず、やりきれない気持ちになる姿がなんとも切ない。
そして、家族も大きく変わっていた、かつてポニー牧場を経営していた実家は跡形もなく、父(菅田俊)は宗教活動を、アメリカへ留学しているはずの妹・千鶴(麻生久美子)は恋人の加崎(哀川翔)と共に帰ってくる。さらに父と離婚した母・幸子(りりィ)には一緒に暮らしている誰かがいた。豊はここでポニー牧場を再建することで、再び家族が集結することを信じる。ここでの「また一つ屋根の下で」と願う豊の姿からは、10年前(14歳)有していた無垢さも感じられる。
ただ、豊は気づくのだ。大切なのは10年のブランクを埋めることではなく、現実に目を向けることだと。そして、藤森と共に新たな人生を…と歩み出そうとするのだが、そこで物語は幕を閉じる。その間際に豊が呟いた一言が心を揺さぶる。生きるとは何か、家族とは何か。価値観が多様化する現代だからこそ、心に訴えかけてくるものがある作品だ。
黒沢清が得意とするサイコ・サスペンス『CURE』
ミステリーやホラーなども多く手がけてきた黒沢監督。
『CURE』はそんな黒沢監督と、主演を務めた役所広司がタッグを組んだ、猟奇的殺人事件の犯人を追う刑事の姿を描くサイコ・サスペンスだ。
本作は、一人の娼婦が惨殺されるところから物語が始まる。そこに駆けつけた刑事の高部(役所)は、胸をX字に切り裂かれた遺体を前にして、同様の手口の殺人事件が、無関係な複数の犯人たちによって立て続けに行われている事実を疑問に思う。
その頃、東京近郊の海岸を彷徨っていた記憶を失った男(萩原聖人)が、ある小学校教師に助けられる。すると教師は男の不思議な話術に引きずり込まれ、魔が差したように妻をX字に切り裂き、殺してしまう…といったストーリーだ。
目を背けたくなる不思議な力とそれに抗う高部
とにかく、萩原聖人演じる記憶を失った男・間宮の存在が怖い。決して残虐な手を施すこともなく、声を荒げて相手を威圧することもない存在である。ただ、ゆっくり淡々と、心を思うがままに人を操る不気味さが、ずっとこの作品に漂っており、視聴者として見
ている自分もこの男に取り入れられてしまうのではないかと疑ってしまう。
そして、自分は大丈夫だと思っていた人々が、どんどんとこの間宮に心を刺激され、同じ手口で殺人を犯していく姿が恐ろしい。そんな事件は高部の執念によって終止符が打たれたかのように見えたのだが、ある不可解なことが起こりクライマックスを迎える。間宮と高部、2人の心理戦の攻防はどちらに軍配が上がったのか。この物語はハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか、観る人によって解釈が分かれそうだ。
文/於ありさ
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