「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」スタッフトーク

藤森雅也監督らが明かす、『劇場版 忍たま乱太郎』音楽秘話「八方斎が歌って踊るぞっていうのは決めていました」

2025.02.21 19:49
「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」スタッフトーク

「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」(公開中)のイベント「第三回スタッフトーク」が、2月13日に新宿ピカデリー・スクリーン1にて開催され、メガホンをとった藤森雅也監督と音楽担当の馬飼野康二氏が登壇した。(この記事は、本編のネタバレを含みます)

普段の「忍たま」とはひと味違ったシリアスな展開を描く

朝日小学生新聞で1986年より連載を開始した尼子騒兵衛による「落第忍者乱太郎」を1993年にテレビアニメ化した人気シリーズ「忍たま乱太郎」。本作では、「小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師」を映像化し、普段の「忍たま」とはひと味違ったシリアスな展開を描く。

監督は初代キャラクターデザインを務め、前作「劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園全員出動!の段」(2011年)でもメガホンをとった藤森。脚本は「小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師」の著者であり、テレビシリーズも手掛けてきた阪口和久が務める。

また、テレビシリーズに引き続き、制作をアニメーション亜細亜堂が担当し、声優として高山みなみ(乱太郎役)、田中真弓(きり丸役)、一龍斎貞友(しんべヱ役)、関俊彦(土井半助役)らが出演する。

「“やるぞスイッチ”みたいなものが皆さん入っていて」

このたび実施された第三回スタッフトークでは、演出回、作画回と続いてきた本イベントの最終回となり、トークテーマは「音楽」。温かい拍手に迎えられながら藤森監督と、長年にわたり「忍たま乱太郎」を彩る音楽を手がけてきた馬飼野氏が登壇した。ドクタケ忍者隊を彷彿とさせる赤いサングラスをかけた二人はユーモアたっぷりに挨拶し、和やかな雰囲気の中、トークイベントはスタートした。

まずは13年ぶりの劇場版となる本作の話を受けた際の心境について、馬飼野氏は「アニメシリーズも33年経ちますが、ちょうど13年前に劇場版アニメ『忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段』をやりまして、その頃から比べても今回の劇場版の音楽は、自分の中でも特に力の入った仕事になりました。藤森監督含め、プロデューサー陣やスタッフの方々が、スタートのときから本作にかけているイメージがものすごく強くて、その熱さに押されて一生懸命頑張ったという感じです。一番初めにお話をいただいたときが2023年くらいで、一回目の打ち合わせがプロデューサー陣と藤森監督、音楽出版の方など5、6人でスタートしたんですけど、そのときに“やるぞスイッチ”みたいなものが皆さん入っていて。すごく良い作品になってうれしく思います」と振り返った。

「馬飼野さんといえば『魔界之先生』」

藤森監督は馬飼野氏との出会いについて、「劇場版アニメ『忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段』のときに初めて馬飼野先生にお会いしたんですけれども、替え歌の歌詞を書いて『この歌詞にあわせて編曲をお願いしたいんですけど』と言ったら、『分からないので今録音するから歌って』って言われて。いきなりプロの作曲家さんの前で歌う破目になったというのが最初の出会いでした」と思い返しながら替え歌を歌い、会場を笑わせた。

本作にも実は登場しているという馬飼野氏がモデルのキャラクター「魔界之小路」について尋ねられると、藤森監督は「天鬼を洗脳するときの漫画の中に魔界之先生が描かれています。黒戸カゲ先生と同じコマです」と魔界之先生の登場シーンについて明かす。

さらに、劇場版アニメ『忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段』にも登場していたという魔界之先生。藤森監督は「自分の思いつきみたいな替え歌に曲をつけてくれたので、その感謝の気持ちを込めて、あの替え歌の中の背景部分に魔界之先生の顔が2カットでてくるんですよ。多分気付かないと思います。忍ばせ過ぎちゃって、自分で改めて確かめてもなかなか分からなかったんですけれど。大きな顔を撮影でエンボス加工みたいにして、背景の上にスライドさせている2カットがあります。ヒントとして歌いますと、”石火矢の撃ち方 まず砲腔を掃除して火薬と弾丸”の後の”詰めましょ”のところに1カット目。”安全のため親指で火門をふさごう”の後の”WOW WOW”のところに2カット目」と再び替え歌を歌いつつ、13年越しの種明かしをし、「もしご覧になる機会がありましたらぜひ探してみてください」と呼びかけた。

