

菅田将暉、“ホヤぼーや”にエール「これから羽ばたいてください」<サンセット・サンライズ>

映画「サンセット・サンライズ」(公開中)“がい旋舞台あいさつ”が、1月18日に宮城・仙台で行われ、主演・菅田将暉、岸善幸監督、脚本・宮藤官九郎が登壇した。
異色のコラボレーションから生まれたヒューマン・コメディ
本作は、舞台が南三陸で、作品の大部分を宮城県で撮影。宮藤、岸監督という東北出身でもある2人の異色のコラボレーションから生まれ、主演は「あゝ、荒野」(2017年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞の他、数々の映画賞を受賞して以来、7年ぶりに岸監督とタッグを組んだ菅田が務めた。
都会から移住した釣り好きサラリーマンの西尾晋作(菅田)と、宮城・南三陸で生きる住民との交流、人々の力強さや温かさをユーモアたっぷりに描き、その背景にあるコロナ禍の日本、過疎化に悩む地方、震災などの社会問題と向き合いながら、豊かなエンターテインメントに転化させたヒューマン・コメディに仕上がっている。
岸善幸監督が菅田将暉のお薦めシーンについて語る
公開2日目に行われた今回の公開記念舞台あいさつ。本作の舞台は南三陸で、撮影の大部分を宮城県で行ったことから、まさに“がい旋舞台あいさつ”が実現した。
映画を見終わった宮城の観客から大きな拍手で迎えられ、舞台あいさつはスタート。まずは、約1年ぶりに宮城へ戻ってきた気持ちを聞かれ、菅田は「一番見てほしかった皆さんに見てもらえたのがうれしい」、岸監督は「被災地で被災された方の映画を見てもらうことに緊張していました。(温かい反応に)ホッとしています」と打ち明ける。
そして、宮藤は「『あまちゃん』(2013年、NHK総合ほか)を書いたときに、みやぎ絆大使なのになぜ宮城の話じゃないのかと言われて…。今日、これでやっと安心しました」と会場を沸かせる。
晋作がお試し移住をした宇田濱町は、港をはじめ魅力的な情景が数多く登場。撮影現場の気仙沼市には、2023年秋に約1カ月滞在しながらの撮影だったという。
菅田は撮影の合間に、散歩や買い物をして町を巡っていたそうで、気仙沼のおみやげ店にはよく足を運び「氷の水族館」では「氷でできたほやボーヤと写真を撮ったんです」と、気仙沼のゆるキャラとの思い出をうれしそうに振り返る。
作品内に登場する水彩画は、実際に菅田が描いたもの。岸監督は「作品の中で晋作のことを一番理解し、晋作が描く絵を描けるのは菅田くんだった」と依頼。菅田は撮休も使って、練習しながら書き上げたと明かした。
また、東北ならではの個性的なキャラクターが登場し“東北あるある”も満載な本作。印象的なシーンについて、宮藤は撮影中に現場を訪れ、立ち合っていたシーンを挙げ「晋作が居酒屋で、ソーシャルディスタンスを気にして後ずさるシーンが面白かったです。ディスタンスの取り方がうまくて感心していたんです」と話し、岸監督は「方言の『け』や『こ』で会話するシーン。菅田くんの体のラインが…(笑)」とニコニコ。
菅田から「ほんっと、そこ好きですよね」とツッコまれながらも、岸監督は「面白かった。編集しながらも笑った」とお薦めシーンについて語った。
思いを込めた芋煮会のシーン
「芋煮会」のシーンについての話題で、宮藤は「原作には出てこないけど、芋煮会って大人が腹を割って話せる機会なんじゃないかと気が付いた。芋煮会のシーンで竹原ピストルさんの『ただ来て、おいしいものを食べて帰ればいいんじゃない』というせりふは、風化していく震災について、実際に石巻で取材したときに、現地の人から聞いた言葉なんです」と明かす。
岸監督は「あのシーンを読んだとき、宮藤さんのふるさとに込めた思いが伝わってきた。キャストの皆さんが、方言で気持ちを吐露している。現場でも涙しました。あのシーンを撮るためにこの映画を撮った」と熱い思いを打ち明け、菅田は「あの場面は、自分もすごいせりふがあって…。役柄としてどう表現するか悩んだ、とても印象に残るシーンです」と感慨深そうに話した。
また、本作は「飯テロ映画(!?)」と別名があるほど、三陸の新鮮な魚を使った料理が魅力的に登場。「間違いなく、一番料理を食べた」という菅田は、「もう一度食べたい料理」を聞かれ「モウカノホシ(ネズミザメの心臓)」と即答。「(今は食べられない)生レバーが大好きだった人間としては、ほぼ生レバーみたいでおいしかった。また食べたいです」と笑顔を見せる。
作品中の「モウカノホシ」「ハモニカ焼き」などの個性的な料理は、監督がロケハンで見つけたもので、脚本にはなかった料理。他にも「あざら」や「やきがぜ」などの名前も上がり、「おいしかった」「お土産でも買った」などとひとしきり盛り上がる中、岸監督から「ちょっと待って。(やきがぜ)は作品に出てきていない」とツッコミが。
キャストやスタッフが、作品に出てくる以上のご当地グルメを楽しんでいた様子が伝わってくるほど盛り上がっていた。
“ホヤぼーや”から花束を送られ笑顔を見せる3人
最後に、スペシャルゲストとして撮影地の宮城・気仙沼市の観光キャラクター“ホヤぼーや”が登場し、3人に花束を贈呈。宮藤が「宮城を舞台に、震災とコロナというシリアスな問題ながら、ハートフルなコメディーに仕上げました。自分としては頑張った作品です」とあいさつ。
岸監督は「宮城県生まれの父親が昨秋亡くなり、家族を失うことについて思いを込めて作りました。映画を見て、良いと思ってくださったらSNSなどでたくさん拡散してください」と呼び掛ける。
菅田は、「舞台となったその土地の良さを広めることができるのも、映画の良さだと思いました。ほやボーヤもこれから羽ばたいてください」と、気仙沼から駆け付けたほやボーヤへエールを送った。
なお、本作の公開を記念し、岸監督と宮藤が2人を引き合わせた佐藤順子プロデューサーとともに「大ヒット公開記念スペシャルトーク」として、オンラインスペシャルトーク番組の生配信に出演することが決定。1月24日(金)夜8時30分から「映画『サンセット・サンライズ』の隠された秘密スペシャル」と題して、ライブ配信される。
内容は「ほのぼの系映画かと思ってたら、実はそうじゃないんです」という副題のとおり、初日を迎えた今だからこそ話せるトークを展開する予定。初タッグ&コメディー初挑戦となった岸監督と宮藤との撮影中のエピソード、菅田をはじめとするキャストとの仕事について思ったことなど、おすすめの本編シーン映像なども交えながらトークを繰り広げる。
映画「サンセット・サンライズ」ストーリー
新型コロナウイルスのパンデミックで世界中がロックダウンに追い込まれた2020年。リモートワークを機に東京の大企業に勤める釣り好きの晋作(菅田将暉)は、4LDK・家賃6万円の神物件にひと目ぼれ。
何より海が近くて、大好きな釣りが楽しめる三陸の町で気楽な“お試し移住”をスタート。仕事の合間には海へ通って釣り三昧の日々を過ごすが、東京から来た“よそ者”の晋作に、町の人たちは気が気でない。
一癖も二癖もある地元民の距離感ゼロの交流にとまどいながらも、持ち前のポジティブな性格と行動力で、いつしか溶け込んでいく晋作だったが、その先にはまさかの人生が待っていた。
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