稗田八方斎のダンスシーン

本作の制作にあたって、企画サイドから「映画ならではの音楽演出をしたい」という相談を受けていた藤森監督。音楽に関してこだわった点について質問されると「映画での音楽演出を考えたときに、こちらとしてもミュージカルシーンをやりたいという話をさせていただいて、結構最初から構想をしていました。本作用に最初に描いたのが、等身を伸ばした稗田八方斎だったんですよ。その時から八方斎が歌って踊るぞっていうのは決めていました」と語り、馬飼野氏も「踊るっていうので少しびっくりしたんですよ。僕がこのシーンのために最初に作った曲は結構ミュージカルっぽくて、歌詞も少し難しい言い回しが入っていたんですよね。監督、プロデューサー陣に聞いていただき、もう少し分かりやすいシンプルなものを、ということで作ったのが今回の曲です」と裏話を披露。

藤森監督は「元々アイデアとして出していた歌詞を丁寧に入れてくださって、メロディアスな曲でとても素敵だったのですが、もう少し洗脳する曲にならないかなとご相談しました」とやり取りを重ねて今の楽曲を作り上げたことを打ち明ける。馬飼野氏は、声優・間宮康弘(稗田八方斎役)についても「間宮さんとはデモテープの段階でやり取りして、声の感じとかを聴きながらやらせていただき、作る側としては非常に良かったです」と絶賛した。

続けてダンスシーンの収録時の思い出を聞かれると、馬飼野氏は「サビのところを複数の人数で歌ってもらいたいというのがあったので、間宮さんにご相談しました。声優さんってすごいなと思ったのが、『次はじゃあキャラを変えて、ちょっととぼけた感じの人』とか言うと、すぐその声が出るんですよ。それで4回ぐらいオーバーダビングして、4人分のコーラスが入っているんですけど、実は間宮さんが一人でやっているんですよ」と、ダンスシーンはコーラスも含めてすべて間宮の声だったことを明かす。

テーマ曲「勇気100%」について

「忍たま」を象徴する曲であり、本作では日常を象徴する曲として扱われたという「勇気100%」。改めて本作での扱いについて質問された藤森監督は「いやいや、御手洗さんがそれを聞くのかみたいな(笑)。御手洗さんは最初から『勇気100%は今回はエンディングに使います』って頑として譲らないんですよ(笑)」と、スタッフトークでMCを務めたプロデューサーの御手洗絵里氏の強い思いをぶっちゃけた。

それを受けて御手洗氏は「『勇気100%』は作品にとって大切な曲だという想いがありました。馬飼野さんにも劇伴のオーダーのとき、今回は全部新録として作っていただきたいという話の中で、TVシリーズだと『勇気100%』のアレンジはいくつか作られていると思うのですが、今回は劇伴の中でも『勇気100%』」は使わずに作って欲しいです、という縛りのあるオーダーをさせていただきました」と説明。馬飼野氏は「TVシリーズとは変えたいということも話していたし、劇中で『勇気100%』を使わなかったことはすごく良かったんじゃないかなと思います」とそのオーダーを賞賛した。

続けて御手洗氏は「監督から『勇気100%のところにもクレジットを入れるとスタッフロールをもう少しゆっくりにできるよ』と言われたんですけれど、やっぱり『勇気100%』が流れているところはまだエンディングではないというか…”『勇気100%』が流れる日常”を取り戻す、という作品だと思っていたので、ここは曲と絵を全面に見せたいというお話をさせていただいた結果、高速スタッフロールになってしまいました(笑)」と裏話を披露。藤森監督も「ちゃんとそれを受けてそのようなフィルムに作っているので、非常に良いラストですよね」と口にし、3人とも注力して良かったポイントだったと振り返った。

オープニング曲「忍術学園の夜明け」

映像と合わせるのが大変だったいうオープニング曲「忍術学園の夜明け」。馬飼野氏は「最初はちょっと大袈裟に考えていて、予告編のようなイメージで捉えていたから、もっと重厚な感じの曲を作っていたんですけど。さりげなく…という感じに調整したら絵に合って良かったです。夜明けの雰囲気はフルートで初めからイメージしていて、爽やかな感じになりました」と語る。

イベントの最後には、馬飼野氏が「今まで『忍たま』の音楽をいろいろやらせていただいたんですけど、登壇してお話するのは初めてなんです。どちらかというと作る方はいいのですが、お話するのが苦手で。今日も、うまく自分の思っていることが伝わっているかは分からないですけれど、『忍たま』自体は、見ていてすごく心が和むし、勇気とかやる気が出てくるような作品です。皆さまにとっても、励みになる作品になっていればと思います」とコメント。

藤森監督もまた「自分も基本的に縁の下の力持ちという感じで、こんな華やかなところに出てくるのはいいのかな、という風に思ってしまうんですけれど。今回はスタッフトークということで3回目まで登壇させていただいて、観客の皆さんの顔が見られたのがすごくうれしかったです。今もニコニコと微笑んでくださって、本当に優しいなあと感じております。改めまして本作に関わるスタッフの方々、それから本作を観て下さった皆さま、どうもありがとうございました」と感謝を述べ、最終回のスタッフトークイベントは幕を下ろした。

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